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【プレイレポート】ニンジャヘッズがダンジョンズ&ドラゴンズ第5版を始めた

◇自作記事総合インデックス

前書き

 初めましての方は初めまして。古矢沢こやざわと申します。この度は友人の誘いを受けて参加したダンジョンズ&ドラゴンズ第5版(以下D&D)の卓でとてもエキサイティングな体験ができたので、そのプレイレポートを書いてみることにしました。

 始めに軽く自己紹介しておきますと、自分は普段『ニンジャスレイヤーTRPG』界隈で活動し、その界隈で様々な作品を投稿している者です。TRPG界隈への入口は高校生の頃に動画投稿サイトで起きていた『クトゥルフの呼び声』ブームであったと記憶しています。D&Dのルールを用いた卓への参加は当記事で語らせて頂く卓が初めてでしたが、D&Dの世界観を用いたベストセラー小説である『ドラゴンランス』は読んだ経験がありました。

 他にも色々と話したいことはありますが、自分についてここで語るべき話はこの程度でしょう。ここからは本題である、自分が初めて体験したD&Dの卓についての話に移らせて頂きます。まずは自分が初めてD&Dの世界に創造したプレイヤーキャラクター(以下PC)である『メル・アルクト』との出会いの話を始めましょう。

最初の冒険者

 自分が初めて参加したD&Dの世界を舞台としたセッションは、セッションの進行を担当するダンジョンマスター(以下DM)の勧めからホビージャパンが無料で配布している『フィフスエディションRPG』のルールを参照して行うこととなりました。『ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック』は後に購入しましたが、安い買い物ではなかったので購入の判断を行う前にお試しできる環境が権利的に問題のない形で整っていたのは有難かったと思います。

 その卓ではセッションを行うDiscordサーバーにリンクの貼られたサイトに置かれているサンプルPCのデータも使用可能でしたが、自分はせっかくなので自ら冒険者のデータを作成してみることにしました。その結果産み出された冒険者こそが、先述の『メル・アルクト』でした。

 能力値は固定の数値を割り振って決めることも、ダイスロールの結果算出された数値を割り振って決めることも可能でした。自分は途中までは固定の数値を割り振って決めようかと考え、実際に人物像や外見がほぼ固まるまではそのつもりでビルドを行っていましたが、最終的にはランダム性を楽しむことを選びダイスロールで能力値を決定しました。

 その結果、彼女は筋力4、敏捷力18、耐久力8、知力15、判断力12、魅力16という極端な能力値となりましたが、それはそれで面白い体験ができそうだと感じたので個人的には満足でした。尚、筋力が低すぎて60ポンドまでしか荷物を持てないため初期装備はいくつか諦めることになりました。

 そんなこんなでキャラシートは無事に完成し、彼女は陽気なエルフの吟遊詩人バードになりました。彼女は人当たりが良く親切で、美味しいものに目がない人物であり、フルートなどの楽器を用いて音楽を奏でることで様々な魔法を行使することができます。また筋力の低さを技量で補うレイピアやダガーを用いた護身術を修めており、魔法に頼らずとも自身や仲間の身を守ることのできる強さを持っています。属性は『混沌・善』であり、有事の際は何が正しいのかを自ら考えて少しでも善い行いをしようと努力できる人物です。年齢は50歳としましたが、これはエルフとしては若者に当たる年齢です。身長は177cm、体重は67kgとしました。

 しかし、この時点ではまだキャラシートが完成しただけです。彼女の人物像はこれから経験していく冒険や日々の生活の中で危機との遭遇や仲間との交流を経て、より明確な実態を持って形作られていくことになります。そして、その過程は彼女が生きている限り、果てしなく続くものです。次の項ではそんな道程の始まりの部分であり、自分にとって最初に体験したD&Dの物語である『アイススパイア山の竜』における3つの冒険についての話をしていこうと思います。

【隊商の護衛】

 鉱山町ファンダリンの中ほどにある『ストーンヒルの宿屋』を仮初の宿とする冒険者達はその日、宿屋の店主である『トブレス』から紹介された『獅子盾商会』の馬車を護衛する仕事を受けることに決めた。かくして獅子盾商会の見習いである少女『リコ』、そして自分達とは別に雇われたハーフエルフの冒険者『スピラ』と共に街道を進むこととなったPC達は、休息に訪れた地でホワイト・ドラゴンに襲撃され壊滅した野営地と何者かの略奪の跡を発見する。

