医療事務が脳梗塞で入院した話・その13

話は数日戻りますが、何もかもほったらかして即入院になってしまったので、職場においてきたあれやこれやがどうなったかが、それなりに気になります。

それに週末に予約を入れていたカイロプラクティクにお断りの電話をしないといけないし、毎週土曜日にしか通ってなかったけど10日以上休むときは連絡くださいねっていうカーブスっていうサーキットトレーニングのジムにも電話しないといけないし、と思って、ナースに訊いてみました。

「ちょっと、電話をかけたいんですけどー」

ぶっちゃけ、ここの携帯禁止病棟の人は、こういう時どうしてるのかというのも気になってました。

「えーっと、そしたら、あとで談話室に連れてってあげるから、そこで」

なるほど。

要はこの部屋から出ればいいわけだ。

ていうか、部屋から連れ出してもらえるんだ!

というわけで、トイレ以外でSCUから出たのは入院して3日目のことでした。

車椅子登場!

いや、ちょっと、大げさな! とは思ったものの、この時点でわたしはまだ要観察患者だったので、まあ仕方が無い。車椅子に乗せられ、点滴スタンドをお供に、同じ階の談話室というスペースに案内されました。そして、談話室までは結構距離があったので、四六時中ふらついているようなわたしにはやはり最初は車椅子ありだったなという感じです。

もっとも、連れ出すのは良いけれど、ナースも忙しいので談話室にいるわたしにずっと付いているわけにはいきません。

「10分…いや、15分くらいしたら迎えに来るから、絶対ここから動かないでね!」

と言って、戻っていきます。

時間があまりないので、取りあえず3箇所に電話。

カイロプラクティクには入院したので土曜日はキャンセルしますと言って終了。カイロプラクティク禁止になったことは言ってないけど、このままフェードアウトすることにしました。

カーブスには、入院したのでしばらくお休みしますわーと言いましたら、コーチがびっくり大慌て、とにかく休会(一時退会)手続きして書類送るから、と言われました。なるほど、そういう手続きにして毎月の会費が自動引き落としになっているのをストップしないといけないからなのね。ここはその内に復帰するつもり。

あと、携帯の電源を入れたら、上司Mさんからメールがわらわらっと入っていました。

「病名にびっくりで、大丈夫?…って大丈夫じゃないよね…」

「安静にしないといけないところ申し訳ないのですが、やはりわからないことばかりで…メールでの質問、やりとりは大丈夫ですか?」

やっぱそうなるよね。ていうか、むしろ訊かれないと不安。病院を出てくるときに思い出せなかったことだって、訊かれれば伝えることが出来る。

で、ガラケーメールぽちぽち打つのはもう面倒くさいんで、電話することにしました。

泌尿器科と眼科は10年以上ずっとわたしがわたしのペースで業務やレセプトやってたから、他のメンバーは科独自のルールとかがほぼわからない。

DPC導入が10年前で、その前からやっていて、その後医師が何人も入れ替わって、そもそもいろんな投薬や手技の運用とかも医師のやり方によるし、新しい機材もどんどん採用されるから(ロボットはでかい変更だった。ロボット導入の後に運用がちまちまと、だがごっそりと変わっていった)、その都度決めた決まり事やら何かが全部その課の担当しか把握してない状態。

わたしだけじゃない。みんなマニュアルはある時期に作ってたんだけど、それも5~6年前から誰も更新できてない。人が減りすぎて、みんな何人分も業務やってるから常にいっぱいいっぱいでマニュアル更新してる時間など誰もまったく取れなかった。

「すいませーん、携帯禁止の病棟に入っちゃったから電話とかメールとか全くできなくてー」
「ああ、そっちやねー、具合悪くて電話出来ないのか携帯禁止で出来ないのか、どっちかなーって心配で」

電話口のわたしが案外元気そうだったので、めちゃめちゃほっとされてる。

「で、わからないことは、メール入れといてもらえますか、それで、一日一回電話に連れ出してもらうんで、その時にお返事します」

これで、入院中でもお仕事が出来るようになりました。

で、一日一回談話室に連れ出してもらっていたのですが、ナースが時間になって迎えに来た時に電話がまだ終わってなくて、話の内容から

「こゆみさん、それ仕事してるんじゃないのー?」

「まあ、何もかもほっぽらかして来ちゃったから、向こうもなんにもわかんない状態みたくてー」

担当ナースには呆れられたが、わたしがいなくなったので、同僚さん達は毎日2時間だった残業が毎日3時間4時間になったわけだし、GWの連休がなくなったわけだし、訊かれたことに答えるくらいしないと気の毒すぎるし、わたしも全く落ち着かないし、自分の精神安定のためにやらせてくれ。

てな感じだった。

他科担当には、わからないことは本当にわからない。

最初の質問は、要約すると「f-TULってカルテに書いてあるけどこれは経尿道的尿路結石除去術で算定すればいいのか?レーザーによるものなのか、そのたのものになるのかをどこで判断するのか?」ということだったんだけど、泌尿器算定的には初歩の初歩なんだけど、もう他科の略語はわからないし、他科の手術伝票もよくわからないのですよ。

わたしだって、上司の負担を減らすために鼠径ヘルニアの手術入力を始めた頃はTAPPってなんじゃそりゃってなりましたよ。なぜ鼠径ヘルニアだけ手伝い始めたのかというと、当時、鼠径ヘルニアの手術をすると短期滞在手術等基本料3を算定することになっていたからです。入院から退院までが5日以内だと、短期滞在手術等基本料3であらゆる点数が包括されてしまうというなかなかいけずな点数でしたが、逆に言えば手術伝票の入力を大きく間違えていたとしても、直した後の点数が変わらない、ということで、もともと前立腺針生検や白内障の手術などで短期滞在手術等基本料3算定の処理を数だけはたくさんこなしていた自分がやることになったのです、ちょっと処理的に特殊な所もあったので。今は、2018年の改定でDPC病院は短期滞在手術等基本料を算定してはいけないことになっているので普通にDPCで計算していましたがね。

鼠径ヘルニアの話は置いといて、そのうち泌尿器の質問だけではなく別の科の質問も別の人から来るようになりました。精神科レセを肩代わりしてくれた主任から、医療保護のこととか入院精神療法のカウントの仕方とか…実際、泌尿器は外科系の業務をしていればなんとなくニュアンスでわかる事も多いのですが、精神科は外科系とも内科系とも違う精神病棟だけの独特なものが満載で、これはホントに一度訊かなきゃわからない感じのヤツ。

点数表に全部書いてあるだろうと思うでしょうが、運用はそれぞれの病院のやり方があるものなのです。古くさい運用をしているのなら本当は運用を変えていかなければならないのでしょうが、今は目の前の会計を片付けてしまわなければいけないのです。訊けるものなら訊くのが早いし、同僚達も切羽詰まってたのです。

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