ダンジョンズ&ドラゴンズ:シナリオ案『森に響く助けを呼ぶ声』
始めに
このシナリオは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」第5版に対応したシナリオである。レベルが5~6程度のPC3人での挑戦を想定している。オンラインセッションで使用した場合、想定される所要時間は3~4時間程度。
DM向け記号解説
:大通りにはヒューマンの他にも多種多様な種族が行き交っている。
のような「:」から太字の文章が続く形になっている文は、シナリオの進行に合わせてDMが読み上げる文であることを意味する。「:」の前に発言者の名前や、読み上げるにあたっての条件が書かれていることもある。通常の太さの説明文の中に、太字の「セリフ」が挿入されることもあり、その場合は前後の文章を見てその「セリフ」を、いつ、だれが発するべきなのか判断すること。
エルフの射手は的に狙いを定め矢を放った。(攻撃ロール)矢は見事に的の中心を射抜き周囲から拍手の音が響く。
のように、内部に判定や条件が書かれた()で文章が区切られている場合、判定が成功するか、シチュエーションが条件に合致していないと、それに続く文章は読み上げられない。
治療を受けた男は<治療を行ったPC>に感謝を述べ金貨袋を手渡した。
といった「条件」が<>で囲まれている箇所が出現した場合は、そこにその条件に適合する単語を入れる。
これらの文にはDMの判断により、自由に修正を加えて構わないが、重要な情報が失われないように注意すること。
導入
:このシナリオは冒険者たちが冒険者向けの依頼が貼りだされる宿屋で朝食を終え、それぞれの時間を過ごしている場面から始まる。まずは各々が何をしているかロールを行おう。
:その時!
パーヴァル:「はぁ……はぁ……すぐに動ける、腕の立つ冒険者はいないか!?大変なんだァ!」動転した様子の男が服のあちこちに枝や葉っぱを貼りつかせた状態で宿屋に転がり込んでくる。
:他の宿泊客に注意を払っていたものであれば分かるだろう。先日この宿の部屋を借りた旅の貴族『パーヴァル』だ。
◆ヒューマンの旅する貴族『パーヴァル』:中型・人型生物(ヒューマン)、中立にして善
AC:10 HP:10 ヒット・ダイス:2d8 移動速度:30フィート(9m)
【筋】:10(±0)
【敏】:12(+1)
【耐】:10(±0)
【知】:12(+1)
【判】:12(+1)
【魅】:14(+2)
技能:<隠密>+3、<看破>+3、<説得>+4
感覚:受動<知覚>11
言語:共通語
脅威度:1/8(25XP)
■■■ アクション ■■■
ショートソード:近接武器攻撃:攻撃+3、間合い5フィート(1.5m)、目標1つ。
ヒット:6(1d6+1)[刺突]ダメージ。
ショートボウ:遠隔武器攻撃:攻撃+3、射程80/320フィート(24m/96m)、目標1つ。
ヒット:6(1d6+1)[刺突]ダメージ。
持ち物:この貴族は他に『探検家パック』相当の所持品と調理用具を持つ。加えて硬貨の形での
『150gp』『50sp』と、合わせて『1000gp』に相当する価値を持った幾つかの宝石を持っている。
:この場で彼は以下のことを話してくれる。
:この場でPC達は難易度15の<自然>判定に挑戦できる。既に遭遇したことがある場合など、明らかに既に知っている場合は自動成功としてよい。
成功:成功者は話を聞いて『フック・ホラー』と呼ばれるアンダーダークの怪物のことを思い出す。
:フック・ホラーは本来、氏族単位で暮らす種族である。おそらく今回目撃されたのは何らかの要因で氏族の共同体から離れて地上へ迷い出、問題の森へと住み着くことになった個体であろう。
:この情報を知っている場合このシナリオで起きたフック・ホラーとの戦闘でイニシアチブが+3される。
パーヴァル:「僕が君たちに頼みたいのは、あの怪物について調査してその脅威を森から取り除くことだ。加えて、その過程で僕を助けた人について何か分かったことがあったなら教えてほしい。報酬は……」
パーヴァル:「これだけの宝石を……事前に半分、成功で残り半分、でどうだい!?」
:そう言うと彼は小袋を幾つか取り出し、宝石を机の上に撒いた。これらの宝石は合わせて600gpの価値を持ち、換金すれば一人頭200gpずつになる。
森
:かくして、今、あなた達は木漏れ日が照らす森の中にいる。周囲は日中でもやや薄暗く、多くの木々が視界を遮ってもいるため、見通しがよいとは言い難い。木々のざわめく音と、甲高い鳥の声が周囲に響く。
痕跡
:この場でPC達は<捜査or知覚>で難易度15の判定に挑戦できる。
成功:成功者は件の怪物のものと思われる巨大な足跡を見つけることができる。足跡は小川で途切れているが、その足跡を見れば足跡の主は『二体』いたことが分かる。おそらくはつがいだろう。もしかすると住処には卵があるかもしれない。この情報を知っている場合このシナリオで起きたフック・ホラーとの戦闘でイニシアチブが+3される。
助けを呼ぶ声
:その時!
