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「RPAって、初心者でもできますか?」~RPAを実践した職員にインタビュー!~

都庁全体のデジタル化を推進するためには、職員1人1人がデジタルツールを業務の中に積極的に導入・活用していくことが重要です。

とはいえ、我々構造改革推進チームのメンバーもまだまだデジタルに不慣れな素人であり、どうやったら上手にデジタルツールを使いこなせるか、試行錯誤を繰り返しています。

そんな時、「都の政策連携団体(外郭団体)にRPAを独力で導入した方がいる」との噂が。都政のDX推進役として「これはぜひお話を聞かねば」と思い、その真相を探っていったところ、公益財団法人 東京都環境公社にRPAにより業務の自動化を行った方がいることがわかり、早速Zoomでインタビューを行いました。

初心者でもRPAは出来るのか?特別なスキルがあるからできたのではないか?という疑問を持ちつつ、RPAの実践にあたり取り組んだことや苦労話などをお話しいただきました!

RPA(Robotic Process Automation)とは?
RPAは、エクセルの情報を手作業でシステムに入力するといった定型業務をソフトウエアなどを活用し、PCで自動的に作業できるようにするしくみ。単純な事務作業を自動化し、業務の効率化・スピードアップなどが図れる。

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本日はよろしくお願いします。早速ですが、自己紹介をお願いできますでしょうか。

はい。公益財団法人 東京都環境公社の米田良平と申します。私は現在入社2年目で、都内中小規模事業所等での地球温暖化対策の底上げを目的とした「地球温暖化対策報告書制度」を担当しています。

この制度は、事業者様が前年度使用したエネルギー使用量や実施した温暖化対策を東京都に報告する制度で、使用量が一定量を超えた事業者様は報告書の提出が義務付けられています。任意で提出いただく事業者様も合わせると、約2,000事業者様(約35,000事業所)から報告書が提出されます。その内容を審査するのが私のチームの主な業務です。

そもそもRPAを取り入れようと思ったきっかけは何でしょうか?

前職(経理関係)の職場でRPAが導入されており、その運用に携わっていたことから、1から構築したことは無かったのですが、活用のイメージは出来ていました。

現職に入社して審査業務に携わる中で、メインの業務である報告書の内容審査により多くの時間を割くためにも、システム入力や審査帳票の出力といった定型的な業務にRPAを活用できるのではと考え、RPAの構築を実践してみることにしました。

今回RPAを取り入れたのは、具体的にどのような業務でしょうか?

審査を行う前に、事業者様からデータ形式(エクセル)で提出された報告書を報告書システム(以下、システムと記載)に入力したうえで、システムから審査帳票を出力する必要があります。今回トライアルとして、「提出された報告書をシステムに入力する作業」と、「システムから審査帳票を出力する作業」の2つの工程について、RPAを導入しました。

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一連の業務の中で、赤枠囲いの2つの工程をRPA化した

RPAにより自動化した作業工程を具体的に教えていただけますでしょうか。

まず、「提出された報告書をシステムに入力する作業」ですが、これまでは、エクセルで提出されたデータについては、システムの「インポート機能」を用いて取り込んでいました。

「インポート機能」を用いる中でも、インポートするファイル(報告書データ)の選択をはじめ、システム上の様々なボタンのクリックなど細かく分類すると、1件の報告書をシステムにインプットするのに25の工程が必要です。

これらの工程をRPAに登録し、システムへの入力作業を自動化しました。これにより、1件あたり最短で90秒程度かかっていたものが、ボタンをクリックするだけで完了するようになり、繁忙期4か月間で少なく見積もっても30時間の作業時間削減が見込まれます。

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RPAに登録した25工程

システムへの必要事項入力や報告書データのインポートが自動化されたのですね!ということは、フォルダに報告書を入れておくだけで良い、ということでしょうか?

