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不道徳な経済学 #塚本本棚

キワモノ本と思いきや、ノーベル経済学賞受賞者も推薦し、橘氏をはじめとする様々な経済学者、哲学者が評価した一冊という事で手に取ってみた。世の中の不条理を乗り越える力になるか?


今日は「不道徳な経済学: 転売屋は社会に役立つ( https://amzn.to/3jnyucU )」ウォルター ブロック (著), 橘 玲 (翻訳) #塚本本棚

【紹介文】
転売屋、ヤクの売人、売春婦、満員の映画館で「火事だ!」と叫ぶ奴…「不道徳」な人々を憎悪し、「正義」の名の下に袋叩きにする現代社会。おかしくないか?彼らこそ、そうした偏見や法の抑圧に負けず私たちに利益をもたらしてくれる「ヒーロー」なのだから!自由という究極の権利を超絶ロジックで擁護、不愉快だけれど知らないと損する「市場経済のルール」を突きつけた全米ベストセラーを、人気作家・橘玲が超訳。

【書評】
リバタリアニズム、リベラリズム、共同体主義に功利主義。”人は立場でモノをいうし、話せばわかり合えるというものでもない。”というのがよくわかる本です。リバタリアニズムにすれば、完全なる自由競争にし、強者総取りで弱者は消え去るのが人類進化の根本となるし、同じ自由を主張するリベラリズムでも、”そうは言っても、多くの人が不幸になる自由なら平等を考慮して是正すべき”となる。なぜトランプが大統領になったのか、なぜ白人同士でもいがみ合うのかが理解できる本。

※白人同士での分断や、白人vs黒人の対立などは映画「ブラック・クランズマン( https://amzn.to/3b9cAHj )」がおもしろくておすすめです

本書はリバタリアンの理論によってリベラルの矛盾を指摘しています。それらの言質を俯瞰しながら、世の多様性と思考力を磨くには良い本だと思います。

【本を読んで考えた・メモ】
・橘氏の序文に究極のリバタリアンとして、ダーティハリーとピーターティールが登場する。究極の個人自由主義(真の人間的自由を追求する)だと

・リバタリアニズム:人は自由に生きるのが素晴らしい
・リベラリズム:人は自由に生きるのが素晴らしいが、平等も大事だ
・共同体主義:人は自由に生きるのが素晴らしいが、伝統も大事だ
・功利主義:より多くの人がより幸せになるための犠牲はOKだ
(例)ホームレスの臓器なら、より価値の高い人間の為に奪われてもいいと思うからやってみよう

・平和な社会は格差を生む。戦前は格差社会だった日本が「一億総中流になったのは」戦争によって数百万人が死に、社会が一度破壊されたからだ

・リバタリアニズムにとって徴税とは看過できるものではない。それは自由意志ではなく、強制によって成り立っているからだ

・本書の主張では、本書で紹介する不道徳な人たちは暴力を伴う行為を行っておらず、社会ニーズに自由意志で応えているだけだが、ある種のスケープゴートにされている、との事

・本書の主張では、売春婦が暴力によって自分の自由意思に反してその行為を行っているのでなければ、それは自由意志によるものだし、市場のニーズだから規制すべきではない。厳しく規制すべきは、暴力などによって不当に売春をさせる人々であって売春というサービスではない。むしろ、女性の労働に関する自由を不当に制限する差別である、との事

・この本は著者の強烈な問いかけを起点として、自分の頭で考える訓練をするには良い本

・リバタリアンはコミュニティからは受け入れられない(調和など不要だと考えるからだ)が、構わない。自らはそれでも生き残れると強固に感じている節がある

・ホリエモンなんかもリバタリアンかな?ひろゆき氏辺りはまだ調和を無視していないので、リベラル側なのかもしれない

・本書の主張では、覚せい剤を禁止するから覚せい剤の価格が高騰し、その高騰した金を中毒者が払えないから、彼らは悲劇的な犯罪を引き起こして善良な市民に害を及ぼしているとなる。それならと覚せい剤よりは安全な(海外ではハードドラッグとソフトドラッグというように境界が設けられている)大麻を”必要悪”として認める国があるのもわかる気がする

・タイトルを含め、何気に橘氏の超訳が面白い本でもある

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