反芻


〈題名〉反芻   〈氏名〉小山 尚
石炭由来のシルクハットの縁にて、スズメが、全長二メートルの巨大ヤスデ一匹を、啜ったり、吐き出したりしながら、春雨のリズムで嘴を揺さぶっている
 と、
間隙、すなわち裏拍に、雑種犬が、シミ、ヤケ、キズの量を問わず、「カチッ」と音が鳴るまで差し込まれる
 ことによって、
木星の柄を模した、柔軟な地層が、整合性を保ちつつ形成される
 少し後、
犬は、溶解する……
 その際、
手鏡に傾いたウニ(烏丹ではないので注意されたし)が、高温多湿な布を纏い、存在と動作の境界線に沿って匍匐前進しながら、残留した骨を、周辺に散乱した体毛と共に回収し、これを唯一の塊とするため、滑らかな特異点を弄ぶのだろう
 一方、
模倣か、ヤスデの脚は、欺瞞の花束、もしくは冷えた桜花として、ステルスマーケティングの跳梁跋扈する地面へと、スズメの口から自由落下する
 そこから、
ワンテンポ遅れて、夥しい数のバンドワゴンが、過誤に身を歪ませながら、左斜め方向へと、ひっきりなしにスライドし続けることで、環境デザインから逸脱する
 そして、
メタンガスを含有するゲップと同じ要領で、
黝い膜を、複数枚つまみ、旱天と睦むだろう
 同じくして、
低い真空にて、チョウチンアンコウは、口から露呈した腸で、螺旋を描きながら哄笑する
 さらに、
ただ四つの胃が、真円に鋭角を見出すことで、心臓を仰向けにする
 かくて、
ウシ(烏朱ではないので……)は析出する
 したがって、
薬缶に矩形の鼻水がぶら下がるだろう
 暫時、
予め指定された天と地にて速度は一定となる
 ことによって、
撓んだイネからバリトンボイスが漏れる
 漸次、
撥水コーティングの施された麻の皮が、葦原のように簡便な足の裏で、粥状にほぐされていく
そこから開かれた混合毒が、表面積の大きい毛髪に生息するミノムシの背後に添えられることによって、ホタル状の火が罅割れるのだろう
 また、
墓石の内側に敷き詰められたミツバチの巣から、数多あるだろう、面積の一定な脱出孔の一部が選ばれ、そこから太陽を左九十度に見ながら八の字を描くことがある
それゆえ、イグサは球状に蒸された後、可逆的に咀嚼されるが、酸素不足とはならないだろう
 さらに、
煮沸によって、ゼンマイ仕掛けの雑巾から嗄声が取り除かれる
このような物質に、流言飛語を垂らすことで、油脂を浮かび上がらせ、これを、シダの葉同士を重複させたようなひだに挿入し、三春、もしくは三秋の方向へと泳がせるのだろう
 加えて、
ゲル状の架橋の丁度真上で、シャツを着ないまま排泄をおこなうことによって、アニサキスを走らせるのかもしれない
もしくは、合法的な、安全な労働による報酬を、凝集しては引きちぎることによって、弾力のある水牛を呼び出し、これをよく噛んでから飲み下すのだろう
 *
スズメが、偶数の蹄の間隔を、何も知らずに跳躍し続けている
この軌道は、右斜め四十五度から投擲された糞の放物線と相似であり、なおかつ環境に配慮された電気を帯びているのだろう


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