 自分とメルが初めて経験したD&Dセッションです。この記事で語らせて頂いているキャンペーンは『セッションの度にメンバー募集を行い集まったメンバーで話を進める』スタイルを取っており、この時に集まったのはメルを除くと以下のようなメンバーでした。尚、ウィーヴラ氏とヴェロニカ氏はメルがキャンペーンに参加する前に一度セッションを終えています。

ウィーヴラ(PL:シカナ):ゴールドドラゴンの血を引くドラゴンボーンの女聖騎士。見聞を広めることを目的とした諸国漫遊の旅を続けている。

ヴェロニカ(PL:silverkey):太陽の神を信仰するクレリックの女性。村がクリーチャーの襲撃で滅びたことを神からの試練と捉え冒険者になった。

セルク(PL:Gendrun):何者かを探し放浪の旅を続けるエルフの女性。『探し人』の依頼が何時頼まれたものかは失念してしまったらしい。

 この一度のセッションだけでも、様々な印象深い出来事が起きました。イベントを決めるためのダイスでGendrun氏が最大値を出した結果、馬を休ませるため立ち寄った湧き水の出る遺跡でポーションや巻物を見つけたこと。その裏でメルが出目1を出し水場に近づこうとして転んだこと。

 ぬかるみに車輪が嵌って動けなくなった時、メルの持つ能力である『バードの声援』とヴェロニカ氏の呪文『エンハンス・アビリティ』を用いてウィーヴラ氏が車輪を持ち上げるのを手伝ったこと。無惨な有様となった野営地を発見した後、ドラゴンの脅威を少しでも早く目的地の村に伝えるためクリーチャーの移動速度を速める呪文『ロングストライダー』を馬に用いて馬車を加速したこと……

 そして、自身にとって初めての『D&Dにおける戦闘』を経験したこと。このセッションにおける戦闘は、ドラゴンの襲撃により壊滅した野営地をPC達より一足先に発見し、宝石や食料を略奪した『ノール』と呼ばれるハイエナの頭を持った人型クリーチャーとの間に生じたものでした。町へと急ぐ冒険者達の元に野営地で略奪を行った群れの一員と思われるノールの小集団が現れ、獰猛に襲い掛かってきたのです。

 この場で起きた戦闘は、スピラとウィーヴラがノールから放たれた矢を受け、ヴェロニカが『スピリチュアル・ウェポン』の呪文で生成した空中浮遊する鎌を用いた猛攻を行い、メルが『スリープ』の呪文により複数体のノールを無力化し、セルクがスピラの呪文『へクス』による追加ダメージを乗せたショートソードを深くノールに突き刺す……といった具合の連携が光るものでした。

 また、今回は特に特筆すべき点のないノールの兵士複数体と戦っただけでしたが、DM曰く『本来ならここに隊長も来た』のだそうです。つまり『呪文による馬車の加速を提案し実行した』ことに対して即興でリターンが設けられた形です。こういった柔軟な対応が行えるDMの元でセッションが行えるというのは、個人的には非常にありがたいことだと思います。

 そのような戦闘の末にノールの小集団を撃退した冒険者達が無事に町へと到着したことで、自分にとって初めてのD&Dセッションは終わりを迎えました。この夜のセッションは改めて思い返してみてもD&D初体験を飾る上で申し分のない、素晴らしい体験だったと言えるでしょう。セッションが行われた12月18日は自分の誕生日でもあったので、そういった意味でも印象深いです。

