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これが自由を失った国の競馬、反体制派の活動に参加した調教師の出走馬が強制出走取消

 ベネズエラ競馬で起こってはならないことが起こってしまった。我々は、自由な国で競馬ができることを幸せに思わなければならない。

 現在、ベネズエラはニコラス・マドゥーロという独裁色の極めて強い大統領によって統治されている。2013年3月5日の大統領就任から今年で12年目になる。マドゥーロは前任の独裁者ウーゴ・チャベスの右腕・後継者だったため、チャベスが大統領に就任した1999年2月2日から数えれば、ベネズエラでは25年以上もチャベスーマドゥーロの独裁状態が続いている。

 競馬は国や自治体が管理するものである。したがって、ベネズエラ競馬もニコラス・マドゥーロによって仕切られている。

 ベネズエラ競馬機構(INH)の会長を務めているのは、マドゥーロの側近アントニオ・アルバレスである(余談:この人は元メジャーリーガであり、2006年の WBC にベネズエラ代表として出場した)。そのため、競馬場も隅々まで独裁体制に組みこまれている。騎手や調教師といった競馬関係者は、マドゥーロの独裁体制を無条件に支持しなければならない。

 ベネズエラでは2024年7月28日に大統領選挙が行なわれる。マドゥーロ体制の崩壊を狙う反体制派は、女性のマリーア・コリーナ・マチャードを大統領候補者に擁立しようとした。国民から絶大な支持を得た彼女だったが、マドゥーロの影響下にある最高裁判所が、当然のことながら彼女の出馬を禁止した。

 2024年7月4日、マリーア・コリーナ・マチャードと、彼女に代わって大統領選の候補者となったエドムンド・ゴンサーレス・ウルティアの政治行進が行なわれた。このまま投票が行なわれれば、エドムンド・ゴンサーレスが大統領に当選する見込みである。しかし、たとえ全国民の80%がエドムンド・ゴンサーレスに投票したとしても、当選するのはニコラス・マドゥーロなのだが……。

 さて、この政治行進で問題が起こった。

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