アイドルに歌ってほしいアイドル感のある非アイドルソング

 アイドルが歌えばそれはアイドルソングなんですけれど、これはわりと難しい問題で。
 聞き手の趣味嗜好にもよるでしょうが、アイドル文化を好んでいる方は自分の好きなアイドルに例えばMISIA的な曲(イメージで結構です)を歌ってほしいかというとちょっと微妙なのではないかと思うんですよ。
 ただこれが歌唱力アピール系のアイドルだったり、好きなアイドルには難曲に挑戦してほしいドルヲタだったりしたらまた話は違うわけで。
 アイドルのパフォーマンスに何を求めているかであるとか、アイドルの歌う曲に何を求めているのかといった部分にも通じてきますし。
 あくまでも僕の受け取り方や感じ方、解釈ではありますが、アイドルの歌う曲というものは基本的にキャラクターソングだと考えています。
 そのアイドルの打ち出しているイメージ、売っていきたいイメージをパッケージ化したものがアイドルソング、とどのつまりキャラクターソングであり、そのままの意味でイメージソングだと思っています。
 このあたりは声優歌手文化やアニメソング文化に通じるところで、渋谷系アーティストの楽曲にも通じるところだと感じるんですが。
 僕はアニメや声優にもかなりどっぷりだった時期があり、僕自身の趣味嗜好の上でアイドル・アニメ・声優・渋谷系などに共通項があると感じたのは2000年代あたりから渋谷系アーティストがアニメの主題歌を担当したり、声優やアニメのキャラクターに楽曲提供し始める動きが顕著になり始めた頃からなのですが、まずアニメや声優と渋谷系は親和性がホントに高い。
 サブカル系アーティストとのタッグで90年代の声優業界を駆け抜けた宮村優子という圧倒的先駆者がここにはいたりするんですが、声質や表現力が抜きん出て素晴らしい方は渋谷系ソングに向いてる。
 曲に自分の色やイメージ、雰囲気をつけるのが上手い方と言い換えても良いでしょうか。
 で、アイドルってそういう職種であり商売ですから。
 渋谷系アーティストが女性アイドルに楽曲提供するようになりはじめたり、バンドのヴォーカリストがいきなりキャラチェンジして眼鏡っ娘な文学少女のコスプレしてチアガールを従えたスタイルでソロデビューしたTommy february6の出現などで「イメージをパッケージ化した音楽」という形式で製作された音楽と音楽活動に対する強い関心を抱くようになりました。

 
 さて。
 2次元でも3次元でもなんなら2.5次元でも構わないんですけれど。
 そして対象は自分でも自分以外でも全然良いんですけれど。
 勝手にイメージソングを設定したりして燃えたり萌えたり勇気づけられたり~みたいなことしませんか?
 オタク気質のある音楽好きはわりとやると思うんですが。
 あと、アイドルではない一般歌手(って言い方もどうなんでしょうか)の曲を聞いたときに、これ好きなアイドルに歌ってほしかったなーカヴァーしてほしいなーと思ってしまったり。
 なんなら、これこのアイドルじゃなくてこっちのアイドルが歌った方が良かったのに~もあると思います。
 好みの問題や解釈の問題で。
 ここから僕が「この曲、アイドル歌手に歌ってもらったら面白いんじゃないかなー」っていう曲を少々紹介していってみます。

「Snow」chiaki

 久々にこの曲を聞いて、この記事を書こうと思いました。
 千秋がソロデビューすることになり、ポケットビスケッツは解散。
 ソロデビュー後はロックシンガー的なかたちで活動していたのですが、正直売れていませんでしたし、どこがターゲットなのかが見えてきませんでした。
 バライティー番組内の企画として面白おかしくずっと活動していたポケットビスケッツと、番組から離れてロックシンガーとして活動する千秋。
 これだけでも上手くいくイメージが全然見えてきません。
 ただ、サードシングルから千秋は自身で作詞作曲を手掛けるようになり、シンガーソングライターとしてその音楽的素養を開花させていくんですが、ここからの千秋が実に素晴らしいんですよ。
 「Snow」は初作詞作曲シングルなのですが、そのワードセンスや激しさと切なさが混在するメロディーライン、初期衝動を感じさせる勢いなどキレキレです。
 この哀愁感や報われない思い感に満ち溢れたハイトーン曲をAぇ!でやってくれないかなーと思い始めたのがこの記事を書き始めたきっかけですね。
 小島(淡々と歌い始める)→リチャ(♪いつのまにか~)→佐野(♪情感たっぷりに♪同じにおいに~から希望~までを)→末澤(♪白い粉雪が~からを。期待通りうるさい)→正門(♪あなたが最後の恋ならいいのになので正門。キーがキツいけど頑張っていただきたい)
 女性視点の曲なんで、もちろんいわゆる女歌なんですが、この世界観とある種日本的で演歌にも似た恋心を雪と重ねた激しく切ない曲調は十分ヒットポテンシャルを感じるしイケると思うんですよね。
 