セッション中の一幕:隊商の護衛

リコ:「獅子盾商会ファンダリン支店へようこそー!」

リコ:「あたしはリコ!見習いでー……今回の隊商のまとめ役任されてるんだ!」依頼見てやってきたんでしょ?と。

スピラ:「……スピラだ」そうぶっきらぼうに付け加えて。

メル:「はい、トブレスさんから依頼を紹介して頂きました。僕はメル・アルクト。冒険者です」

ウィーヴラ:「ほう。つまり貴女が依頼主殿でありましたか」目を丸くする。

リコ:「あーっ!鱗がないからってすぐ子供に見ちゃうんだ?」驚いた様子におどけて返し。

スピラ:「……歳の割には目端は利く。性悪だがな」

ウィーヴラ:「ああ、これは失敬。鱗のない方々はおおよそ我らの若年期ほどの背丈でありましてな。気分を害したのなら申し訳ない」ややおどけた風ではありつつも、頭を下げる。

ウィーヴラ:「自分はウィーヴラ。聖騎士見習いであります!」

セルク:「私はセルク、宜しく頼むのだな」

セルク:「まあ、私は同族でもない限りは皆子供に見えるのだが」

ヴェロニカ:「……若く溌剌とした方ですね。私はヴェロニカ、旅のクレリック……今は冒険者です」ヴェロニカは楚々とした素振りで控えている。

DM:ちなみにリコはヒューマン……スピラは、エルフの者たちは何となく分かる。エルフのように見えるが……やや気配が異なる。すなわちハーフエルフだろうか、と。

メル:いちいち話題にされるのも大変だろう、と特に触れずにおきましょう。

セルク:「そちらの若者は....」スピラを見て

リコ:「レイロンの町から来た時に捕まえてきた冒険者!」仕事探してるみたいだったからここまで連れてきたんだ―、と。

スピラ:スピラは無言のうちに鼻を鳴らす。

ヴェロニカ:「なるほど。一つの縁ですね」

スピラ:「同じ雇われだ」

ウィーヴラ:「よろしくお願いするであります!」

セルク:「ふむ、まあいいか。よろしく頼むのだな」握手求めるか2人に

DM:スピラは、自身の左手を服の袖へと隠し、右手を差し出して。リコは両手でしっかり握って挨拶をする。

※発言順の調整など微修正あり

【落ちた穴の先で】

 ある日の朝、ストーンヒルの宿屋で朝食を終えたばかりの冒険者達の元に泥だらけの鉱夫が幾人も転がり込み、鉱山で起きた崩落事故で地下に飲まれた主任と新入りの救助を求めてきた。これに応じた冒険者たちは、坑道の奥に開いた大穴へと降り、その奥に広がる遺跡めいた空間へと足を踏み入れることとなる。

 先ほど語った『隊商の護衛』の翌日に行われたセッションです。今回の話は事前に募集されたお題をランダムに3つ組み合わせてセッションに用いる三題噺方式で用意されたものであり、共に参加したメンバーは『隊商の護衛』でもご一緒させて頂いたヴェロニカ氏と以下の2人でした。

ゲルツ(PL:しゅう):ハーフリングの盗賊。軽薄な男であり、故郷を追われて各地を放浪している。その行動故か良い仲間に恵まれた経験に乏しい。

レイ(PL:Gendrun):とある武術家を養父とするティーフリングの若者。病に伏せた養父の後継者を探すため旅をしている。やや皮肉屋。

 このセッションはPC達がストーンヒルの宿屋にある『鉱夫食堂』で朝食を摂るシーンから始まりました。その日は宿屋の店主が紹介できる依頼にも働き盛りの冒険者に丁度いいものがなく、冒険者たちは朝食を摂りながら店主の語る雲を掴むような依頼……行方不明となった貴族の御曹司『エルグ・タルク』の捜索願について話を咲かせていたのです。

 そこに、先述の通り泥だらけの鉱夫達が現れ物語は動き始めます。彼らは崩落が起きたことと、その崩落で出来た穴に主任の『パトリック』と新入りの『ボブ』が飲まれてしまったことを語ります。このことを聞いた冒険者達の反応は様々でした。驚いて詳しい話を聞こうとするメル。太陽の神を信仰するクレリックとして地の底に堕ちた命を救うことへ乗り気になるヴェロニカ、始めは面倒くさそうな顔をしていたものの店主から「主任を助ければ町長はそれなりに謝礼を出すだろう」という話を聞き俄然やる気になるゲルツ。渋い顔をしていたが同様に報酬について聞き鍛錬がてら依頼を受けることを決めるレイ……

