2インハンド1インポケット

3つあるもののうち、2つを手に握り、1つをポケットに入れます
いつのまにか手の中に3つが揃っています

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扱うものはボールやスポンジ、サイコロなど様々なものででき
それぞれイメージが若干変わります

私は2枚のコインで行うことが多いですね
これは賛否があると思います

2枚を手、1枚をポケットにすることで
二者を区別しやすくできることは有意義です
これをそれぞれ1枚ずつにしてしまうと区別がつきにくいのです

しかし私はここでサウンド効果を導入しました
1枚ずつにした場合、コインは音がしないはずです
しかしなぜか握った方でカチャカチャと音がし始める
これにより
手を開く【前の段階で】移動を示せるのです
「鳴らないはずの音がなる。確かめてみると2枚になっている」
これが基本現象になります

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私はお酒を飲むような現場でマジックをすることが多くあります
酔っぱらっていると、ミスをしやすいですよね
そういう場合は工夫をします

例えば普段は2枚のコインを使うマジックも
酔っぱらっているときにはまず練習のために1枚減らすのです
(1枚をポケットに入れます)

こうすれば少し簡単になりますよね
(ここで手の中からチャリンと聞こえます)

「チャリン?」
(マジシャンは驚き、手の中を見ます)
(コインが2枚に増えています)

失礼。コインをしまったつもりだったんですけどね
今度はちゃんとしまいます
しまいましたよね?
(マジシャンは明らかにコインをしまいます)

これでオーケー。

(すると次の瞬間。また手の中かからチャリンと音がします)

「チャリン?」
(マジシャンは驚き、手の中を見ます)
(コインが2枚に増えています)

おかしいですね
もう酔っているのでしょうか?
コインを1枚だけ確かに手の中に入れます

(マジシャンは握った手を振ってみます)

大丈夫ですね
そしてもう1枚はポケットへ・・・

(今度はポケットの方でチャリンと音がします)

「チャリン?!」
(マジシャンは驚き、ポケットの中身を取り出します)
(コインが2枚に増えています)

本格的に酔っぱらっているようですね
どうしましょう?

よし。こうします
片方を握って片方をポケットに入れるから
かえってややっこしいのです
もう、2枚をまとめて使います

(マジシャンは2枚をまとめて手に握ります)
(当然チャリンと鳴ります)

「チャリン?・・・あ。良いのですよね。2枚を握ったから音がするのは当たり前です」

(マジシャンは手の中を確認します)
(ここでマジシャンは驚いた顔をします)

1枚。2枚・・・3枚・・・。
(コインが3枚に増えています)

どうやら本格的に目がおかしいようです
このマジックはまた今度にしましょう

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通常このトリックは手に握ったものがいくつであるか観客に聞き
いつも予想外の個数になっているという演出です

しかし、私は「観客に失敗をさせる」という演出がやりづらい場合もあるので
このような「不思議なことが起こりマジシャンが困惑する」という演出にしました
「チャリン」と音が聞こえてマジシャンが驚く様が繰り返されるのは
滑稽で面白いものです

ちなみにこの場合は
「酔っぱらっているから上手くいかない」
という演出でしたが
お酒がない現場ならば
「新作を覚えたので見てください」
といって
「まだ慣れないので、まずは枚数を減らします」
といい
なかなか予定通りにいかない
という見せ方もあります

また
「簡単なものをやることを一般に『目をつむってでもできる』と言いますよね?では実際に目をつむったままやってみましょう」
と言って始め
「さすがに目をつむったままでは2枚を扱うのは大変なので、1枚はポケットにしまいます」
といい
音で異変に気づき
やり直すけど上手くいかない
「やっぱり目をつむってはできませんでした」
と言って終わらせる場合もあります

いずれも
「やろうと思っていたことが失敗で終わる」
という演出になり
「次のトリックで挽回します」
という繋ぎになります


このトリックで重要なことは
「なぜ1つをポケットに入れるのか?」
という点です
ここに理由付けを全くしていない演者もよく見ますが
これは理由があった方が良いでしょう

全く理由をつけず、しかも「何個ありますか?」という見せ方をしてしまうと
マジシャンがトリックを使い観客を引っ掻けている
という見え方になってしまい
マジシャンと観客が敵対関係になってしまいます
手渡しているように見せて実は手渡していないテクニックを
見せびらかしている感じになりがちなのです

段取りには全て合理的な意味があり
それなのに最後に予想外なことが起きた方が
魔法の出来事として魅力的です
このトリックに限らず理由付け(エクスキューズ)は心がけてください


また、このトリックは
反復現象です
同じ現象が復数回起こります
こういった作品の場合は
「繰り返す意味」
が必要になります

同じことを繰り返すのなら繰り返す意味がありません
単にネタを探る以外に面白みがないのです
そこで1回ずつ「なぜ繰り返したのか?」の意味はつけましょう

この演出では「上手くいかないから繰り返している」
という分かりやすい理由があります

またそれぞれ意味合いを少しずつ変えています
①雑に1枚をポケットに入れる(しかし失敗する)
②今度ははっきり入れるところを見せる(しかし失敗する)
③さっきとは違う結果が起こる(やはり失敗する)
④予想外の結果が起こる(結局失敗する)
構成としては分かりやすい起承転結です

反復現象はだいたい
三段構成か四段構成が基本で
それ以上はダブルクライマックスか
一段落させて、あらためて別展開を見せる
などが分かりやすい構成になります

意味もなく繰り返すことは控えましょう


もう1つ
私の手順の欠点は
最後にエキストラの存在を見せてしまうことです
これにより
不思議さという意味ではダウンします
隠した1枚のせいでトリックを起こしていたことがわかってしまうからです

ですから、このクライマックスは
「不可能性を見せる演出」
ではふさわしくありません
あくまで今回は演者の滑稽さを見せる
コメディー演出だからこそできるクライマックスです

もしも不可能性の演出で見せたいのならば
例えば2枚を手に握ったのに
手を振っても音がしなくなり
開いてみるとコインが消えていて
いつのまにかポケットに2枚とも移動している
とかの方が良いかと思います

このマジックはあくまで
「次のトリックで挽回するため、都合上コインが3枚あった方が便利」
という
演者が側の都合により生まれたクライマックスなのです

【マジックウォンド】


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