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「分析>測定>解析」が少し分かってきた

先日の記事で、分析展と測定展の2つの展示会の話を書きました。そのときの内容は「ユーザー視点で統合した方が良い」というニュアンスでした。

全く同じ内容に思える2つの展示会に出張することは簡単ではありませんので色々と調べてみることにしました。その結果、分析と測定の違いについて深く考えてみましたので共有したいと思います。


言葉(用語)の問題なので、業界によって定義にバラつきはあり、一連の行為全体を分析、あるいは測定、解析と呼ぶことも多いと思いますが、物事の手順という意味で、今回は分析・測定・解析を分けて考えてみます。

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参考として、サイコロ状の物体の正体を知るということを例にして書いてみました。


分析

分析の対象は何かの物や現象です。まだどのようなものなのか分からない場合に、それを構成する要素に分けることで測定可能になります。

物の形や性質を認識し、計測点を決めることは分析にあたります。素人には同じように見える場所でも測定する意味があると適切に分けられなければ次のステップに進むことはできませんし、進んだとしても意味のある結果を得ることができなくなります。

ある意味で最もベテランの経験が活かされる部分です。何度も測定と解析までおこなうことで適切な分析をおこなうことができるようになります。

ただ最近では、自動化によって多点計測・全数検査が可能になってきたため、大量にデータを取って解析をすることで分析の意味合いが変わってきています。


測定・計測

測定とは、基準に対してその量や状態を特定することです。一番分かりやすいのが長さや重さで、分野や物に依存しない単位を用いることで、比較したり応用したりすることができるようになります。

こちらの日本精密測定機器工業会の商品別企業分類を見るとどのような測定の種類があるか想像しやすくなります。

多くの物は定量的に測定しますが、最近では定性的なデータを得るために「観察」という分野も測定に含まれてきていると思います。
定性的な基準感覚や言語的表現を用いて、感じたことを記述していくもので、従来の計算という手法では扱いにくいデータですが、AI時代ではデータとしての活用が可能になってくる分野です。


解析

測定したものは数値などで表せるデータになります。それらは単なる数字やエッセンスの組み合わせなので、何を表しているのかという「情報」にする行為が解析です。

不良品判定のようなものから、ビックデータの中から関連した項目を抽出するようなことまで、データを何らかの結果にしていく行為ですので、解釈という問題と向き合いながら進めていかなければなりません。


統合ツール/自動化の時代(日本では)

従来は、それぞれのステップで職人がおり、使う機器やソフトウェアもバラバラでしたが、近年の方向として3つのステップが統合されたソリューションが重要になってきているようです。

日本の工場では昭和から使っている計測器がいまだに使われているということが普通にあるらしく、それらの置き換えが始まったという話を聞くことができました。(ちなみに海外はもっと進んでいるそうです)

モノづくりの経験が豊富なベテランが退職していくことにともない、また若者人口が減り働き手が減っていきこれまで以上のコスト削減のためには自動化(無人化)を進めていかなければならないという状況から、日本でもようやく統合ツールと自動化が進んできているという話を聞きました。



ステージにサンプルを置くとカメラで全体を撮影し、画像認識によって場所や形状を検出し、モードによって自動的に複数の測定項目や計測点が設定されます。

ユーザーはその内容を確認してスタートボタンを押すと自動的に測定が実行されます。時間がかかる場合にはスケジューリングされて夜中に実行され次の日に結果を確認することができます。

取得したデータは一覧表示され、解析ロジックによって判定結果が示されます。ダッシュボードにサマリーが情報として表示されるだけでなく、その詳細解析やデータを確認できるようになります。

すでに人間にやることは、情報を確認して次の行動を決めるだけで、それさえもAIに置き換わっていくことになるはずです。


分析・測定はますます重要

写真の世界では、空を見上げてその日の天気からシャッター速と絞り値を決めていた時代がありましたが、技術の進歩によってリアルタイム測光が登場し「測定しながら撮影」することで失敗写真を大幅に減らすことができるようになり、現在のiPhoneのような誰でも奇麗に撮影できるようになったのは分析・測定技術のおかげなのです。

薬品、食品、衣料品などあらゆる産業にとって、品質を管理し高度な条件で製造できる時代が到来しようとしています。

人出不足、後継者問題、働き方改革という社会環境の中で、産業のワークフローが根底から変化してきており、それを支える分析機器・測定機器の在り方も変化していかなければなりません。


それに対応できるメーカーが生き残っていくということで、いろいろと考えさせられる展示会でした。




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