レディプレイヤー1に感銘を受けた人たちに原作を読んでほしいという話

 有給を取り、レディプレイヤーワンを公開初日の初回に鑑賞してきました。
 全体的に満足だったんですが、正直ところ原作と比べ薄味と駆け足だったな…という印象。とはいえTwitterのタイムラインだと随分と好評なので、鑑賞した人たち向けて原作を読もうぜ!少なくとも損はさせないぞ!という気持ちで原作「ゲーム・ウォーズ」の良さを映画と比較しつつ綴っていきます(映画が封切り後の小説版の表紙、テッド・チャンの「あなたの人生の物語」よろしく映画ポスターに合わせてクソダサになってますが…)。
 ※長い上にネタバレ気味なので未見の方は注意して下さい

4クールTVアニメの劇場版再編集のデジャヴ

 原作が好きな自分にとってはまさにこんな感じでした。なにせ原作は上下巻でオアシスの世界観の説明や物語のキーアイテムである鍵の謎解きパートも長いので、ファーストガンダム三部作のようにしてくれたら…!とは思ったんですが、これはしょうがないかなという感じです。
 あとはやっぱり全体的にハッピーですね。原作はもっとダークで、宿敵であるIOIは大企業の強みを活かして有能なガンターは監視、場合によりリアルで殺害していきます。劇場版だとウェイドの養母と養父のみに抑えられ、いくつかの登場キャラクターも再編集のために設定の変更がされていました。

オフ会、追体験

 ところでネットゲーム、やってますか?僕は世代的にラグナロクオンラインやリネージュ2など、ネットゲームが本格的に広まり始めた時期にガッツリハマってガッツリ時間を奪われてたんですが、醍醐味の一つとしてオフ会がありました(ゲームでなくてもネット上の交流でも盛んですね)。
 ネットで仲良くしてた人と実際に会って遊んだりする。その件に関しては悲喜交交あったと思いますが、最初のくすぐったいやり取りから、次第に「ああ、間違いない。こいつはゲームの中で遊んでるあいつだ」というあの不思議な感情を抱いた方も多いんじゃないでしょうか。
 原作では不安と期待が混じってて、恥ずかしさと嬉しさが同時に来て、そういうのがじんわり胸に染みていくようなあの感覚を味わえたんですが、映画だと随分忙しい感じで描写されてて「ああー!思い入れのあるシーンがなんてあっさりに!!」と臍を噛みました。
 ちなみに映画のポスターでネタバレされてるのを見て「バーナード嬢曰く。」の神林しおりの気持ちが痛いほど判ったぞ。

主人公、ウェイドとパーシヴァルの持つ強さ

 ウェイドはハンドルネーム:パーシヴァルとしてオアシス内の学校に通っています。そして自身の環境と同じく金がなく、よってレベルも低く、持っているものといえばオアシス開発者であるジェームズ・ハリデーに関する知識とガンターとしての情熱だけ。
 ステージを移動するにも金がいるけれど、そんなモノはない。親友であるエイチに借りるのはプライドが許さない。というわけでパーシヴァルは知恵を巡らせて、いじけたオタクの矜持を胸に悶々と(ジョックにバカにされながらも!)鍵の在り処を探し始めます。ここから物語が始まるわけです。
 持っているのは知識と情熱だけ。ここだけで親近感を覚えたなら原著を手に取るべきではないでしょうか!「ああ、こういうやつよく見たわ〜w」と思った人は序盤に延々と続くオタク知識バトルに飽きること間違い無しです。

映画の持つイメージの強み

 ラストバトルは素晴らしい出来栄えでした。公開前のトレーラーでも注目されていましたが、ガンダムが、お台場ファーストガンダムがあのスピルバーグの手の下で動くわけですよ!それだけでも感動なのに大刀(ダイトウ)の「オレはガンダムで行く!」の台詞とともにHMDに映る旧ガンダムのロゴ、そしてZZから始まり∀ガンダムでも模されたあのポーズ!スクリーンに向かって涙を零しながら手を握りしめた少年少女(あの一連のシーンを見ている時は誰しも少年少女になってしまうのだ!)はきっと数しれないはずだ!そして耳馴染みのあるあの曲!映画館でTwitterが触れたなら、鬼のように実況してしまい大顰蹙を買う自信がありました。

 そしてこれからが一番重要だと思うんですが、原作だとあの一連のバトルではみなそれぞれ巨大ロボに搭乗します。そこでパーシヴァルはあまり人気のないロボをチョイスしますが、そこでそのロボへの情熱を語るシーンがあります。

「(中略)このロボを知って以来、とりこになった。色んなロボがある中で、どれが一番強そうなんてどうでもよくなった。絶対にこのロボがいい。一番強くなくたってかまわない」

 これ!これがない!!これこそがオタクの真髄であり情熱の熱源のはずなのに!どうして削ってしまったんだ!世界の謎を削ったガンパレード・マーチのアニメのようだ!
 ただ原作者が脚本に噛んでいる以上、これもゲーム・ウォーズの一部なのだ…そう思うしかない。尺。知名度。権利問題。色んな事情が交錯して差し込まないという判断をしたのだ。そう考えて自分を納得させるしかなかった!ビバップ号も、勇者ライディーンも、ミネルバXも出てこなかったのも仕方がなかったんだ!
 この気持ち、判って頂けるでしょうか。

まとめ

 想像していたキャラクターを実際目にできるのはとても楽しい経験です。意外とデカイな!とか、髪がツンツンだ!とか、こいつはイメージ通りだ!とか。また映画用に再編集されて見たかったシーンがオミットされるのも理解できます。
 しかしながらイースターエッグ探しの過程で語られるオタク的な情景やジェームズ・ハリデー(或いは作者)の原風景、そしてその時代に生まれなくても未来のガジェットによりそれらに触れ、体験し、継いで行く主人公たちに共感し、オタクがオタクたる所以の情熱が濃縮されている熱い血を感じられるのは原作だと思うのです。BDのオーディオコメンタリーでそこら辺が語られるといいな〜と思っているのでリリースされたら購入必須ですね。

 つらつらと書いてきましたが、映画を鑑賞して奮い立ったガンターたち。原作を読んでもっと濃いオアシスを体験してみないか!

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