医療事務が脳梗塞で入院した話・その9

リハビリさんが最初に訪ねてきたのが入院初日だったのか2日目だったのか覚えていないので、ここでの話は時系列には書いていません。

脳卒中で入院したらしばらく安静にしてその後リハビリって思ってる人がまだまだいらっしゃるようなので言っておきますが、リハビリは普通、入院初日から早速やります。

わたしが仕事で算定していた時も初日からリハビリオーダーが入って来ましたし、どこの病院も入院が決まったら薬剤療法(点滴)してリハビリしてっていう治療は入院計画に沿って同時進行するのです。

それが普通です。

なので、入院早々リハビリの話をされたとか言ってリハビリさんに怒らないようにお願いしますよ。

彼らは患者さんの一日も早い離床に向けて、一刻も早くリハビリに取りかからなくてはならないのです。

リハビリに取りかかるのが早ければ、それだけ患者の回復が見込める方向に向かえるわけです。

なんかめっちゃ大ざっぱに言ってますが、雰囲気つかんでください。

そもそも急性期の病院では、入院したその時から退院に向けて動き始めます。

診療報酬制度ではそうしなくてはならないことになっているのです。

入院日から7日以内に入院の計画立てろとか、入院から3日以内に退院が困難そうな人をピックアップして7日以内に退院に向けて動けとか診療報酬の点数表に書いてあるのです。

厚労省がそう決めているから各病院はその方針に従っているので、退院の話が早すぎるとか言って退院支援の看護師やソーシャルワーカーに怒らないようにお願いしますよホント。

ちなみに、退院が困難そうな人とはどういう人なのかというくくりには「緊急入院の人」というのもありまして、だからそれまでピンシャンしていて突然脳卒中になって入院したけど本人歩けるし家に帰る気満々って人も退院支援の対象ではあるわけです、わたしのように。

じゃあ予約入院の人はというと、予約入院の人に入院前に入院中のことなどいろいろ説明したり退院後の行き先を把握したりすると、この点数に更に加算が取れるので、入院前の人にもどんどん退院支援はなされたりするのです。

ところで、訪ねてくるのはリハビリさんだけではありません。

薬剤師さんが来ました。おお、薬剤指導の点数が発生するのね。

入院するまでは特に飲んでる薬とか無かったし、そもそも通院もしてなかったので、一応持ってたおくすり手帳を見せたんですが、内容が昨年の咳が止まらなくてしんどいんでなんとかしてくれの時に出た咳止めで止まってて、つまり今は何も飲んでないんですね、ということがわかっただけでした。

まあそれがお薬手帳の役割なのでそれでいいのです。

しかし、通院もしていないのに何故カバンの中にお薬手帳が入っていたのか、自分でも謎でした。

多分、お薬手帳カバーに近所の医者とか歯医者とか眼医者とか自分の病院とかの診察券が全部入っていたから入れっぱなしにしていたのではないかと思われます。

そもそも前日の外来巡りのために診察券が必要でしたが、カバンの中にあるからと思って特に出し入れを考えずに家を出たわけですし。

それはともかく、入っている点滴の説明を一通りされたので、聞いてみましたエダラボンは入れるとなぜ痛いのか。

「え? えええーなんででしょう」

エダラボンは特に入れるときに痛いとかはないのだそうです。

じゃあなんでわたしはエダラボンが入るときに痛いのかについて、薬剤師さんは考えられる限りのいろいろな例を挙げてくれましたが、結局これという原因には行き当たりませんでした。

針の入り方がまずいのかもだけど、上手いこと入っているように見えるのです、もう1本針入っていますが、そっちは腫れたり血がにじんだりで何度も針を替えたので上手く入っていないってことはわかりやすいのです。

ともかくこの謎はSCUを出るまでありました。

いろいろな訪問者に紛れて、管理栄養士が来ました。

今の摂取カロリーはだいたいこのくらいですって提示されました。

わたしこっち方面全然わかんないので「はあ」というしかありません。

全粥の分量が多いと思われるかもしれませんが、これ普通のご飯にするとふつうにお茶碗1杯分です、という話は、なるほどと思いましたが、全粥300gは食べる側からすると多いです。

あと、わたしの想定していない人が来ました。

歯科衛生士です。

この人多分早々に来ました。

口の中を一通り見て、歯磨きは今まで以上にしっかりやってくださいという話をされました。

歯磨きがっつりやってくださいというのはこの後にも出てきますが、誤嚥性肺炎の防止、みたいな感じでした。

つか、歯科をやっていない病院に、歯科衛生士がいるとは思ってもみませんでした。

ここの病院の至れり尽くせり感というか、QOL向上のためという以上のなにかある感がすごいです。

まあ、うちの病院は出来るだけ高い方の点数を取るためには何でもやるという点に関してはもっとえげつないので、きっとどこの病院も多少はこんな感じがあるんじゃないかと思いますが。

さて、いろんな人が来るといいましたが、入院生活トータルで一番あれこれ関わったのは言語療法のリハビリさんになります。

呂律が回ってないとか言葉が出ないとかいうことは全然まったくなかったのですが、とにかく飲み込みが出来ないということで入院したわけで、一番大きな課題は常食が食べられるようになってから帰る、ということだったので、どうしても一番長時間のお付き合いになりました。

午前中40分、昼を挟んで午後40分、という時間割が通常になりました。

たまにシフトの都合で午前中60分だけ、なんて日もありました。

で、最初にされたのが「朝昼夕食後に歯磨きはがっつりやってください」という話でした。

口の中はそもそも雑菌の多いところなので、今のように自然に飲み込むことが出来ない唾が喉に溜まっていて、なにかの弾みで雑菌の多い唾が気管に入った場合に誤嚥性肺炎を起こしてしまうから、というだいたいこんな感じの話でした。

まあ確かに脳卒中後の人で誤嚥性肺炎を繰り返している高齢者ってのはよくいるよなーと思い起こして話は納得出来ました。

入院中に誤嚥性肺炎になろうものなら病院の管理体制をとやかく言われそうですしね。

毎日口を開けたり舌を出したりの日々が始まりました。

最初に鏡を見ながらやってみましょうということで鏡を見てびっくりしました。喉が麻痺しているとこうなってしまうというか、顎から首あたりの皮膚が、明らかに病的にたるんでいました。

もともとLLサイズを着ているデブなので二重顎ですが、そんなもんで誤魔化せるようなたるみではありません。

デブが原因のたるみと麻痺が原因のたるみはここまで明らかに違いがあるのかとただただ驚くばかりでした。

ホントにただ事ではない!という感じがひしひしと。

更に舌を出してみましたら、舌が真っ白でした。

自分の舌がこんなに真っ白な、これ苔に覆われてるんだと思うけど、こんな状態の自分の舌初めて見ました。

たかだか脳梗塞やし、2週間エダラボン入れてそのあとちょっとリハビリやったら帰る感じかなーと思ってましたけど、実は自分かなりやばい体調なんかもしれん…。

と、思ってしまいました。

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