 そして、そのまま鉱夫達の案内を受け現地へ到着した冒険者達は坑道の奥で大きな穴と、その奥に広がる遺跡めいた空間を目にすることになります。その穴は7~8mもの落ち方次第では命に関わる深さがあり、まずは安全に降りる方法を見つける必要がありました。

 そこで役に立ったのがメルの習得していた『フェザー・フォール』の呪文です。落下速度を安全な着地を可能とする速さまで落とすこの呪文を「せーの」の声に合わせたジャンプと共に用いて無事に内部へと着地した冒険者達は、床に散乱するモグラか何かの屍肉から放たれる不快な匂いを感じると共に、何かが引きずられていったような跡を見つけます。

 そしてレイはそれらの痕跡に加え、ゲルツの松明と、ヴェロニカの発動した『ライト』の呪文が照らしだした壁に頭足類の頭部を持ち、人の脳を啜る悪名高い人型の怪物『マインド・フレイヤー』の壁画を見つけます。ここはマインド・フレイヤーを崇める神殿だったのか?そして、その崇拝者は今尚この遺跡に潜んでいるのか?冒険者達はそのような話をしながら、先へと進みます。

 その時でした。突如、暗闇からメルとレイを目掛け何かで汚染された石ころが投擲されてきたのです。2人はなんとかこれを躱しましたが、続けて暗闇から現れた眼のない人型の怪物達……2体の『グリムロック』との戦闘が始まります。この戦闘はメルが棘付き棍棒による痛烈な攻撃を受けそうになるヒヤリとするシーンこそあったものの、皆がそれぞれの長所を活かし迅速に勝負をつけたのもあって全員怪我もなく終えることができました。

 しかし、先へ進んだ冒険者達の前に、今度は先程より多くのグリムロックが立ちふさがります。そこに助力に現れたのは、冒険者達の戦いが産み出した隙を見て自ら縄抜けに成功した新入りの鉱夫『ボブ』でした。加えてその顔は、人相書と比べると随分と落ち着いた印象を受けるものの冒頭で話題に上がっていた行方不明の御曹司『エルグ・タルク』と瓜二つだったのです。先ほど片付けたのと同じだからとデータ面の処理を省略した戦闘が終わった後、彼は自分達がグリムロックに捧げ物にされかけていたこと、先輩は先程連れていかれたこと、そして自らは一人でも先輩を助けに行くつもりであることを語りました。

 そのことを受け、メルは「聞きたいことはあるが今は人命優先」だと考え、ヴェロニカは「貴きお方にも何らかの機会があったのだろう」と考え、レイはボブの身体を観察しつつも「救助を急いだほうが良さそう」だと判断し、ゲルツは人相書きを手配した者に情報を高く売りつける方法を表情にはおくびにも出さず考えていました。

 それぞれの現状に対する考えには違いがありましたが、何はともあれ成り行きとして冒険者たちは怒りに燃えるボブに導かれ現場主任『パトリック』を救助しに奥へと進むことになります。そして奥の部屋でボブと冒険者達が見たものはマインド・フレイヤーの像、祭壇と、その周囲に存在するグリムロックの群れ、そしてマインド・フレイヤーに少しでも似た姿とするためかあちこちに装身具を巻かれた不定形の怪物『ジバリング・マウザー』でした。縄に縛られ祭壇の前に転がされたパトリックはボブだけでも連れて逃げるよう冒険者達に叫びますが、ジバリング・マウザーはボブと冒険者達の方に興味を示しグリムロック達と共に襲い掛かってきます。ボブと冒険者達は相応に苦戦しつつも、これを撃退することに成功しました。

 救助された主任のパトリックは、この戦闘で獅子奮迅の戦いぶりを見せたボブが持つ冒険者の才に触れつつ、縛られている間に知った宝の在処を冒険者達に教えてくれました。そして身分を隠している身であるボブを案じ、冒険者たちに「これで十分か?」と目配せしたのです。情報を高く売りつける方法を検討していたゲルツも、これを受けて損得の計算を行った末「ここで下手に深入りして彼を敵に回してもつまらない」との判断に至り、ボブはこれからもボブとしてファンダリンで生活を続けて行けることとなりました。そして数日後、ボブは恩返しと仕事探しのため、新たな冒険者としてストーンヒルの宿へと姿を現すこととなります。

