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引っかき傷とフィルム貼りおぼつかなホコリ
引っかき傷も無い本というのは、経験値をまだもっていない生物のようなもの、かもしれない。
天面に引っかき傷があった。大したものではないが、傷か、という感情が思わずもたげる。
観察しているとその手前に、斜めに面的に研磨された跡を見つける。製品完成のための研磨処理だろう。
惹起回想されるのがフィルムだ。
携帯の画面保護フィルムに過去にないほどに手間取り、貼って剥がして貼って剥がして貼って剥がして貼って剥がしてと繰り返し、ようやく貼り終わったのが今のフィルムである。
微細なホコリや繊維が無数に入り込んでいる。
多くのゴミが入ってしまった失敗作だ。と初めは思った。
が、携帯の画面世界に夜空の星々が散らばった、ということでは?と考えた。
そう思うことにした。
今では、ゴミホコリすなわち夜天星世界と変換され、画面のそれを意識することがあってもネガティブな気持ちは生まれない。
それと近い構図だ。
引っかき傷は経験値であり、そのものの歴史。生きた痕跡やたどった来歴を表すもの。
そう思えればネガティブな印象だけではない。
眠いなかマンガを読もうと思ったものの、そんなことを考えていると1日が始まってしまったので少しだけ読んで本を置いた。
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