にじいろカルテ

歩いているとTVドラマの「にじいろカルテ」の人たちのことが浮かんでくる。

それぞれに何かを抱え生きている。
それは、隠していることだったり、わざわざ話すようなことじゃないと思っていることだったりで、その人(と一部の人)しか知らないこと。
もう言おう、言うしかない、言わずにいられない、あなたには知っていて欲しい、流れだから話そうかと、今だという時がきて、それを告白する。
周りの人はそれを聞いて、受け入れる。
そんな姿をたくさん見せてくれるドラマだった。

究極の聞き役は安達祐実さんが演じた雪乃。
雪乃は認知症を患っていて何ヶ月かに一度すべてを忘れてしまう。
雪乃が忘れる度に、雪乃自身のことや村のこと人のことを話して聞かせる。
あなたはこんな人で、村はこんな所で、私はこんな人でこんな気持ちを抱えていて、それでも元気に生きていて、大丈夫だよ、雪乃も安心していいよ。ということを教える。
雪乃は全部忘れているから、とても不安なのだ。
いろいろ教えてもらった雪乃は、また、雪乃として暮らし始める。

暮らし始めるけど、忘れている。
この村で育ったことも、どんな風に夫を好きになったのかも(顔はタイプじゃないし)。
ある時、雪乃は村の伝統の結婚式の写真を見る。
その様子を見ていた真空は雪乃が結婚式をしたいのではと気づいて、住民に提案する。

結婚の儀式をする場所を代々守り継いできた人はすごく喜び、村の人も準備をすることで
ウキウキしてきた。
夫は小屋に結婚式までの間一人閉じ込められ、妻の雪乃が食べものを持ってお世話に行く。
御神体の石を世話係たちが次々と池に落とし、その度に別のただの石に取り替える。

結婚式当日、雪乃はすべてを忘れてしまい、結婚式の支度を怖がって泣き出す。
結婚式は取り止めになった。
取り止めになったけど、良かったのだった。
あの時間が生まれたから。

雪乃が忘れる度に、みんなは大丈夫だからねと語り出す。
ここはあなたがずっと暮らしてきた所で、わたしはあなたの友だちで、あの人は夫であなたのことを愛していて、でも、その前にあなたの事を話そうね、彼と出会う前のあなたの人生があるからと。
雪乃はアルバムを見ながら、教えてもらう。

雪乃は忘れてごめんねと言う。
みんなは謝らなくていいと言う。
忘れては教えられ、また忘れてを繰り返す。

喜びも悲しみも、忘れ、教えられ、もう一度経験して、繰り返す。

主題歌の藤井風さんの「旅路」は

あの日のことは 忘れてね
幼すぎて 知らなかった
恥ずかしくて 消えたいけど
もう大丈夫 旅路は続く

という歌詞で始まる。

私は雪乃みたいに全部を忘れてしまうわけではないけど、不安や心配を大きくして、大丈夫を忘れてしまうから、ちゃんと思い出そう。
楽しさや優しさや穏やかさや暖かさは、ちゃんとある。

入れ替わる御神体の石のエピソード、神様はどこにでも転がっているってことかなと思う。
前の石をうっかり落として、ちゃっかり次の石を見つけて、そんな事を繰り返してる自分のことみたいだった。

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