:森の中に大きな叫び声が繰り返し響いた。
コツカチ:「助けて!」「助けて!」「助けて!」
:ここであなた達は難易度14の<看破>判定を行うこと。この判定では全員が『有利』を得られる。
成功:その声は依頼主のパーヴァルとよく似ている。加えて、その響きはどれも同じであるように聞こえる。
声のする方へ向かった場合:あなた達にはカラスのような顔をした人型種族『ケンク』が、傷つき、意識を失って木にもたれかかるカマキリのような人型種族『スリクリーン』を前に必死に叫んでいるのが見えた。隣には彼らの荷物と思われる背負い袋と、両端に刃がある長柄武器、三方向に刃の突き出した平たい投擲武器が置かれている。
傷ついたスリクリーン
◆スリクリーンの冒険者『カゴツ』:中型・人型生物(スリクリーン)、混沌にして善
AC:16(外皮) HP:0/36 ヒット・ダイス:6d8 移動速度:40フィート(12m)
【筋】:12(+1)
【敏】:16(+3)
【耐】:12(+1)
【知】:10(±0)
【判】:12(+1)
【魅】:9(-1)
技能:<隠密>+5、<生存>+3、<知覚>+3
感覚:暗視60フィート(18m)、受動<知覚>13
言語:スリクリーン語
脅威度:1(200XP)
■■■ アクション ■■■
複数回攻撃:ギスカによる攻撃を2回、あるいはチャトクチャによる攻撃を2回行う。
ギスカ:近接武器攻撃:攻撃+3、間合い1.5m(5フィート)、目標1つ。
ヒット:5(1d8+1)[斬撃]ダメージ。
チャトクチャ:遠隔武器攻撃:攻撃+4、射程30/120フィート(9m/36m)、目標1つ。
ヒット:5(1d6+2)[斬撃]ダメージ。
◇その他特記事項
カメレオン甲殻:甲殻の色を周囲の色や質感に合わせて変えることが出来る。
これにより隠れるために行う<隠密>判定に有利を得る。
立ち跳び:助走の有無によらず幅跳びなら30フィート(9m)まで、立ち跳びなら
15フィート(4.5m)まで跳躍できる。
慌てふためくケンク
◆ケンクの冒険者『コツカチ』:中型・人型生物(ケンク)、混沌にして中立
AC:13 HP:9 ヒット・ダイス:3d8 移動速度:30フィート(9m)
【筋】:10(±0)
【敏】:16(+3)
【耐】:8(-1)
【知】:11(±0)
【判】:10(±0)
【魅】:12(+1)
技能:<隠密>+5、<知覚>+3、<ペテン>+5
感覚:受動<知覚>12
言語:共通語、風界語、スリクリーン語 ※これらの言語は"声まね"の使用を通じてのみ話す。
脅威度:1/4(50XP)
■■■ アクション ■■■
ショートソード:近接武器攻撃:攻撃+5、間合い5フィート(1.5m)、目標1つ。
ヒット:6(1d6+3)[刺突]ダメージ。
◇その他特記事項
声まね:聞いたことのある音ならどんなものでも(声を含めて)声まねすることができる。
ケンクの声まねを聞いたクリーチャーは、難易度14の【判断力】<看破>判定に成功すれば
偽の音だと気づく。
待ち伏せ屋:戦闘の最初のラウンドにおいて、このケンクは、自分が不意を討った
クリーチャーに対する攻撃ロールに有利を得る。
持ち物:このケンクは他に『探検家パック』相当の所持品と『30gp』『60sp』を持っている。
:あなたが『ケンク』や『スリクリーン』を知っているかは判定なしで自由に決めてよい。判定で決める場合は<自然or歴史>で難易度10の判定を行うのが適当だろう。
:ケンクは聞いたことのある音の真似を得意とする種族だ。彼らは己の聞いたことのある音を真似する形でしか話せず、新しい台詞を産み出す力を持たない。
:そして、ケンクの中には己の声を他者を騙すために使うものも多い。だが……今、彼はあなた達を騙すために声を上げているのではなく、本当に困っているように見える……少なくとも表面上は。
:彼は倒れているスリクリーンと協力関係にあり、スリクリーンを助けてほしいのだろう。ここでスリクリーンを助ければ彼らはあなた達に恩を感じ、力を貸してくれるかもしれない。
:しかし、スリクリーンは人を襲った例も少なくない種族である。彼らは油断ならぬ狩人として名を馳せておりエルフの肉を好むとの話もある。彼らが人を襲うのは基本的に生きるためであり、食料とする以外の『有用な関係』を模索できる者は無闇に人を襲ったりしないことも知られているが、目の前のスリクリーンが恐るべき捕食者なのか、良き隣人なのかは分からない。