 今回のセッションでは、以前から知っていたマインド・フレイヤーの名が出たのも印象に残りました。ジバリング・マウザーとの戦いがメルにとって初めての『ボス戦』と呼べる戦闘であったことも外せないでしょう。また、ボブについても多く語るべきところがあります。彼の名は実のところ『隊商の護衛』の時点で「宿屋で奢られていた新入り」として挙がっていました。その時点では軽く触れられるだけだった彼の話が、三題噺方式で作られた物語の中で膨らみ新たな冒険者が誕生するに至った形となります。

 彼はDMが動かす人物でありながらPCと同じ立場で、同じルールを用いて成長していく『キャラシートを持ったキャラクター』です。このようなキャラのセッションへの参加はDMのKasumi氏が得意とする要素であり、先述の『隊商の護衛』における『スピラ』氏も同様の特徴を持っています。DMが動かす人物であるため一般的なPCとはまた違った物語への関わり方を可能としつつ、一般的なPCと同じ立場で物事に相対することもできるこれらのキャラクターはKasumi氏のセッションの大きな特徴であり、物語に豊かな彩りを与えてくれています。

セッション中の一幕:落ちた穴の先で

ボブ:「前の恩返しと……仕事を探しに来た」その言葉は、新たな仲間の到来を意味していた。

ゲルツ:「……恩返しもなにも。僕はただカネに目がくらんだだけですので」律儀ですねえ、とでも言いたげな表情だが、口元は小さく笑っている。

レイ:「おや、どうも。仕事は兎も角格闘術に興味などは?」こいつはある意味平常運転

ヴェロニカ:「……太陽の導きは、数奇なものですが。これも縁、ですね」手を組み、祈りのポーズ。伏し目がちのため、表情は分からないが……口調は柔らかい。

メル:「分かった。よろしくね!」

メル:「あと……」小声で。

メル:「トブレスさん、君に似た人を探す依頼について話してきたことがあるんだけど」

メル:「……心当たりは?」

ボブ:「……知らねぇな。俺は、ファンダリンの鉱夫見習いのボブだ」それで十分だろ、と。

メル:「……分かった。そういうことにしとく」

メル:「それに関してトラブルがあったら言ってね」

メル:「少なくともここに滞在している間は、力になれるから」

DM:その言葉に、ボブは小さく。だが、恭しく礼をするのが見えた。

※誤植の修正など微修正あり

【深緑の弦亭での一夜】

 獅子盾商会の仕事を終えファンダリンに帰る途中、突然の豪雨に襲われた冒険者達は平原にぽつんと立つ宿『深緑の弦亭』で雨宿りを行うこととした。宿の人々は親切な態度でこれを迎え入れ、冒険者達は束の間の暖かい時間を過ごす。しかしそれは、悪夢のような恐ろしい夜の前触れに過ぎなかった……

 先ほど語った『落ちた穴の先で』を終えた日の翌日に行われたセッションです。DMであるKasumiさんは他システムでもこのような頻度での卓開催をよく行いますが、改めて考えても凄まじいことだと思います。この場を借りてPLとして感謝を送りたいです。

 さて、今回の同行メンバーはヴェロニカ氏、レイ氏、先日仲間になったボブ氏……そして初めてご一緒させて頂くメノジア氏とレニッサ氏です。

メノジア(PL:シカナ):両親から引き継いだ狩の秘伝書をより高度なものとするために旅をしている小柄なティーフリングの女性。

レニッサ(PL:しゅう):
ティーフリングの女性。高い魔術的素養を持ち、古くから伝わる秘伝の魔術書を親から受け継いでいる。

 このセッションは先述の通り、獅子盾商会の仕事を終えファンダリンに帰る途中で突然の豪雨に襲われた冒険者達が『深緑の弦亭』なる宿屋へ雨宿りに訪れたところから始まります。亭主の男『エドマンド』とエプロン姿の女性『イルマ』そして雇われの小作人『ジェド』は冒険者たちを親切な態度で出迎え、冒険者達は宿の中に漂うアロマの香りと、サービスとして振る舞われたエール酒によって束の間の休息を得ます。

