「アフリカの夜」は心に沁み、23年経っても私を励まし続けるドラマだ。一つのシーンだけ見ても、力がもらえる。
今回は、第4話のみづほと八重子が居酒屋で飲むシーン。
八重子は挙式中、エリート銀行員の夫が横領で逮捕されたという古疵。みづほは、暴力夫を殺して死体遺棄したという古疵。どちらもヘビーだ。だけど、このドラマは明るく面白い。
八重子は、みづほが殺人をしてしまったことを知らない。でも、観ている私達は知っている。主人公と視聴者の認知の差でドキドキする。「赤ずきんちゃん」を読む子どもみたいに。
そのあと、八重子の夫の話が続いて
居酒屋のシーンで、みづほの殺人遺棄シーンと八重子の夫の逮捕シーンの回想が、効果的に入ってくる。
この後、八重子の教会で夫が逮捕された回想があり……
「アフリカの夜」でグッとくるシーンには、必ず「道は開かれてる」という主題に通じるセリフがある。「どんな失敗からでも、人は出直せると思うけどね……」これを、殺人犯のみづほが言うのがずっしりとくる。
ハッとするのは、「ダメだねぇ、そんな逃げ腰じゃあ」というセリフ。みづほが八重子と向き合ってるから言える言葉だ。「これまで頑張ってきた」というのは早すぎて嘘っぽいし、「大丈夫」だと安直になる。ここで、こういうセリフが出るのがスゴイ。ちなみに、何に対して逃げ腰かは、「私、ホントにこの町で、静かに穏やかに暮らしたいと思って来たんです」というセリフに現れる八重子の覚悟のなさなのかな。
「人生から逃げたらアカンのやさ」……重い、みづほが言うから重い。八重子は、みづほと出会ったことで、第7話で史郎と対峙できる強さを持つことができた。
Wikipediaによると、放送前の仮題は「トランジット」だったようだ。トランジットとは、飛行機などが目的地ではないが、燃料などを補給するためにいったん着陸することらしい。八重子はメゾンアフリカで出会ったみづほ達から、人生に立ち向かうために栄養を保給される話ということだろう。メゾンアフリカが目的地ではない、というのも切ない。
おまけで、「どえらい矛盾が押し寄せてくるわよ」言い回しが好き。どえらいと方言を使っている。すごい矛盾というより、えぐみが出る。どえらいの「ど」が濁音なのも、内容と言葉の響きが合っている。
感想
「アフリカの夜」は人間賛歌ドラマ