10年近く離れていた元ファンが「ひろプリ」で久々に復帰した感想。

シリーズまさかの20周年に突入したプリキュアシリーズ。その20周年記念作品「ひろがるスカイ!プリキュア」。

実は10年くらい前(確かプリンセスプリキュアの頃)までは度々リアタイもしていた元ファンの俺。なんやかんやのうちに離れていたけど久々に復帰して、アマプラも手伝って一年視聴した。
(因みに復帰したきっかけが有名な22話。
水星の魔女最終回と同日だったりする)

今回は1年間一通り見ての面白かったところ・残念だったところを語ってみたいと思う。

○面白かったところ

・プリキュアの丁寧な描写

一番良かったと思うのがこの点。

史上初の異世界出身&青キャラの主人公キュア、
史上初の男子キュア、
史上初の新成年キュア、
史上初の赤ちゃんキュア…

と、何かと「史上初」が出揃った一年ではあったけど、アクが強すぎたり、完全に影が薄くなってしまうキャラが存在せず、皆それぞれしっかり個性や性格が立っていたのは本当に良かったと思う。

ヒーローを目指して奮闘するソラ、幼い頃の憧れから更に広い世界への知識欲を羽ばたかせていくツバサ、ムードメーカーの一面と大人としての見識の深さを両立しているあげは…
登場時点での「経験からなる夢」、それが見識の深まりや成長に伴って更に広がっていく過程は、年間通してとても見所があった。

個人的には、「赤ちゃんキャラ」であったエルちゃんがとても良いキャラに仕上がってきたのも嬉しい誤算だった。

プリキュアの「赤ちゃん」って、色々な面で「枷」になっているケースが多くてあまり好きではなかった。
そんなところ、エルちゃんは年並みのワガママさもありつつも「周囲の人達」からの愛情や、見てきて学んだ結果の「成長」を見せてくれた。
中盤以降は「赤ちゃん」としてはあまり意識されなかった面もあるけど、この手のキャラを「成長できるキャラ」として描いたことは、挑戦的だし素晴らしいことだと思う。

この「史上初」から漏れている、スタンダードなヒロインキュアのましろ。
中盤あたりだと他の濃いキャラたちに押されている印象もあったけど、序盤から他者(プリキュアの仲間たちだけでなく、敵からも!)の影響やそこからの経験、成長を積んでいって、武闘派でないながらも「ヒーロー」として活躍しているのは年通してのカタルシスがあった。

この辺りは次項で細かく書いていきたいと思う。

・年間通したキャラの交流と成長

本作では、キャラ独自の個性だけでなく、1年間通してのキャラ同士の交流、そこを通しての成長も大きな魅力だ。

最たるものはやっぱりソラましのコンビ成長劇だろう。

  1. ましろに傷ついてほしくなくて一人で戦おうとするソラ⇔「あなたが心配」だから一緒にいようとするましろ

  2. ガチで心折れたソラ→「とっくに私のヒーロー」と慰めるましろ→復活して駆けつけるソラ

  3. エルちゃんが戦える様になったことに蟠りから「傷つく怖さ」に気づくましろ⇔かつての言葉を使ってプリズムを諭すソラ

という感じに、キャラ同士の交流とその結果としての成長が、1年4クールの時間をかけてしっかり育まれていたところはすごく魅力的だった。
はわわオネショタかと思いきやそれぞれの個性や「お互いをしっかり理解している」ことが描かれているツバサとあげはもいいコンビだったし、スカイランド組のソラ&ツバサ、まさかまさかのましろとバッタとか、ペア以外の組み合わせも見応えがあった。

エルちゃんはこうしたキャラの掛け合いを見て学習・成長していったキャラだし、彼女を中心に広がっていく関係性も微笑ましかったりじんときたりと年間通して見どころが多かった。

・プリキュアらしい「ヒーロー」の描き方

プリキュアという作品における「ヒーロー」の描き方はスタッフも大分悩んだポイントだと思う。この辺については賛否あると思うけど、自分としては(多くの制約がある中で)満足がいく内容になったと思う。

例えば、本作は日常パートの比重がかなり大きい。
本筋に触れる重要回はまだしも個人回や交流会だと、Bパートの中盤くらいまで変身の機会がなく、戦闘も放映終盤の5分くらいでさっと消化してしまうことも多い。
変身はするけど戦闘しない」なんて回もあったりする。

だけど、そのことに不満は抱いていない。
短い戦闘時間の中でもアイディアやその回限りのギミックをうまく盛り込んだりと十分見応えがあったことも、一つの理由。
それ以上に、日常パート、キャラ描写に多くの時間を割いた甲斐あって「プリキュア」として戦う意味がかなり分かりやすく感じられた事が大きかった。