 しかし突然宿の外から響いた恐ろしい怪物の声によって、休息の時は終わりを迎えます。身長3mはあろうかというオーガが棍棒を手に木々の間から現れ、宿へと近づいてきたのです。オーガ自体は冒険者達の手により誰も傷つくことなく倒すことができましたが、その後の顛末は奇妙で不穏なものでした。頭部に斧が突き刺さったままのオーガが突如として動き出し、その首をこれまで戦闘を遠巻きに見ていた亭主の『エドマンド』が冒険者達が反応するより早く刎ねたのです。加えてヴェロニカはオーガが最期に共通語で「どうして」と言葉を発したのを耳にしました。

 この事態の受け止め方は個々人によって異なりました。オーガが「信じた太陽に見放されたものに見えた」と語るヴェロニカ、確実に仕留めたはずだと訝しむボブとメノジア、まだ危険は去っていないのではないかと警戒を続けるメル、以前のセッションで欲望を司るドワーフの神『アバソー』から影響を受けたためオーガのカネになりそうな部位について思案していて異常に気付けなかったレニッサ。そんな中、エドマンドは自身の戦闘技術について「少し前までは兵士をやってたもんで」と説明した後、ジェドと共にオーガの死体を埋めるため裏の森へと去っていきます。

 そして、戦いを終えた冒険者達にはイルマから御馳走が振る舞われます。PL視点ではこの時点で既にかなり怪しいですが、メルはキャラ作成時に選択する『弱み』に「すぐに空腹を訴えて、何かを食べたがる」というものを選択しているのもあり、周囲に警戒を行いつつも御馳走には特に疑いを持つことなく口にしてしまいます。とはいえ、その時点ではまだ特に新たな異変が起きることはありませんでした。

 そんな中、レニッサは同じく『深緑の弦亭』に来ていた老人がドラゴン・チェスの名人『定石破りのシェフィールド』であることに気付き、ドラゴン・チェスの勝負を挑みます。しかし、ここでレニッサはあっさりとシェフィールドに勝利し、その結果を訝しみます。シェフィールドはオーガが襲ってきた直後故、考えが纏まらなかったという旨を話し誤魔化しますが、もはやこの場にいる全ての冒険者から見て状況の違和感は明白でした。

 その時、DMはイルマがハーブ酒を振る舞うシーンの描写を行った後、これまでの食事や飲酒の条件を加味した『耐久力』関連の判定を冒険者達に要求しました。メルは状況を重く見、ハーブ酒こそ辞退したものの……結果は全員失敗でした。かくして冒険者達は全員、耐えがたい眠気のような感覚に襲われます。食事や酒に含まれていたのは神経毒の類で、睡眠を取らずに生きられるエルフにとっても耐えられるものではありませんでした。帰還したエドマンド、ジェドと思われる影が扉越しに姿を現し、彼らの中から人間の腕程の太さの『何か』が現れる光景を最後に、冒険者達は倒れ込みます。

 曖昧な意識の中で、冒険者達は自分達に毒を持った『何か』の会話を聞きます。その会話は彼らが人間の身体を乗っ取った怪物であることを示唆するもので、その中には次のような言葉が含まれていました。

エドマンドの姿をしたもの:「あの老いぼれめ。あのまま死んだふりをしておけば、死体をわけてやってもよかったのに」

 その言葉を聞いたメルの血の気が引きます。先ほどのオーガが身体を騙し取られたシェフィールド氏であった可能性に思い至ったのです。彼女は曖昧な意識の中で必死に思考を纏めようとしますが、冒険者達の意識はそこで暗転します。この場面はPLの視点でも「自分の判断ミスで彼女に取り返しのつかないことをさせてしまったのではないか」との懸念が頭をよぎり恐ろしかったです。