 「乙女」chiaki

 こちらも千秋が作詞作曲を手掛けたファーストアルバムのリード曲です。
 千秋といえば地声がかわいい寄りなんですけれど、歌うときは高音域のシャウトや太い声が目立ち、かわいい系の曲や歌唱はポケットビスケッツでちょこちょこやってはいたんですが、シンガーソングライターとしての自作曲でヴィスパー風味で愛らしく乙女心を歌う千秋が解禁されました。
 シンガーソングライターとしての千秋自身を考えると曲の出来の良さ、幅広い曲を作り歌いこなしながらも自身のパブリックイメージを上手に使ったり裏切ったりなセルフプロデュース能力、そして需要と供給のバランスについて思いを馳せずにはいられないのですが、この「乙女」という曲の愛らしさや出来の良さは歌い手が違えばまた変わってくる感は凄くあります。
 僕としてはこの曲、カントリー・ガールズ感があるんですけれど、どうでしょうかね。
 昔のことをアレコレと詮索してしまって勝手にヤキモチを焼いてしまう女の子の可愛らしさと自身でも自覚のあるめんどくささ。
 誰が見てもめんどくさい。
 でも、それが良いはハロプロ曲テイスト感がありますが、そういう面がありながらもこの清涼感はカンガルかな。

「LOVE☆ROCKET急接近!!」豊永利行·細谷佳正·木村良平


 PSPで発売されたCustom Driveという乙女ゲーの主題歌です。
 声優ソングですね。
 これこの3人の声質と歌唱力と歌い方の違いのバランスで既に成立してると思う。
 ちょっと安い雰囲気を声質とイラストでフォローしている感はあるので、もしカヴァーしてもらうなら同レベルの主張する声質を持つアイドルグループに歌ってもらうか、編曲をもっとキラキラさせたり厚みを持たせるかでしょうかね。
 中学生~高校生くらいのジュニアが大勢で歌ってるの見てみたい。
 そういうテイストに変えたら面白いんじゃないかなと。

「金魚の接吻」絶望少女達(真田アサミ·谷井あすか)


 アニメ「さよなら絶望先生」シリーズのキャラクターソングですね。
 この曲がシリーズで一番好きかもしれない。
 メインヴォーカルとサブヴォーカルの2人で歌っています。
 こういうテイストの曲での歌唱はホントに声優ならではだと思うんですよ。
 とにかく歌声が美しいし、世界観に引き込む力や歌詞を伝える表現力が素晴らしいんで。
 これをやって様になるアイドルグループいませんかね。
 カップリング曲、アルバム曲、ユニット曲みたいな扱いで。
 シングルでももちろん良いんですけれど、この曲は歌う人数少ない方が映えると思います。
 報われないであろう恋をしている男性に対して、報われない恋をしている女性の曲。
 「報われない思いは'私たち'も同じだよ」という歌詞になってるので、グループ向きですし、アイドルグループで歌うとまたニュアンスが違ってくるのがある種皮肉っぽくなりそうですが、アイドルとファンの両思いなのにそれぞれに片思いという意味を持たせた曲に出来れば面白そうですし、アイドルがファンに対してこの歌詞を歌ったらという点に興味があります。
 片思いの曲は古今東西色々ありますが、この曲の歌詞が描いている美しく着飾った女性の片思いと報われなさ、そして「私たちも同じだよ。嘆かないで」と寄り添いながらも涙してるこの感じ。
 刺さる方にはとことん刺さると思うんです、こういう歌詞や曲。

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