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読書の記録 上田紀行『覚醒のネットワーク』

 毎週水曜日、日経新聞夕刊一面のコラムを執筆されている文化人類学者の上田紀行さん。上田さんの言葉が毎週面白くて、水曜日の夕方が楽しみだったりします。新聞って、こうやって、まったく知らなかった人の存在を教えてくれるから、本当にありがたい。

 少し前に職場の近くのくまざわ書店に行ってみたら、そんな上田紀行さんの著書を見つけて、ちょっとした運命じみたものを感じて迷わず購入したのがコチラ。『覚醒のネットワーク』。我々は知らずうちに他者との差異によって「私」を形作っていますが、そうやって他者との比較で「私」を作ってしまうと、なんでも人のせいにしてしまいがちになります。「殻をかぶった自我」です。他との違いがアイデンティティになってしまうと、他はすべて敵になってしまいます。そのアイデンティティを持つ限り、我々は潜在的に敵を必要としてしまいます。むむむ!これは現代社会の病気のようなものではないか!と唸ってしまうんですが、なんと、これが書かれたのは1989年、今から30年以上前なのです。書かれた頃には存在しなかったインターネットやSNSでも、この「殻をかぶった自我」が暴走していますね。自分自身、割と硬めの殻をかぶってるような気がするし、読みながらグサリグサリとえぐられました。現代を生きる大人必読。いや、若い人にも読んでほしい。というわけで、私はこれを息子に読ませるつもりです。

 思えば上田紀行さんの文章に新聞で出合ってなければ、この本を買って読むことはなかったわけなので、本当に新聞はありがたい存在なのです。それにしても、1989年に既に危惧されていたことが、まだ2022年に問題視されていることが悲しい。

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