 しばらくして、ベッドに寝かされた冒険者たちが辛うじて意識を取り戻したところから物語は再開します。再び『耐久力』関連の判定が行われた結果、ボブ、メノジア、レイが毒を克服し行動を開始しました。ボブはドアを蹴破り廊下に落ちていた自らの斧を掴み、レイはボブの蹴破ったドアから出てシェフィールド氏の姿をした何かに拳を叩き込みます。拳を受け破壊されたシェフィールド氏の身体から、ミミズに似た怪物が這い出しました。

 その後、メルもメノジアに揺り起こされ目を覚まします。彼女の表情は蒼白でしたが、その闘志は消えていませんでした。ヴェロニカとレニッサも毒に抵抗するための判定に成功し、ベッドから起き上がります。メルは自らを奮い立たせるように気丈に振る舞いつつ、レイピアを抜いて怪物との戦いに加わりました。相手が怪物に動かされた死体のようなものと分かっていても人体を斬る感覚は彼女にとって堪えるものでしたが、それでも皆で力を合わせ、冒険者達は怪物達を制圧することに成功します。

 命乞いをするイルマの姿をしたものを前に、メルは一思いにトドメを刺すことを条件に洗いざらい話すことを要求します。そして、イルマだったものが逃げるタイミングを伺いつつ話した真相は以下のようなものでした。

・自分達は店の店主を乗っ取って店を丸ごと群れのものにした。
・店は彼らにとって絶好の狩場であった。
・あのオーガに入っていたのは前の群れの長。ボケてきたのでエドマンドに入っていた個体が『追い立て役』をやるよう仕向けた。

 PLとしては怪物達の発言や描写から真相が明かされる少し前に「あのオーガがシェフィールド氏というのはミスリードでは?」という話をしていたので想定通りではあったのですが、実際にミスリードであったことにはPLとしてもほっとしました。とはいえ、メルはこの話を聞いても幾らか落ち着きこそすれ喜ぶ気にはなれませんでした。事実として、宿の住人たちやシェフィールド氏は殺されているからです。

 その後、冒険者達は捨て鉢に反撃を仕掛けてきた怪物を全滅させました。戦いを終えた後、メルは肉体的にも精神的にも今まで生きてきて一番きつかったかもしれないと語り、ボブは夜が明けたら衛士に報告することを提案し、ヴェロニカは弔いの儀を行い、レイは怪物の悪辣さについて改めて語り、メノジアは今回の出来事について紙に書き記し、レニッサはシェフィールド氏が餌食になっていたことを惜しみました。

 その後、帰還した冒険者達の元には「懸賞金」という名目で宝箱が届けられました。怪物の犠牲になった者達の、遺族や同僚が手配したものです。その内容を決めるにあたって、DMは欲望の神アバソーの加護を受ける身であるレニッサに100面ダイスを4回振るよう促しました。その結果は……95、96、89、100でした。全てが貴重なマジックアイテムです。レニッサ氏は戦闘中、ダイス目に恵まれていませんでしたが、それら全てを取り返して余りあるこの結果にセッションメンバーは大いに沸き「アバソー最高!」と繰り返しました。

 この場で手にしたアイテムの中には一定量の荷物を重量を気にせず持ち運べる便利アイテム『ヒューワーズ・ハンディ・ハヴァサック』も含まれていました。持ち運べる重量が一般的な冒険者と比べて極端に低いメルにとってはとてもありがたいアイテムです。そこで自分は「他の報酬をゴールドを含め辞退する代わりにこのアイテムを貰いたい」と提案しました。この提案は皆に快諾され、メルは自らの弱点を補える頼もしいアイテムを手にすることとなります。

セッション中の一幕:深緑の弦亭での一夜/乾杯

レニッサ:「では改めて……此度の我々の速やかにして華麗、完璧にして完全な仕事ぶりと、それを台無しにしてくれた天の恵みに!乾杯!」

メル:「カンパーイ!」

メノジア:「乾杯」

レイ:「ん、ああ乾杯」口だけ

ヴェロニカ:「感謝を。乾杯」

ボブ:「……乾杯」ぐい、と一口煽り。

レニッサ:音頭を取れて満足げにエールを口にする。

DM:さて、そうして君達がエールを飲めば……先程まで、散々に寒い思いをしていたのもあるだろう。一気に熱が体に回り、疲労が押し流されるのを感じる。

メル:「ッカァ~~~ッ!」

メル:「いい酒だねぇ!」満面の笑み!

