スペインの女性騎手招待競走で藤田菜七子騎手が成し遂げた競馬外の2つの功績
9月24日、マドリードのサルスエラ競馬場で『第2回女性騎手招待競走』が行なわれました。
藤田菜七子騎手は11ポイントで12名中9位。騎乗馬については以前書きましたが、騎乗馬の質を考えれば、やれることはすべてやったと言えます。これ以上の結果を望むのは、デットーリだろうとムーアだろうと無理です。
さて、「藤田菜七子騎手がスペインに行って11位でした」という報道が出ていますが……
実は、結果以上にもっと大事なことがありました!!!
今回の藤田騎手の大会参加は、着順や結果といった競馬内のことではなく、競馬外において2つの重要な意味を持っていました。今回はそれについて紹介します。
ポイント① 競馬がスポーツと認められた
藤田騎手が参加したスペインの女性騎手招待競走は『ヨーロッパ・スポーツ週間(European Week of Sport)』のイベントに認定されていました。
『ヨーロッパ・スポーツ週間』とは、詳しくは☟の記事を見てほしいのですが、2015年から欧州連合(EU)が定めているイベントです。EU加盟国だけでなく、東欧やバルカン諸国も加えた40の国と地域で、様々な活動やイベントが開催されます。
競馬が『ヨーロッパ・スポーツ週間』のイベントとして認定されるのは、今回が史上初でした。これまで、フランスだろうとドイツだろうと、競馬は『ヨーロッパ・スポーツ週間』に加わっていなかったんです。
大げさに言えば、今年の女性騎手招待競走は、EUが正式に競馬をスポーツとして認めた歴史的な開催ということです。
そんな大会において、日本人の藤田菜七子騎手が、出場唯一のアジア人として・アジア代表として歴史の一部を担いました。
もちろん、大会で好成績をおさめて歴史に名を刻むというのが本人にとっても本望だったと思いますが、日本人競馬関係者の誰にも成し遂げられないことをやってのけたという点は、存分に誇っていいと思います。
ポイント② 日西関係のアピール
女性騎手招待競走がEU関連のイベントになったということで、当日はスペイン政府の要人もサルスエラ競馬場を訪れました。
その1人が、ピラール・リョップさんです。
リョップさんは現職のスペイン法務大臣です。2019年から2021年には、スペイン上院の議長を務めたこともある現政権の重要人物です(まぁ、今のスペイン政権はボロボロだけれども……笑)
☝はリョップ大臣がインスタグラム(と X )に載せた投稿です。この投稿の2枚目の写真で、藤田菜七子騎手がピラール・リョップ法務大臣と握手しています。
ここからは僕の妄想がゴリゴリに含まれますが……この写真は結構興味深いです。
リョップ大臣はもちろん出場者全員と握手しました。ということは、12名分の握手写真があるに違いありません。
また、広報として彼女について来た政府関係者が、他にも写真をたくさん撮ったことと思います。
にもかかわらず、インスタにあげられたのはわずか3枚のみ。そのうちの1枚が、日本人騎手と握手している写真です。しかも、ヘルメットの日の丸がはっきり分かる構図になっています。
現職の法務大臣、それも、マドリード・コンプルテンセ大学という名門大学で法学を修めた6ヶ国語話者という超インテリのリョップ大臣のことですから、SNSを戦略として使うはずです。SNSに載せる写真には、何らかのメッセージがこめられているに違いありません。
(もし投稿のメッセージ性を考えずにSNSを使っている政治家がいるのなら、それは控えめに言って無能……笑)
では、まるでリョップ大臣が日本国旗と握手しているように見えるこの写真から、いったいどのようなメッセージを読み取れるでしょうか?
それは「スペイン政府は日本を重要なパートナーとして見ていますよ」というアピールだと推測します。
また、日本から言葉の通じない国のイベントにわざわざ駆けつけてくれた藤田騎手に対する感謝の気持ちだと思います。
リョップ法務大臣、ひそかに日本びいきだと思うんですよね。2022年には在スペイン日本大使だった平松大使と会談してますし、女性騎手招待競走の数日前には、東京五輪・空手の金メダリストであるサンドラ・サンチェス選手のドキュメンタリー番組の公開イベントに出席して、中前大使にも会っています。
以上は僕の推測も推測ですが、藤田菜七子騎手は日西関係の友好アピールという点においても重要な役割を果たしたのではないでしょうか。
スペインの女性騎手招待競走は、来年も開催されることがほぼほぼ決まっています。
再び日本人騎手が招待されるのかは不明ですが、日本人が来てくれれば、スペイン競馬の注目度もグッと上がるし、スペイン自体の注目度も上がるし、熱狂的スペインラヴァーの僕としては良いことだらけなので、招待されてほしいです。
あと、平松さとしさんの記事が最高だったので、義務教育として読んでください。
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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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