:少なくとも確かなのは、ケンクもスリクリーンも多種多様な感情を持ち、善にも悪にも傾きうる『人』であり、目の前のスリクリーンは大きな怪我をして死にかけているということだ。
コツカチ/PC達がカゴツを助けた場合:「ありがとう!」ケンクは泣きながら膝をつきペコペコと頭を下げ感謝の意を示した。
:目を覚ましたスリクリーンは周囲を見渡すと、顎をコツコツと鳴らした。それはケンクへの指示だったようで、ケンクはハッとした様子で背負い袋を漁り、金貨を10枚取り出して<治療を行ったPC1人>に差し出した。
コツカチ:「名前!」そう言うとケンクは自分を指さして1回、スリクリーンを指さして1回、スリクリーンが顎を打ち鳴らす音を真似した。どうやらこれが自分達の名前だと言いたいらしい。人間の声帯でそのまま発音するのは困難だが無理に発音するならケンクは『コツカチ』スリクリーンは『カゴツ』となるだろう。
:カゴツが顎を打ち鳴らし、それを共通語としてコツカチが通訳する。
コツカチ:「通訳!」
コツカチ:「疑問」「でかいの」「狩る」「お前達」お前達はあの巨大な怪物を狩りに来たのか?と言いたいらしい。
:カゴツが顎を打ち鳴らし、コツカチが「借りは返す」と言葉を発する。
小休憩
:コツカチの喉から乾いた音が漏れる。どうやら昨晩から何度も叫んで喉が枯れてしまったと伝えたいらしい。定期的に助けを呼びつつ、寄ってくる獣を避けるために狂暴なモンスターの声なども出していたのだろう。
カゴツが全回復していない場合:カゴツも一命こそ取り留めたものの、傷は深くすぐに戦うのは難しい。
:ここであなた達はこの奇妙な冒険者達と共に『小休憩』出来る。
調査
:怪物の住処を見つけたい場合は全員が〈捜査or自然or知覚〉で難易度13の判定を行うこと。1人でも成功したなら住処を見つけられる。この判定にはNPCも参加できる。住処の場所はこの判定で最も高い出目を出した者が最初に気付いたことにするとよいだろう。この際はグループと別行動して調査することを宣言することもできる。その場合D6を振り4以上だった場合は『有利』を得て判定を行うことができる。3以下だった場合は判定を行うことができずイベントが発生する。
不意討ち
マップ:森
:黄色く塗られたマスは味方側の初期配置マスであり、紫に濡られたマスで移動を終えたキャラはマップからの脱出を宣言できる。
マップ:フック・ホラーの巣
:黄色く塗られたマスは味方側の初期配置マスであり、紫に塗られたマスで移動を終えたキャラはマップからの脱出を宣言できる。また洞窟内部のマスには天井が存在する。
◆フック・ホラー:大型・怪物、真なる中立
AC:15(外皮) HP:75 移動速度:30フィート(9m)、登攀30フィート(9m)
【筋】:18(+4)
【敏】:10(±0)
【耐】:15(+2)
【知】:6(-2)
【判】:12(+1)
【魅】:7(-2)
技能:<知覚>+3
感覚:疑似視覚60フィート(18m)、暗視120フィート(36m)、受動<知覚>13
言語:フック・ホラー語
脅威度:3(700XP)
■■■ アクション ■■■
複数回攻撃:2回の"鉤爪"攻撃を行う。
鉤爪:近接武器攻撃:攻撃+6、間合い10フィート(3m)、目標1つ。
ヒット:11(2d6+4)[刺突]ダメージ。
◇その他特記事項
鋭敏聴覚:聴覚による【判断力】<知覚>判定に有利を得る。
音波探知:聴覚喪失状態のときには疑似視覚を使用できない。
怒りの猛攻:自身のつがいである『フック・ホラー』が『気絶』または『死亡』した場合、
あるいは自身らの卵が破壊された際に発動。バーバリアンの『捨て身の攻撃』を使用可能となる。
この効果は発動から30日が経過するまで維持される。
:ここでPCは難易度15の<自然>判定に挑戦できる。
成功:このフック・ホラーが持つ『怒りの猛攻』のデータが開示される。
フック・ホラーの卵
戦闘描写案
カゴツ/ギスカ:カゴツは強靭な足腰で大地を踏みしめ、跳躍!その勢いを乗せ長柄武器の刃で<対象>へと切りかかる!
カゴツ/チャトクチャ:カゴツは三方向に刃の突き出した平たい投擲武器を<対象>に向け投げる!
フック・ホラー/鉤爪:フック・ホラーの巨大な鉤爪が<対象>へ迫る!
フック・ホラー/怒りの猛攻:フック・ホラーはハゲタカめいた叫び声を上げ全身を震わせる!
臨機応変な対応
おことわり
記事作成に利用した画像生成AI:「TrinArt」
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