アウトオブジスワールド

20枚くらいのカードがあり、お客様に表を見ないまま適当に2つに分けてもらうと
片方は全て赤であり、もう一方は全て黒のカードに分かれている

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普通、カードを当てるのはマジシャン側ですが
これは「観客が当てる」という、とても魅力的なマジックです
確率としては2分の1ですが、複数枚が全て完璧に当たっているというのは
不思議であると共に見映えも良いものです

「20世紀に生まれたトリックの中でも特に優れたもの」
と呼び声が高いのもうなづけます

また、このトリックは
種を知れば誰でもできるため
『誰でもできる簡単なトリック』
として有名なものです


しかし、簡単であるゆえ
このトリックは種を知っている一般の人も多いものです
そして、このトリックは種がわかってしまうと
見る側からしたらつまらなくなりがちなトリックでもあります

プロマジシャンでも種を知っている人にこのトリックをそのままやるのは抵抗があるでしょうw

これはロジカルなトリック全般でのジレンマでもあります


もちろん、様々な工夫をすることで
このトリックをさらに不思議にすることは可能です
しかし、マジックは謎解き遊びではありません

このトリックを【原理的な工夫を無し】に、魅力的に見せることは不可能でしょうか?
私はこのテーマに挑戦してみました

私は現在、このトリックをこのように演じています

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(トランプをよく混ぜてもらい、手渡してもらいます)

『マジシャンがカードを当てる』というのは当たり前のことです
そこで今回はお客様に当ててもらいましょう

もちろん52分の1を当てることは難しいことです
そんなことを簡単にやられてしまったら、マジシャンの立場がありませんw

そこで2分の1。つまり、赤か?黒か?これを当ててもらいたいのです
これなら、勘が良ければ当たりそうですですよね?

(マジシャンはトランプの半分くらいを取り上げ、その中から分かりやすい赤いカードと黒いカードを1枚ずつ抜き出します。スペードのKとハートのQとかで良いでしょう。これをリーダーカードと呼びます)

さて、ではやっていきましょう

(マジシャンはトランプから1枚を抜き出し、裏向きのままで示します)

このカード。赤いカードだと思いますか?
それとも黒いカードだと思いますか?

(観客は適当に答えます)

はい。今、赤と答えていただいたので、このカードをこの赤の場所に置きます
(マジシャンはそのカードを裏向きのまま、ハートのQの隣に置きます)
もし、黒と答えたなら黒のところに置くわけですね
これを何枚か繰り返していき、どの程度の割合で当たるかを見ていきましょう!

では、次のカード。これは赤ですか?それとも黒ですか?
(マジシャンは答えられた通りに置いていきます)

お!良い勘していますね!
まぁ、2分の1ですからね。
運が良ければ当たりますよ

では次!
おぉ!良いですね!
これも日頃の行いが良ければ当たりますw

さぁ次に行きましょう!
(このあと数枚繰り返します)

(マジシャンはここでちょっと不思議な顔をします)

えっと・・・。これ、見えていますか?
見えていないですよね?
なかなかの正解率で私もビックリしています

では次のカード。

え?マジですか?では次・・・すごいですね!本当に見えていないのですか?
(マジシャンは驚きながら繰り返していきます)

では、次。
え?黒?・・・惜しい!黒でないとしたら、何色だと思いますか?
そう。赤ですね。素晴らしい。正解です

次。(観客が赤と答えます)
え?すみません。聞こえませんでした。もう一度お願いします
(観客は再度赤と答えます)
え?なんですって?聞こえないですね。もう一度
(観客は赤と答えます)
おや?全然聞こえないなぁ。なんでだろう?もう一度言ってくださいます?
(観客は呆れたようにして黒と答えます)
そう黒ですよね。そうだと思いました。これは確かに黒です!

(この辺りからわざとらしく、誘導尋問していきます)

さて、次です。
ところで。全然話は違うのですが、私は買い物が好きでしてね
突然買い物をしたくなることがよくあるんです
あ。買い物がしたい!って感じでね
あ。買い物。
あ。かいもの。
あかいもの
さて、このカードは何色だと思います?
そう!あかいカードですよね!

