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佐川男子との思い出。

5年ほど前のお話です。
奈良の天理駅前広場にサインをつくるお仕事をしました。サインデザインは日本デザインセンターの色部研究所で、広場全体のデザインは当時もうすでに輝いていたnendo。で、そのサインに使うパイプのサイズを決めてもらわないといけない、という状況でした。

前日に北九州の本社から佐川急便で出荷しました。支店まで持っていって「明日の午前中着でいけます?」って聞くと、「奈良ですかー、ちょっと厳しいですよねー」と言いながら電話をかけて調べてくれて、「何もなければいけそうです」って言われたからお願いしたのでした。もちろん、間に合わないならヤマトのサイズにカットするか、それとも自分で陸送するかとまで考えていたのでした。

まあ現場での打ち合わせで、佐藤さんは1時から3時までしかいないこともわかっていたから確実なジャストタイム便かなあとも思ったのですが、ジャストタイムはおめめ飛び出るほど高いので、「何もなければ」にかけてみようと思いました。「午前」の確約は取れたわけですし。

で、当日、昼前に現場に着いてみると、まだ来てないと。「まあ、あるよなー」と思って問い合わせしてみた。
すると、「4時から6時のお届けになります」と。

ちょっと待て。

すぐにどこまできてるか調べろと。そこまで行ってもいいから、今の時代にドライバーと連絡つかないとかないんだからなんとかしろ!と。

しかしまあ、この「荷物問い合わせ」って利用する人はわかっていると思いますが、出荷した(今回は北九州)営業所への問い合わせになり、内容把握、現状までトレースすることはなかなか難しい。もちろん佐川もクロネコもネットのサービスあるけど営業所や中継基地まではカバーできない。まあもちろん全部の荷物をGPSなみにトレースするなんてそりゃあ無理ですしね。

しかし、中継基地を巡るせいで、出荷した先、問い合わせは正直みんな他人事な対応しかしません。わかりかねます調べます。しか言わない。まったくほんとやっぱりダメだなほんと…って、普段であれば佐川急便への文句を言っておしまいですが、この時はちょっと違いました。

あーもうっ!って思っている所になんとたまたま配達中の佐川男子が通りすぎた物ですから、すぐ追いかけてつかまえました「キミ2mくらいのパイプ二本持ってない?積んでない?」とききました。

実はもちろんその佐川男子が積んでないのは中継地を聞いた時点でわかっいたのですが、「出荷側」ではない「荷受け側」ならなんかわかるかと、もちろんその佐川男子にはなんの非もないのだけど、焦っている自分のやりどころの無さを意地悪にぶつけたい気持ちもあったと思います。

佐川男子はすぐ営業所に連絡をとってくれました。でも、お問い合わせオペレーターと同じ、「4時からの配達になるみたいなんですよぅ」と、気まずそうに言いました。「いやちょっと待って、午前着というから頼んだのよ、それを決める人は3時までしかいないんだから、4時に着いてもそれは役にたたないゴミだよ」「僕は恥をかきに4時間かけてここまできたことになるんだけど」「まあ、キミらが約束守ると信じた僕が悪いんだよね」とまあ、クレーマー。そりゃあ新幹線に往復4万かけて恥をかくんだからそのくらい許せと思いました。

佐川男子は再度営業所に電話をしていました。配達の手をとめて、だんだん申し訳なくなってきました。でもあと15分で僕は恥をかく。ちょっとやるせない気持ちになりながら、もう現場に戻るよと声をかけると、佐川男子はいいました。「出来ることはやってみますんで、伝票には連絡先書いてありますか?」「いや現場事務所の電話しか書いてないよ、僕のを教えとくね」と。まあ、どうもならんだろうと思いながら僕のケイタイを教えました。

それから後、かかってきた二本の電話は期待を裏切らず「出荷側」からのそっけないオペレーターと、なぜ配達が遅れているかの釈明。「いやそれはいいし、後ほどって言われてもいくら後かわからんなら意味がないからやめてよ」と言って切りました。

でも三本目。「先ほど対応させていただいたものですが」と。「10トンと4トンのトラックが営業所に入ってて、4トンの方に載ってるのが判明しましたので!」「降ろし次第ウチの軽に載せて運ばせますので、載ったらまた連絡いたします!」正直驚きました。まさかそんな対応が出来るとは。「ちょっとそっちの方面慣れてないドライバーが行くんで少しお時間いただくかもしれませんが」「いやいや、ありがとう、表で待ってるからね」と、思わず僕も声がはずみました。

現場の仮囲いの外で待ちました。内側では他の材料の検修が行われている時に、佐川急便の軽バンがやってきました。

「すいませーん遅くなりましてー」と言って降りてきたのは絶対ドライバーじゃないお姉さん。きっと普段は営業所の窓口業務をしている人。そういえば佐川男子は僕が悪態をついている時に言っていました「今ちょうど車も人も出払っちゃってて荷物とれても運ぶ人がですねぇ…」と。その状況の中でなんとか頼んでさ、こうやってギリギリの段取りをしたんだと思うと、すごく驚いて、ちょっと感動してしまった。

ギリギリなんとか佐藤さんに見せることが出来て、その場で不明事項はあっさり決まった。今日決まんなかったら、また数週間モヤモヤしてたかもしれないと思うとぞっとしながら佐藤さんの話を聞いていました。

まあ、マニュアル通りの仕事をした人間を非難するのはかわいそうだけど、このマニュアルを一歩越えた佐川男子の対応はとても人間らしくて嬉しかった。

帰りの新幹線に乗ってから、彼のケイタイにコールバックしました。「他はいいけど君にはお礼を言わないとと思って」彼は言いました「いえいえ、本日は本当にご迷惑をおかけしましたが、なにとぞこれにこりず、今後とも佐川急便をよろしくお願いいたします」

若いのに、出来た子やなあ。

ともかくこんな弟子が欲しいと思ったのでした。惜しむらくは彼の電話対応が「ハイ!佐川急便の*&ー#$です!」と、全然聞き取れなかったという。

そんなこんなで完成したサインがこちらになります。

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奈良・天理にお越しの際は。


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