【日記】新しい職場の木村さん 23/11/23

には、「自分を強く見せる」という美徳がある。どれだけ同学年に嫌われてようと、低学年にはオラついてなければ男が廃るということだ。
今の仕事を始めた初日。おれにとって初めての現場である。メンバーはおれと、社長と、木村さんの3人であった。
木村さんは同い年か少し上、下手したら少し年下くらいの年齢だったと思う。彼は厳しい人だった。
トラックを運転する安原に対して「もっと切れって!」と。二人がかりでカーペットを畳むときは「こっちを見てちゃんと動き合わせろや!!」と。ことあるごとにおれを強く叱った。
初めての現場仕事だったので「やはり厳しい人もいるな…。しかしこちとら半グレまがいの下で一年働いとんじゃ。こんなもんでへこたれるか!」とおれは懸命に先輩に喰らい付いた。

そして月日は流れ10ヶ月が経った。安原は社員としてまぁまぁの実績を積んだ。
木村さんの姿は初日以外一度も見ていない。そう、彼はただのスポットのバイトだったのだ。にも関わらず、おれにはそんなこと露ほども悟らせないイキりを見せてくれた。
怖いのは、それ以降誰に訊いても木村さんの存在を覚えていないことだ。彼は一体何だったのだろうか。今もどこかの現場にスポットで入ってはイキり散らしているのだろうか。


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