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読書の記録 舌津智之『どうにもとまらない歌謡曲』

 僕が子供の頃はまだ割とゴールデンタイムに歌番組をやっていて、たぶん最初にハマったのが斉藤由貴の「夢の中へ」。左右に身体を揺らせながらうふっふーと歌う斉藤由貴の曲が実は井上陽水作曲で自身も歌っていると聞いたとき、あのホテルはリバーサイドの人がうふっふーって歌うのは信じられないと思ったものです。あれから幾年、サングラスのおじさんがうふっふーと歌うことに違和感を覚えなくなったのは僕が変わったからなのか、それとも時代が変わったのか。

 時代によって歌詞のなかの空気も変わるものでして。正直なところ、今「まるで別人のプロポーション」とか「綺麗な指してたんだね知らなかったよ」とか「深刻ぶった女はキレイじゃないから」とかって「無し」ですよね。今思えば、当時から歌詞の世界に怒っていた人はいたように思う。

 さて。『どうにもとまらない歌謡曲 七◯年代のジェンダー』です。歌詞って時代を映すし、時代の価値観を作ることだってあるんでしょうね。自分の意志と関係ないところで聞こえてきちゃうものですからね。70年代っていう、ウーマンリブが立ち上がった頃の歌詞は、男女観について新旧の価値観の交錯する時代であっただけに、その変遷が実に面白いわけです。一つひとつの歌詞の考察については、なかなか無理やりやな〜とか、こじつけやな〜とか、ミスリードと違います?とか、思うところはあったんですが、歌謡曲の歌詞でもってジェンダーを論じていくやり方は面白いな〜と思いました。いろいろな考察になるほどと手を打ちつつ、歌詞というのは、時代の制約をどうあっても受けてしまうものなのであるな〜というところが大変興味深かった。まぁ、そうじゃないと売れないでしょうしね。面白い一冊でした。

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