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アーモンドアイを産んだ男の書『覚悟の競馬論』をレビュー

読んだ本『覚悟の競馬論』 国枝栄 講談社現代新書

競馬書籍で調教師のものはたくさん読んだのだが、これは今年読んだ本の中でもトップに君臨する良書であった。値段も3分の1優駿図鑑で新書という読みやすい内容となっているので本当にオススメしたい。アーモンドアイを管理した調教師の国枝栄の新書。競馬ファンの誰もが買ってもわかりやすいし、アーモンドアイの秘密裏も知れる。ここでは感想文ということで内容が過度なネタバレにならない範囲でちょっぴり紹介したい。

アーモンドアイ


アーモンドアイは誰もが認める最強馬だ。しかしそんな最強馬にある繊細さというものをあまり知らない人が多い。アーモンドアイはレース後に水浴びをするのだが、これは熱中症を予防するためにやっている行為なのである。アーモンドアイはまじめにそしてひたむきに走る走りで絶対女王の座を欲しいものにした。しかし、その裏ではレースに『まじめすぎる』がうえに熱中症になりかけてしまうという絶対女王の裏側があったことは忘れてはならない。さらにはドバイで蹄鉄をつける時にイレこんでしまい、同じドバイで出たレイデオロの2倍以上の時間がかかったエピソードには絶対女王の裏側にある関係者の努力の内容が事細やかに示されていていた。
アーモンドアイだけでなく、今まで勝った馬のことも事細やかに書いており最初にG1を制したブラックホークだけでなくマツリダゴッホやマイネルキッツ、三冠牝馬アパパネなど思い出も語っていた。
その中でも印象に残ったのが海外遠征の難しさと、東西格差と除外馬問題についてである。海外遠征ではヨーロッパの遠征が難しく、お金がかかってしまうという難点もある。実際にディープボンドやクロノジェネシスも適性があったかもしれないのに勝てなかったのは欧州の芝への適応の難しさというものを感じさせた。ヨーロッパの遠征は遠征費用だけでも億単位のお金がかかり、順応させるだけでもかなりの手間をかけないといけないというのはなかなかに難しいものがあると書で語っていた。実際にアーモンドアイも凱旋門賞にチャレンジしたかったらしいが、アーモンドアイの体調面を考えて取りやめになったらしい。凱旋門賞に挑むのも一興としてありだが、そこにある壁というのは想像以上のものだと思った。
東西格差にも触れており、東と西で格差が出来た原因については『坂』の有無が馬を強くするか弱くするか決まってしまうというのはなかなかに興味深いものだった。他にも関東から行けるレース場が新潟や札幌、函館だと遠すぎるし、小倉に行くのはメリットがないという批評があったりして、なかなかに興味深いものだった。そして問題を解決するための国枝師の案もマトを得ていてJRAの職員の人たちはこの本を見て改善に動いてもらいたいと思う内容であった。
他にも現代の調教の進化や調教理論、美浦の馬がなぜ弱いのかというのもしっかりと理路整然と語っており、馬券の参考にもなってオススメだと思う。
実際、粗悪な競馬理論よりも調教師の現場の意見の方が参考になるのではと思うし、ビギナーの人も調教師という人がどういう仕事をするのかがわかると思うので幅広い競馬関連者にお勧め
競馬に関しての知識が深まる良書です。この本からネタも作れそうなので動画編集者のこやざる的にも嬉しい本でした。

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