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ジェイデン・アイビーは身体能力だけだと思わない方がいい

 こんにちは。先日映画「余命10年」を観たのですが、恥ずかしげもなく号泣してしまいました。ただただ切ない映画でしっかり嗚咽するくらいの涙は、高校の時の部活引退の時以来だったと思います。
 カレッジバスケも多くの嬉し悔し涙が流れることになるマーチマッドネスが始まりました。果たして今年はどんなシンデレラストーリーが待っているのでしょうか。有望なフレッシュマンだけでなく、上級生の力も必要になるこのトーナメント。そんなわけで今日はソフォモアのジェイデン・アイビーについてお話ししたいと思います。

プロフィール

名前】ジェイデン・アイビー
【生年月日】2002年2月13日
【身長・体重】6フィート4インチ(約193cm)、194ポンド(約88kg)
【ESPNランキング】84位
【ポジション】シューティングガード/ポイントガード
【所属大学・学年】パデュー大・2年
【成績(3/15時点)】31.2MPG、17.1PPG、4.9RPG、3.2APG、0.6SPG、0.9BPG、2.5TO、46.2FG%、35.6 3P%、73.5FT%

 2019年のu-19w杯では、チェットホルムグレンと共に大会ベスト5に選出されたアイビー。意外にもESPNランクは80位台でしたが、1年次のマーチマッドネスでシーズンハイの26得点をあげました。(試合は敗戦)高校卒業時に80位台でも上位候補まで上り詰めるのですから、アメリカの選手層の厚さとコーチングによる成長曲線には驚くべきものがありますね。ハイライトでは、スピードや跳躍力で「映える」プレイヤーのイメージが強いのですが、個人的にはあまり魅力に感じていませんでした。トランジションプレイヤーの中にはハーフコートバスケットの理解度が低いプレイヤーも多く、リーグに残るのが困難なプレイヤーを何人も見てきたからです。しかし、試合を観るにつれ、彼は身体能力が一番のセールスポイントではないのではないか、と思うようになりました。(彼のおかげで自分の知ったかぶりを直すいい機会になりました。反省。)
 それでは、僕が彼のプレーをみて感じた魅力をお伝えしたいと思います。

魅力

オフェンス

 ハイライトプレーでよく見られるように、彼の身体能力(特に跳躍力)は目につきやすい彼の魅力でしょう。ドライブ時の彼の加速力はあまりにも自然で、気が付いたらディフェンスとの距離が開いています。スピードが速いプレイヤーは数多くいますが、加速力が高いプレイヤーは非常に貴重です。更に彼の場合は加速時の体勢も走り出しと大きく変化がないため、相手ディフェンスは彼のドライブのリズムを掴むのに苦労するでしょう。
 ドライブスピードが早くてもフィニッシュのステップがお粗末だとブロックされるだけでなく、自身のスピードをコントロールできないことによる怪我のリスクも高まります。しかし、彼のフィニッシュはユーロステップや意図的な減速で相手ディフェンスをかわすことができます。タイミングを掴めない相手ディフェンスはファールを余儀なくされます。減速をしても一歩目の力強さを失われていないことにより、AND1をもぎ取ることができます。身体能力に向き合い身につけたフットワークはNBAでの活躍にも大きな助けになることが期待できます。
 ここまで身体能力に注目した魅力を挙げましたが、僕が彼の魅力に感じているのは、セットオフェンス時のミッドレンジゲームです。パデュー大は、セットオフェンスでは主に3つのオフェンスオプションがあり、このうち2つを常に使えるように適したプレイヤーをローテーションさせています。その中の1つにジェイデン・アイビーのミッドレンジゲームがあります。彼の速攻の時のイケイケなスピードを観た後に彼のミッドレンジゲームを観ると、「同一人物?」と思うくらい落ち着き払ったプレーを展開します。スロットのポジションでボールレシーブをした後の駆け引きは20歳とは思えないほどのIQの高さです。ペネトレイトはフロアバランスを把握してトライし、ここでもフィニッシュはタイミングをずらす巧さがあります。ミッドレンジゲームに移行しようとしていた2010〜2011年頃のドウェイン・ウェイド(元マイアミヒート他)のプレースタイルを想像していただけたら分かり易いと思います。
 更に3P%も1年次(25.8%)から役10ポイント近く向上させています。プルアップ・キャッチアンドシュート共にムラなく決めることができるため、NBAの距離に慣れたときに、オフェンスパターンの豊富さに拍車をかけることになるでしょう。
 身体能力を基に培われた高いIQ、技術力はNBAでもチームのペースに関わらず、スコアラーとして機能することが期待できます。
 

