穴
薄暗い部屋にふてぶてしく佇む傾斜に空いた巨大な穴
捻くれた目線を渡せばただの真っ黒な平たい楕円
「穴は空いてますよ」といやらしく
純粋を投げかけてやれば虚無が初めて姿を見せる
瞬間わたしは中空の円柱となってそいつと呼吸を共有した
がらんどうはがらんどう同士がらん、どうと音を立てながら互いを引き合う
引き寄せる巨大な空虚はがらん、どう
がらんどうはがらんどう共々卑しくがらん、どう
虚に身体を預けるだけでわたしが虚であることを忘れられる
いっそのこと実体をも呑み込んで欲しい
そのときはそいつがブラックホールとなってがらん、どう
「夢は覚めましたか」
穴は空しく呟く
わたしは外にほっぽり出された拍子につまずきがらん、どう
見上げると光源
空っぽな眼に光線が差し込まれわたしを犯す
が ら ん 、 どう
ら ん 、
ど
う
ん 、
ど
う
、 ど う
ど
う
う
〈初出〉
ココア共和国 2022年2月号
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