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「歌がうまい」について考える

私が歌の練習を始めてから、もうすぐ5年になります。始めたばかりの頃は理解が浅かったのですが、だいぶ分かることも増えてきました。

現段階での「歌がうまいとは何か」について書きます。

歌の練習の先にあるもの

歌を上手に歌えるようになるために、歌の練習をします。歌に限らず、練習をするということは上手になるためにします。

それでは歌が上手というのはどういうことなのか。

私は歌を始めてからすぐに、この問題にぶつかりました。何を目指して練習すれば目標に近づけるのか。ゴールがわからないことには近づくのさえ難しい。

高い声が出せるのがうまい?音程があってるのがうまい?ビブラートみたいなテクニックが使えるのがうまい?初心者にありがちな思考です。

上手と思える人と、そうでない人の違いはいったい何なのか。いろいろ要素を考えることができますが、私は5年かけて大きく2種類に分けることができるという考えに至りました。

歌が下手に聞こえる要因

ますこれ。上手に聞こえる要素と下手に聞こえる要素があるということに気が付きました。

ひとつめが音程。音程が正しい=上手だと思う人が多いと思うのですが、私はやがてそうは思わないようになりました。

音程というのはあくまで減点要素。外れると下手に聞こえて、合ってると下手には聞こえないというだけ。

もうひとつがリズム。これも合ってると下手には聞こえず、ずれてると下手に聞こえます。

音程もリズムも「ずらす」というテクニックもあるのですが、それはもう少し進んだ段階の話です。

音程とリズムを単純に合わせたボーカロイドは、うまくも下手にも聞こえません。そもそも現代のレコーディング環境は、音程とリズムは機械で合わせるのが普通です。なのでどんな歌手のCDも、下手には聞こえない(けどうまくもない)ということになるのです。

歌がうまく聞こえる要素

それではうまく聞こえる要素に入ります。まず一番大きな要素だと思うのが発声です。声の出し方です。発声がいいと上手に聞こえて、悪いと下手に聞こえます。(音程・リズムは正しいとするなら。)

第一声から「この人上手い!」って感じることがあると思うのですが、長いこと私はそれが何のせいなのかわかりませんでした。最近やっと、発声がほとんどを占めていると思うようになりました。

第一声から細かいテクニックとかを拾って、うまいなぁと感じるわけではありませんので、これはもう、発声の良し悪しということになります。

グルーヴについて

グルーヴというのはノリのことです。一歩進んだリズム感と言えるでしょう。これがあるかないかで歌が上手に聞こえるかどうか変わります。

リズムは減点要素と最初に書きましたが、それは単純なメトロノームのジャストの話です。細かいリズムのタイミングを崩しても、大きな流れでのリズムは取る。グルーヴを出すにはそういうことが必要です。

あとは細かなアクセントによる強弱。

ラップなんかがわかりやすいのですが、ただリズム通りに歌っても全然かっこよくありません。強弱を意識できるようになると、ノリが良くなります。

歌はpassion(パッション)

私には最初に歌を教えてくれた師匠がいます。今の先生とは違う人です。

師匠は「音程なんか後からついてくる。音程を合わせにいくだけのような歌の練習はしなくていい」と言いました。初心者にありがちな、音程があってる=うまいという概念を覆してくれる言葉でした。

その人は、「歌はpassionである」と教えてくれました。パッションというのは訳すと情熱ですね。歌い手の感情を表現するのが歌ですよ、と教えてくれました。

歌にもテクニック(技術)はいろいろあるのですが、それは何をするために使うのか、という話になります。

持ってる技術をひけらかすために、テクニックは存在するのではありません。高い声を自慢するために、高い声を出すのではありません。相手を驚かすために大きな声を出すわけではありません。

すべては歌を通して表現する、自分の中のパッションを具現化するためにあるのがテクニックなのです。

テクニックの幅が広いということは、それだけ感情表現を豊富にできるということ。出せる声質が多いということは、それだけ感情表現を適切にできるということ。

歌を通して表現したいと思う感情が「まず自分の中にあること」が大切なのです。

師匠の言葉を曲解

余談ですが、私は曲解して「歌に音程なんて関係ないって師匠も言ってたぞ」って最初の頃思ってたのですが、今の先生に「歌うのなら音程を取るのも大事」と言われてハッとしました。

音楽の3要素として、リズム・メロディー・ハーモニーがあるのですが、歌も音楽だったと思い出させてくれる言葉でした。師匠も「後からついてくる」って言っただけで、音程がどうでもいいなんて一言も言ってませんでしたしね。

終わりに

これはあくまで現時点(5年ぐらいの練習)での考えです。きっとまた、歌への理解が進めば気づいてくることもあるでしょう。

あるいは初心者の人がこの記事を目にしても、同じようには思えないかもしれません。

歌は階段状にうまくなります。何かに気づいて、それを実際にやれるようになった時に、文字通りステップアップして上手になります。

発声は地道に少しずつ積み重ねていく感じがあります。気づきで変わることもありますけどね。

何かに気づいて、それができるように練習をする。歌がうまくなるのはその繰り返しだと思います。

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