高度なRPAを駆使できるのであれば、そのようにできるのですが、今回は、事業者様から提出された報告書データを1つにまとめるエクセル(インポートファイルリスト)を作成し、RPAにつなげる方式を採用しました。

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前段階の処理方法を工夫されたのですね!もう1つの、審査帳票を出力する作業の自動化についても教えてください

審査に必要な情報がまとまっている審査帳票をシステムから出力するには、システムに事業者番号を入力したうえで、いくつかボタンをクリックし、出力された審査帳票に名前を付けて保存する、といった18の工程が必要です。この作業も先ほどご説明した入力作業と同様に自動化し、1ファイルあたり最短で60秒程度要していた手作業が不要となり、1ファイル15秒のペースで自動的に帳票を出力してくれています。これにより、繁忙期4か月間で少なく見積もっても25時間の作業時間削減が見込まれます。

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繁忙期4ヶ月の作業削減時間
入力:30時間の削減
出力:25時間の削減

なるほど、いずれも、繰り返し同じ作業工程があるものを自動化したのですね。RPAへの登録が難しそうに思いますが、プログラミングとかが必要なのでしょうか?初心者には難しそうで。。

いえ、私はプログラミングはやったことが無いですし、私が使用したRPA(ネットで調べたらたくさん出てきたので、そこから選びました)では、必要ありませんでしたよ!作業フローを順番に書き出して、その作業をRPAに登録(クリックする、文字を入力する、といった作業工程をメニューから選択)していきます。このRPAへの入力作業は、市販の書籍を確認しながら対応しました。

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書籍を見ながらでも、つまずくことは無かったですか?

それはありましたね。RPAに必要な手順を入れたと思っても動かないこともしばしば。。でも、最終的にはインターネットで検索したりすれば解決方法は見つかりました。大変ではありましたが、楽しみながらできました。他の業務と並行しながらRPAの構築を行い、メンテナンスをしながら、トータル1週間(計10時間程度)で完成しました。

また事務フローを、RPAを活用した方式へ変える必要もありましたので、その点も苦労しました。RPAで自動処理するに当たって、その準備に工数が掛かると意味がありません。前述のインポートファイルリスト作成の部分など、なるべく手間が掛からない方法がとれたと思います。しかし、今の運用と全く同じというわけにはいかなかったため、一部はチーム員と調整の上、運用を変更した部分もあります。RPA自体よりも、それをいかに運用に落とし込むか、というのは難しいと感じました。

くじけずに取り組む姿勢が大事ですね!ただ、なかなか重い腰が上がりません(笑)  RPAを活用した結果、どんな良いことがありましたか?

RPA化した業務について、これまでは複数名で分担して対応していましたが、自動化した後は、私1人で対応できるようになりました。また、タイプミスなどの単純なミスの発生抑制にも繋がりました。さらに、報告書審査に注力できるため、より高品質な業務が可能となります。

他の担当者からは「本当に助かっている」「審査に早く取り掛かれて良い」「審査に集中できる」といった感想をいただいています。

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「業務の質」や「ライフ・ワーク・バランス」の向上にもつながってくるのですね!今後、さらにRPAを活用して取り組んでいきたいことはありますか?

現在、「システムへの入力」と「審査帳票の出力」の2つの工程が別々に自動化されています。今後は2つの工程を1つのRPAに組み込み、システムへの入力から審査帳票の出力まですべてを自動化させたいと考えています。前日に受領した報告書を夜間にRPAが処理し、翌日に職員が審査業務に注力できる環境が作れれば良いな、と考えています。

実現出来たら良いですね!今後、私もRPAを実践してみたくなりました!またお話を聞かせてください。本日はありがとうございました。

東京都環境公社では、米田さんの取組を共有する研修を実施するなど、DXの取組をさらに広げる動きがみられています。都庁でも、こうした取組を共有し、実践につなげていくことで、DXの推進を梃子(てこ)にした構造改革を浸透させていきます!
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