ディフェンス

 意外と知られていないところとしてIQの高さを度々挙げていますが、彼のデフィフェンスはそれが凝縮されたようなものになっています。
 オフボールディフェンスについてですが、ポジショニングとマークマンをチェイスするタイミングがベテランのようです。常にビッタリと張り付くタイプではありませんが、ボールマンがパスを出しにくい且つマークマンにカッティングされないようにポジショニングをし、マークマンがスクリーンを使おうとするときには走り出しの予備動作を視認し、簡単にスクリーンをかわしてしまいます。
 対人ディフェンスでは持ち前の敏捷性を活かし、相手の侵入を許しません。スティールやブロックの数は多くありませんが、相手を攻めにくくするディフェンスができ、徐々に蝕まれるような毒性の強いディフェンスを披露しています。NBAだとレイジョン・ロンド(クリーブランド・キャバリアーズ他)のプレーに近いでしょうか。
 ディフェンスのポジション+身体能力でハイライトも多く見られます。チェイスダウンブロックやインテンシティの高いリバウンドはインパクト抜群です。このように、彼のハイライトプレーには多くの駆け引きや情報処理を行なっていることがわかりました。正直ディフェンスについてはほとんど完成されていて、すぐにNBAでも通じると個人的には思います。

伸び代

オフェンス

 ミッドレンジ・トランジションともに圧倒的なスピードと華麗なステップを見せつけるアイビーですが、フィニッシュが雑になる時があります。FG%は及第点ですが、基本的にレイアップでのフィニッシュのため、ステップまでで相手をかわせない場合にタフショットが多く見られます。ハーフコートオフェンスではミッドレンジからオフェンスを開始するものの、ペネトレイトが主のため、プルアップやポストプレーを習得することでより、効率的かつ危険を伴わないプレーが多くみられると思います。または、73%近いFT%を活かせるよう相手に体を当てるためのステップやポンプフェイクを活用し、ファールをもぎ取ることでより一層いやらしいプレイヤーになるのではないかと思います。
 他にもパス能力にはまだ疑問が残ります。デザインされたセットオフェンス以外でのパスは自身のペネトレイトが止められたときにパスコースを探している場面が多く、パスの質も良いとはいえません。自分のアタックでどのようなローテーションになるかを予想することでパスの質を更に上げられるのではないかと思います。

ディフェンス

 魅力の点でお話ししたように、平均リバウンドはガードとしては高い水準を残ししていますが、ボックスアウト時にスタンディングになっている場面が非常に多いです。彼のポジションはガードのため多くの場合はフィジカルなリバウンド争いまで発展しませんが、NBAではリバウンドに参加できるガード(デジョンテ・マレー(サンアントニオ・スパーズ)やコール・アンソニー(オーランド・マジック)など)も多いため、ボックスアウトの習慣化をすることでNBAでも高いリバウンド力を発揮し、万が一オフェンスリバウンドを取られたとしても、楽な体勢からのシュートを防ぐことができるでしょう。

まとめ

 鳴り物入りでの入学とはいかなくても、昨年のマーチマッドネスで自信をつけることで今年の上位指名候補にまで上り詰めたジェイデン・アイビー。ハイライトプレーに目が行きがちですが、地味なプレーも積極的に行なってくれるところはリーグでも重宝すると思います。特にディフェンスの伸び代は無理矢理挙げた感もあるので、今ドラフト候補生のガードではトップクラスのディフェンス力ではないか、と個人的には思っております。
 プレイメイクには一定の伸び代を感じるので、現在の実力であれば、シューティングガードでのプレーが濃厚そうです。IQも高くソフォモアとしては若いため、スラッシャーのファーストオプションとしてもよし、エースプレイヤーの横に据えてゲームを崩さないセカンドオプションとしても良しなプレイヤーになるのではないかと予想します。

【予想順位】2~5位
【プレイヤータイプMAX】ドノバン・ミッチェル
【プレイヤータイプmin】デビン・ハリス+
【フィットチーム】NOP、DET、NYK、POR

 以上になります。個人的には何試合も試合を観ることで凄さがわかるスルメみたいなプレイヤーだと思っています。(ルーキー全員にいえることなのですが)スタッツに現れないところで、ゲームへの貴重さがわかるプレイヤーも多く、彼もその類の香りもするので、ぜひNBAの舞台では注目してほしいと思います。
 それでは、マーチマッドネスの沼に再び浸からなければいけないので、またどこかで。

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