交通事故弁護士から考えるドライブレコーダーは必要なのか
最近はドライブレコーダーの普及が進み、ドライブレコーダーが付いている場合保険料が安くなるということもありますが、ドライブレコーダーは合ったほうがいいのか、交通事故を累計1500件以上解決してきた弁護士の視点からお伝えします。
結論
入っていたほうがいい
理由
交通事故でドライブレコーダーが必要になる場合は、過失割合が争いになった場合でしょう。
過失割合の判断は、以下のようになります。
(1)どのような事故だったか
(2)1の事故態様をもとに評価(どちらがどれくらい悪いかの判定)
プロ野球では、近年ビデオ判定のリクエストシステムが導入されましたが(サッカーではVAR判定)、リクエストの画像自体が(1)の部分にあたります。そして、(2)が審判で協議をして、アウトかセーフか判断する(評価)になります。
プロ野球でいうと、ドライブレコーダーがない事故というのは、動画なしでリクエストの判定をするようなものになります。画像がなにもない状況で、アウトかセーフか考えるのは、どれだけ難しいかわかるでしょう(動画があっても長い場合は5分間くらい審判が動画をみて判定をしたりしていますよね、動画があっても判定というのは難しいのです。)
ドライブレコーダーがあることのメリットは
ドライブレコーダーがない場合、裁判では双方の弁護士が、どのような事故態様だったのかを書面で主張することになります。
書面とは、ワード文書や写真が主になります。
具体的には、実際に事故現場を下見して、交通量や道路幅を確認したり、当事者や同乗者の、事故発生時の状況をレポートとしてまとめたりして、主張を行うことが多いです。
このようなワード文書や写真だけで、その事故を目撃したわけでもない裁判官が、どのような事故だったのか(どのタイミングで、どちらの車両が出て、どの時間に双方の車両がどの位置にいて、どの場所でどの部分に衝突したか)をすべて決めるのは、とても難しいことがわかると思います。
反対に、相手方も、同じようにワード文書や写真だけで事故態様を主張してくることが多いです。
つまり、相手方が嘘を言っていたとしても、相手方が言っていたことが客観的な物証と矛盾していない場合(全くでたらめを言っていても車両の傷の状況からしたら起こり得る場合)、裁判官は、もしかしたら、相手方の主張する『でたらめな事故態様』を信じてしまうという可能性があるのです。
私の経験でも、相手方が通常ではありえない進路をとって、衝突をした場合、ありえない進路をとっているから、こちらの非はほとんどなく、こちら側は怒っているのですが、「あり得ない」ことをしているがため、「そんなむちゃな運転をする人がいるわけないでしょう」と裁判官が思ってしまうことがあります。(裁判官は、車の免許を持っていない方も一定数おられますので、車を運転した経験がない裁判官が判定を行うこともあります。)
もちろん、車両の損傷状況や現場状況から、たまたま「こちらの言い分しか整合しない」のであれば、裁判官もこちらの主張を認めてくれるのですが、「両方の主張が成り立ちうる」場合、相手があり得ない進路や走行方向をとっているとしたら、それが故に逆にこちらの主張を信じてくれないということもあるのです。
逆にドライブレコーダーがあることのデメリットは
自分が悪い事故の場合、ドライブレコーダーがあると、それが証明されてしまうではないか?と考えることもあるかもしれません。
しかし、真実と異なる事故態様をいくら説明したとしても、相手方が納得しない以上、それが通ることはありません。
もし、裁判にまで発展した場合には、少なくとも半年~1年単位で時間がかかってきますので、解決まで長期に渡って事故のことを考え続けなければなりません。
こちらが悪い場合は、保険を使って賠償をすることが多いので、保険会社から賠償をしてもらうということでいいのではないかとおもいます。
まとめ
このように、ドライブレコーダーがあることで、
①自分が悪くない場合に、それを立証できる。自分が悪くないのに不利に判断されることから免れることができる。
②事故態様を双方でああでもない、こうでもないと主張することがなくなるため(車両の損傷や現場状況だけから事故の態様を確定することはとても難しいのです)、解決までの期間が短くなるというメリットがあります。
逆に自分が悪いけど、ドライブレコーダーがないから事実と異なる事故態様を主張して逃げ切れるというのはあまり期待できず、裁判を1~2年することをくぐり抜けなければ、相手が納得するはずもありませんので、これはメリットとは考え難いです。
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