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読書の記録 武田百合子 画・野中ユリ『ことばの食卓』

 武田泰淳さんの妻、武田百合子さんによる食べ物に関するエッセイ集。1981年から83年にかけて連載された12篇と、ほか2篇を加え、1984年末に出版されたものです。

 私が生まれたのが1980年なので、書かれたのは私がまだ幼稚園にも行っていない頃ですが、そうとは知らずに読んでいると、戦後まもない頃に書かれたのではないかと思っていました。武田百合子さんの文体がそうさせるのか、時代が遠くなったからなのか、書いてあることが、どうも浮世離れしているというか何というか、夢の中の出来事を書いているのかと思うことも多々ありましたが、そうやって思いながら読んでいると最後に収録されていたのが、本当に武田百合子さんが見た夢の話だったりして、最後まで、不思議な気分のまま、読み終えました。

 どのエッセイも面白いというか、なんというか、独特の味わいがありますが、私が好きだったのは『夏の終わり』という一篇で、せっかく母娘で食べに行ったオムレツが美味しくなくて、娘が言いにくそうに「何だか、口の中がげろの味と匂い」と感想を言ったところが、よかったです。

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