トライアンフ

表裏バラバラに混ぜたトランプが一瞬で揃い、セレクトカードだけが反対向きになっている

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レギュラーデック1つ、かつノーセットでできるトリックの中で強烈なインパクトを与えることができるトリックの代表例です

レギュラーデックでできるトリックは
アンビシャスカードとトライアンフだけで充分とも言われるほどですw

しかし、このトリックもアンビシャスカードと同様
とても軽率に扱われがちなトリックです
とりあえずやれば必ずウケると言っても過言では無いトリックなので
深く考えなくても成立してしまう魔力があります

しかし、これもよくよく考えてみたら
「リバースカードデモンストレーション」
です

これではマジックとしては未完成です
適切な演出をつけることにしましょう

このマジックで重要な段取りは
「なぜ、トランプを表裏で混ぜるのか?」
です

本来表裏で混ぜるというのはかなりショッキングな出来事です
そんなことをしてしまえばマジックどころかゲームすらできなくなってしまいます
ここをちゃんとショッキングな出来事として示すことで
現象の効果が増すのです

しかし、ほとんどの場合当たり前のように表裏で混ぜてしまっています
なんとも予定調和です


私はこのように演じています

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マジシャンといえども人間です
失敗することだってあります
例えば、よくあるのはトランプを混ぜるときですね

マジシャンというのはこうやってお客様とお話をしながら演じています
つまり、あまり手元を見ないで混ぜているのです
ここで話に夢中になってうっかりトランプを表裏で混ぜたりすることがたまにあるんですよ

もちろんそんなのはすぐに気づきますから
その際には
「すみません。間違えました」
と言って戻すのですが
昔、あるマジシャンが
「その表と裏を混ぜた状態ではマジックはできないの?」
と言われました

もちろんそんなことはできません

そこでそのマジシャンは
「すみません。できません」
と断ってしまいました

しかし、マジシャンにとって
「できません」
というのは嫌なんですよね
そもそもできないことをやるのがマジックですから

そこでそのマジシャンは
なんとか表裏を混ぜた状態でもマジックができないかを考えたのです
そしてある1つの方法を思い付きました
それではそれをご覧になっていただきましょう


まず、お客様に1枚のカードを引いて覚えていただきます
そしてそれをトランプに戻し、よく混ぜます
ここまでは普通のマジックです

そしてここでわざと表と裏を混ぜてしまいます
こんな風にグチャグチャです
これではとてもカードを当てることはできません

そこでマジシャンはお客様に1つだけヒントをもらうことにしました

それはこんなヒントです

「今からトランプを広げていきます
当然裏のカードも表のカードもあります
そこで今、表になっているカードの中に先程覚えたカードが「あるか?ないか?」だけ教えてください
これを聞けば選択肢を少し絞り混むことができます
ではよろしいですか?」

マジシャンはトランプを広げます

(トランプは1枚を除いて全てが裏を向いていて、表向きの1枚はお客様のカードです)

さあ、表向きの中に先程覚えたカードはありますかw

(お客様は「ある」とこたえます)

そうですか。
それでしたら、もしかしてこれですかね?

マジシャンは当たりのカードを抜き出します


このマジックは大変面白く、人気が出ました
今では世界中のマジシャンがこのマジックを演じています

このマジックを見ると思うのです

もしもあのときあのマジシャンが「できない」と諦めてしまっていたら
このマジックは生まれなかった
それどころか、もし、失敗をしていなければ
このマジックは生まれなかった

人生色々なトラブルや失敗があります
しかし、大切なことは
それにめげるのではなく
それを受け止め、工夫していくことではないかと
もしかしたらその先に
素晴らしいものが出来上がるかもしれない

このマジックのように。

ちなみに
このマジックの名前は『トライアンフ』と言います
その言葉の意味は
「困難を克服する」
という意味なんです

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『あるマジシャンのエピソードを語る』
という構図の中で、さらに劇中劇のような形になり
そして、その劇中劇の出演者に観客を取り込む
というこの演出は、とても面白いものです

ストーリー自体はダイ・バーノンの原案に近いものです
しかし原案では
観客がマジシャンにイタズラを仕掛けて、それをマジシャンが切り返して勝つ
というものでした

私はマジシャンと観客が敵対してしまうこの構図は使いどころが難しかったので
お客様のリクエストにマジシャンが応えるという形にしました

いずれにしても
表裏を混ぜる理由がしっかりと描かれていて
全体が1つのストーリーとして成立しています
単に表裏を勝手に混ぜて、また勝手に元に戻すというやり方よりも
印象に残る作品になっていると思います

もちろんこれは単なる一例です
私はこれの他にも
「ごちゃごちゃに混ぜられたトランプを用意し、そのトランプでアンビシャスカードをすると、カードが一番下から一番上に来るまでの間にすべて揃えてきてくれる」
という演出をしたり
「目隠しをしたままマジックをするが、途中でうっかり片方を反対にしてしまう。しかしマジシャンはその事に気づいていない。しかし、いつのまにかトランプは揃っていて、カードが当たる」
という演出をしたり
「以前小さな子供の家でマジックをしたとき、トランプが表裏ごちゃ混ぜに混ざっていたので、私は片付けることの大切さを教えるために全部揃えるマジックをして見せました。しかし、それを喜んだその子供は、それから、私に会うたびにトランプをバラバラに混ぜるようになってしまいました。やぶへびでしたねw」
という演出をしたりしています

マジックは魔法です
なぜその魔法を使うのか?
そのマジックにはどんなテーマがあるのか?
そのマジックを見せることで何を感じてもらいたいのか?
そんなことを考えながら演じることで
マジックはとても素晴らしいものになるのだと思います

【マジックウォンド】

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