飛び魚(2023年現代詩手帖8月号投稿)

飛び魚 
小山 尚
 
巨大な*を内包した眼球に
塩水とU=-GMm/r(r=∞)の境界上を
35km/hで滑空する塵とイオンの尾(唐揚げにするとおいしい)
エルロンを作用させながら
薔薇を焦点とし
x²/a²+y²/b²=1,
y²=4ax(標準系),
x²/a²-y²/b²=1 の
軌道で回転し続ける独楽として天球儀に蹲る        
『おお 鉄色の 飛び魚の群と
それを追う 幾百本の 火の鞭
そして それによってかたちづくられる
華麗な樹 巨大な夜空の箒よ』[1]
火の鞭(髪の毛でつくられている)の夥しいエンベロープの胎動は
(x²+y²)²-2a²(x²-y²)=0 を
描きながら香ばしい藍色を主張して
⦅大気圏に突入する与謝野晶子「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ⦆(Misskey@Bacon_Haniwa氏 から引用)
(これが俗に言う、あご野焼である)
脂肪の煌めきはあらわさない
汚れた雪玉(*)はアルベドが2~4%のみであることを覚えておくべきだろう
ラダーを微動させながら
ヒレを広げて
アンチテイルを発生させる
『もう助からないゾ♡』[2]
『◆すくい漁
これはトビウオの走光性を利用した漁法です。夜間に灯火をともし、光目指していっせいに集まってきたトビウオを捕えます。』[3]
フンを溢れさせながら
スペクトル型…G2Vに顎を差し出してしまう
⁅桃色の薔薇⁆
『太陽の輪は十八歳の肉体の無垢の肛門であり、肛門が夜であるとはいえ、それに比べられるほどまぶしいものは太陽のほかにありえない。』[4]
夜になれば境界線を逸脱し
忙しく明滅を繰り返す散り散りとなった落ち葉を食むだろう
オールトの雲に浸され溶融され
1万au~10万au(約1.58光年)の間
球殻上に散乱する鱗の花吹雪が
エッジワース・カイパーベルト天体を形成し
細長い紡錘形の豪雨(出汁)を
島根県八束郡美保関町の民家に浴びせ
夏を告げる
『111:こちら横浜:2001/08/21(火)13:10 ID:V2iqkNlA
念のため、コロッケを16個買ってきました。
もう3個食べてしまいました。』
(【台風11号パブーク】上陸秒読み実況スレッド 14号 から引用)
つけ揚げに混入した不分枝軟条が
コリオリの力を導出しようと
天の南極を描けば
大暗斑が接近してくる
(そして真上にはメタンの氷の雲)
(おはようございます)
鳥肌を逆立てながら
キュビワノ族が空中浮遊している
     ⁅バルバドスの
  (国旗)が
        自由に
なびくさま⁆
飛び魚を穿つ三叉槍は
速度を増すにつれて摩耗していく……
[工具寿命方程式]
lnV=-nlnT+lnC
↔VTn=C  (Cは定数)
鋼の切り屑が閃き
線形に墜ちるロボット(この時、ロボット三原則が適応される)
『(前略)
ロボット3原則を守れよ
(中略)
なんやそれ
(中略)
非核三原則みたいなもんやで
(中略)
ほーん
非核三原則ってなんや
(中略)
ロボット三原則みたいなもんや
(中略)
サンガツ』(ヒトカス「タワー作ってや」人工知能「かしこまりましたやで!」 [無断転載禁止]© 2ch.net より引用)
共鳴や交叉に背いて
アニサキスやディディモゾイド吸虫が
突風に硬直している
それらを掃き捨てながら
銀色の巨大なヒレを光らせ
(長葱)を混在
    (血液)を混在
       (影)を挿入
(こんばんは)   させながら
水面を
優雅に
繰り返し叩く(たたき)
 
 
【参考文献】
[1]入沢康夫 『七つの川の都市で』
[2]『メーデー!航空機事故の真実と真相』5シーズン第2話「不運の先に待つ奇跡」(MIRACLE FLIGHT)
[3]魚の食べ方探求,トビウオの漁法について:浮き刺網/すくい漁/曳き網,https://seafood-reference.com/tobiuo/category211/entry2100.html
[4]ジョルジュ・バタイユ 『太陽肛門(抄)』 塚原史 訳


2023年現代詩手帖8月号落選


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