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バイデンの演説翻訳比較その3

バイデン大統領就任演説について、新聞各紙がどう翻訳したか?を調べています。今回取り上げるのはコチラ。

We have learned again that democracy is precious.Democracy is fragile.And at this hour,my friends,democracy has prevailed.

まず気になったのは「precious」。
democracyはpreciousであることを
「京都新聞」は「尊い」
「読売新聞」は「かけがえのないもの」
「朝日新聞」は「大切である」
「産経新聞」は「貴重だ」
「日経新聞」は「貴重さ」と訳しています。

産経と日経は周辺の訳との兼ね合いで
品詞が変わっておりますが、
どちらも「貴重な」で同じ。
他はすべて異なる訳し方をしています。

googleで「precious」を検索してみると、
確かに「貴重な、高価な、大切な、むだにできない、尊い」という意味が出てきます。「読売新聞」の「かけがえのないもの」という訳はありませんが、「例文」として、

●プレシャスワン
(かけがいのないという意味)
●プレシャスメモリーズ
(かけがいのない思い出という意味)
●プレシャスラブ(かけがいのない愛)
この3つが挙げられていました。
すべて「かけがいのない」と訳されています。

しかし、よく見てください。すべて「かけがえのない」ではなく「かけがいのない」になっています。これは原文をコピペしているので私が間違えたのではありません。これでは
「代金を後日支払う約束で品物を買うことのない」→「掛け買いのない」になってしまい、まったく意味が変わってしまいます。

こういう書き間違いがあると、途端にこのサイトが信用できなくなりますので、別のサイトに移ることにします。

というわけで別のサイトに飛んでみたところ、プレシャス(英・precious)とは「貴重な、大切な、高価な」という意味の言葉となっています。と書かれてあります。

こうなると「かけがえのない」「尊い」という訳は、やや「いきすぎ」な気がしますが、別のサイトでpreciousとvaluableの違いが書かれていました。どちらも「大切な」「貴重な」と訳されますが、valuableは「物質的」でpreciousは「精神的」。概ねそういう感じなんだそうです。(「概ね」ね。ここ大切、たぶん。※実際「貴金属」はprecious metalっていうらしい)

精神的に大切なことを表現するというならば、程度の問題こそあれ、どの訳でも問題はなさそうです。むしろ、訳者がバイデンの中にどれほどdemocracyへのpreciousを感じたかが訳に表れたということでしょう。そう考えると「京都新聞」「読売新聞」はバイデンにずいぶん期待しているのではないか?という気がします。

もう一点、英語をろくに知らない身としては最後のdemocracy has prevailed.も気になるポイントです。democracyが何をしたんかいな?と思って訳をみてみたら全紙「勝利した(を収めた)」となっており、prevailが「勝つ」という意味であることは間違いありません。

私なんかは「勝つ」は「win」やろがい!と思うわけなのですが、しかし日本語にも「勝つ」「克つ」があるし、「とる」なんて「撮る」「取る」「録る」「採る」「摂る」「獲る」いくらでもあります。「win」ではなく「prevail」を使っているのには何か理由があるのでしょう。

調べてみると「prevail」には「影響を与えられる」「誰かに何かをさせる」「広い範囲で広まっている」というニュアンスがあるそうです。「pre」は「前に」という意味があります。※プレオープン、プレビューなんかのpreがそうですね。preciousのpreは違うみたい。

いっぽう「vail」は「強い」「価値がある」という意味があります。※こちらは先程「precious」と対比させた「valuable」の「valu」に通じるものがありますね。

「prevail」は「前に強い」→ 「強さで他の者より前にくる」→「普及している、広くいきわたっている」というイメージなんだそうです。democracyが普及しているのは「勝利」したからなわけですね。パンデミックに「打ち勝つ」というときにも「prevail」を使うとよいみたいです。

とはいえ、やや硬い言葉のようでして、普段使うなら「win」でもよさそうな感じです。
大統領就任演説ですからね。あんまり普段着の言葉を使わないところでも前大統領との差を見せているのかもしれないですね。

長くなりそうだからまとめるよ。「知らんけど」。


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