ちなみに、マジックをしているとよく「大変だね」って言われます
「苦労することも多いんじゃないの?」ってね
そう苦労するものなんです
くろ、うするんですよ
さて、このカードの色は?
そう!くろです!よくわかりましたね!

(誘導はどんどんあからさまになっていきます)

イチゴとブドウ。私は今イチゴが食べたい気分ですね
赤いイチゴって美味しいですよね。赤々としていてね
綺麗ですものね
さて?このカードの色は?

カラスとハト。マジシャンはハトが好きだと思われがちなんですけど
私はカラスが好きなんです。黒って品がありますよね
猫も黒猫はかっこいいですね
あと、私は墨汁も好きです
さて?このカードの色は?

(このようにどんどん誘導していきます。ちなみに、もし観客が強情に反対のことを言ったら、マジシャンは渋々ながら言われた方に置きます。一応「本当にそっちで良いのですか?」と残念そうに聞いてくださいw)

そろそろカードがたまってきましたね
一旦区切りましょう

(全部で10枚くらいやったあとに、そういってマジシャンは裏向きのカードをまとめ、その上にリーダーカードを置いて、一旦脇に除けます)

(再びマジシャンは手札から分かりやすい赤と黒のリーダーカードを出します)

もう一度先程のようにやっていっても良いのですが
そろそろネタが尽きてきましたねw
もう面倒です
ここからは、適当で良いです
テンポよく行きましょう!

(そう言ってマジシャンは手札を裏向きにして一番上から裏向きのまま観客に差し出し、自由に赤黒言っていただき、その通りに置きます。この際、マジシャンすら表を見ていません)

(数枚ほどそのまま続けます)

あぁ。面倒です
こうしましょう

(マジシャンは赤のリーダーカードの隣に手札を裏向きのまま広げていきます)

こちらの中から「赤ではない」と思うカードを適当に抜き出して、黒の方に置いていってください

(観客にその通りにやってもらいます)

これで全部が終わりました
ちょっと確認してみますね

(マジシャンは多い方のパケットを取り上げ、表を見ます)

おぉ!意外といい線いっていますね!
惜しいです!
あと3枚。適当に選んで反対側に置いていってください
(このときにいう枚数は2つのパケットが大体均等になるような枚数を言います)

(観客にその通りにしてもらいます)

さあ!答え合わせをしましょう!
ではこちらの赤と、そちらの黒を確かめてください

(観客に2つのパケットを手渡し、表を見て確認してもらいます)

素晴らしい!全問正解じゃないですか!!
マジシャンの才能があるんじゃないですか?!

ではこちらも・・・

マジシャンは残った2つのパケットを重ねて全体を表にし
一直線に広げて見せます
パケットは綺麗に赤と黒に分かれています

お見事です!

もしかしたら、人生ってこういうものかもしれませんね
人生には様々な選択があるものです
でも、どちらを選んだとしても
必ずあなたにとって「正解」を選んでいる
そういうものなのかもしれませんよ♪

ーーーーー

使っているトリックは極めてオーソドックスな原理です
トリック的には特別な工夫はほとんどしていません

しかし、このようなやり方で演じると
トリックを知っている人であっても途中のやり取りで楽しめます
そして、途中のやり取りが楽しいものであるため
トリックを知っている人でも作品内に没頭しやすく
トリックを「知っているがゆえの退屈さ」が薄まります

最後に言っている通り、このマジックで示したいことは
「自分の選択は、間違いがない」
というメッセージです
「観客がカードを当てる不思議さ」
はそのテーマを示すための例に過ぎません
それゆえに、このマジックは
トリックを知っていようが、知らなかろうが
同様に、誰にとっても有意義なメッセージとなっているのです

私は
「トリックが知られていたらマジックの魅力がなくなる」
とは考えていません

どんなトリックであろうとも
観客がそのトリックを知っていようとも
マジシャンが示す【マジック】には
「ちゃんと意味がある」
そう思うのです

【マジックウォンド】

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