メノジア:「……ふぃー」満足げな吐息。尻尾がだらしなく床に垂れ下がる。メノジア本人は相変わらずの仏頂面だが、リラックスしているのは尻尾を見ればわかるだろう。

レニッサ:「葡萄酒もいいが……仕事終わりに体が求めるのはやはりこれだな」空の容器をテーブルに置き、微笑。

ヴェロニカ:「太陽の恵みが大地を育て、その恵みが我が身へと。ヴェロニカめは太陽と共に成れて幸いでございます」ヴェロニカは満足そうに飲み干す。彼女の中で、信仰厚きクレリックであることと大酒飲みであることは矛盾しない。

エドマンド:「そりゃあどうも。前に仕入れたものなんでね」

エドマンド:「やっぱりネヴァーウィンターの近場のがいいもんが作られるのかねぇ」

メル:「気分が乗ってきた、一曲いいかな?」フルートを取り出します。

メノジア:「どうぞ」メルに答える。尻尾が徐々に揺れ始め、床を擦る。

レニッサ:「ではお願いしようか」メルに答える

イルマ:「ええ。もうすぐ仕上がるから、それまでごゆっくり……」

ジェド:「いよっ!大詩人!フルート名人!」

メル:気分の高揚するような明るい曲を吹き始めます。

メノジア:仏頂面、両手でコップを持ちつつそれを聞く。尻尾が軽く床を叩き、拍子を取っている。

ヴェロニカ:「……」伏し目がちのままだが、どことなく愉快そうだ。

レニッサ:指でとんとんとテーブルを叩きつつ、尻尾をゆらゆら左右に揺らす。

メル:「いかがでしたでしょうかぁ~」一曲終えた後のメルの口調は完全に酔っ払いのそれであった。

ヴェロニカ:「良きことです。試練のあとはこうでなくては」ヴェロニカは太陽の恵みを受け、心地よい音に包まれたことでふわふわとしている。

レニッサ:「くくっ、いいぞいいぞ。そら、もう一曲!もう一曲!」囃し立てる。

※発言順の調整など微修正あり

セッション中の一幕:深緑の弦亭での一夜/戦闘

メル:ではメルはレニッサに近寄り、フルートで心を落ち着かせるような音色を響かせます。それに伴い傷が癒えていきますね。

メル:「ハァーッ……!」演奏を終える。

レニッサ:「……ああ、助かった。こんなとこで死にたくはないね、さすがに」眼前の敵を睨んだままメルに軽く礼を言う。

メル:「だね……!」

メル:「生きよう」

ヴェロニカ:「レニッサ様。回復の調べと共に、太陽が貴女を守ります」レニッサを守る聖なる炎! その余波が、少しだけイルマ……を名乗る怪物を焼いた!

レニッサ:「やれやれ、ありがたいことだ……!」ヴェロニカの炎に隠れて後退しつつ、牽制の閃光を放つ。

後書き

 かくして、メルは仲間と支え合いながら三度のセッションを無事に終えることができました。冒険はその後も続いており、彼女は記事執筆時点で既に四回目、五回目のセッションを経験しています。

 そしてメルと共に彼女の冒険を体験した自分も、D&Dの世界から非常に良い刺激を受けることができました。単純に気分転換としても良いものでしたし、D&Dの世界に触れて得た経験は、きっと今後の人生において大きなインスピレーションの源になってくれると思います。

 最後に。この記事を見てD&Dプレイヤーの方が嬉しい気持ちになってくれたり、D&Dをプレイしたことのない方がD&Dに少しでも興味を持ってくれたのであれば……それはとても嬉しいことです。もしよければその気持ちを『スキ』で伝えて頂けると、自分としても励みになります。

 この記事で自分がお話しすることは以上です。ご一読、ありがとうござました。もし機会があれば、またお会いしましょう。

おことわり

 当記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。

©Wizards of the Coast LLC.

参考:ウィザーズ・オブ・ザ・コーストのファンコンテンツ・ポリシー

記事作成に利用した画像生成AI:「TrinArt」

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