メインの敵である三幹部も登場時間自体は短めながらもそれぞれの個性はしっかり描けていたし、憎めないながらも「其々の殻に閉じこもって力(または自尊心)を深めていく」と、プリキュア達と相反する敵として主張していたし、最終的に戦いを通して相手を認められる様になっていく、というのもいい意味で少年マンガっぽくて良かった。
(終盤のスキア以降は…後述)

「ヒーロー」をメインテーマとして描いてきたひろプリの「ヒーロー」の定義とは何か。
俺は「戦い以外の友達とか夢とか、そんな"人生"を大切にしていく事が一番だよね」というありふれた、そして普遍的なテーマだと思っている。

それはシリーズが「日常」や「夢」や「愛」という言葉に置き換えて語り続けてきた事だし、他のヒーローモノとの最大の差別点だと思うし、プリキュア シリーズが絶対に失ってはいけない根幹的要素だと思っている。

×残念なところ

・後半がちょっとイマイチ

多くの人が触れている事だけど、終盤の展開が若干勢いに欠ける事は否定できなかったと思う。

メイン主軸がゆっくりで個人回多めだったのはそこまで気にならないけど、やっぱり終盤の強敵枠、そしてラスボスとして登場したスキアヘッドが「悪役」としては余りにも力不足だったとは思う。

初登場した時こそ中々の強敵オーラを出していた癖にただモンスターを出して来るだけで煽りもせずさっさと顔を出す回が長く続き、功績的にも三幹部未満と言った有様で、正直に上手く扱われていなかった様に思う。

完結した後で見れば「愛」という甘言で敵味方を惑わし続け、最後まで一貫した悪辣さを見せ続けてきたこともあって、悪人度としてはシリーズの中でも中々のものがある。
ただ、リアタイ当時の「最高幹部」又は「黒幕」としての覇気は、残念ながら最低クラスだった。

一応、振り返ってみれば「ただ力だけが全て」と妄信している存在が本作において大きく描かれる事がないのは分かるし、そんな悪役が最終回でプリキュア達にあっさりと蹴散らされたのもそれはそれで爽快感があって良かった。
全体的に見れば、作品テーマを描く上で誤った扱いを受けている訳ではない。

ただ、主人公と一騎討ちしたり、主人公の心を完全に折ったり、ギャグ枠として申し分ないズレた努力をしたりと個性豊かな活躍?を見せてくれた中盤までと比べると、悪役の「質」が落ちた事は作品の勢いに少なくない影響を与えた事は否定できない。

ただ、結婚式回だったりクリスマス回だったり、キャラ同士の関係性や"ヒーロー"としての姿をガッツリ描いた回はとても楽しかったし、終盤になってましろが凄く体張って活躍してくれるところもグッときた。
最終回でのお別れシーンはこちらも泣きそうになったし、その後アッサリの再会シーンもプリキュアっぽくて悪くないと思った。

もうちょっと三幹部共の活躍シーンを、後半まで引っ張ってくれれば良かったのに…とは思わなくもない。

○過去プリキュアと比べて。

昨今、プリキュア始め4クールアニメの多くがサブスク入りする様になっており、録画機器がなくとも特定の回を見返したり、過去シリーズを見直したりする事が難しく無くなってきた。
ひろプリにおいても、「気軽に見直せる様になった」事を前提に長期間に渡る伏線や関係性の変化を描いていけた様にも思う。

で、この度アマプラの有料サービスを利用して過去作プリキュアを見て行ったのだが…やはりガッツリ違う。
そんなにガッツリ視聴し続けていた訳じゃないのだけど、過去シリーズと見比べていくと、バトルから人間描写、シナリオ構築まで全然変わっている。
少なくとも昔は良かったなんて言えるハナシではない

作画についても大きく崩れる様な事は殆ど無くなっているし、プリキュア5位までは必殺技は愚か敵に苦戦するパートまでバンクで描かれる事が普通にあった。
ハートキャッチみたいに時折上澄みレベルで凄い作品・シーンも出て来るけど、年々バトルがマンネリ・間延びしない様な試みは重ねられていて、総合的な完成度は高くなっている様に思う。

年ごとにテーマやスタイルが大きく変わっていくシリーズだけど、時代に沿って弛まぬアップデートを続けていっているアニメなんだと強く思った。
単なる作劇技術だけでなく語られるメッセージも変わっていく。
私見だけど、初代8話の「プリキュア解散」や5中盤のガチ喧嘩回など、今のご時世では多分、ウケないんだろう。(勿論、それぞれが作品を代表する名シーンである事は確かだろうけど)

時代の流行や、大きな事件によって、求められる「ヒーロー」像もモチーフも哲学も変わってくる。ライダーや戦隊シリーズにも言えることだろうけど、同じシリーズでありながら一作ごとにモチーフや雰囲気やメッセージがガラリと変えていくことが、長く続けていく秘訣なのかな、と思う。
アニメにしろ特撮にしろ、漫画にしろ小説にしろブログにしろ「作ること」とは「何かを学び続けること」なのかもしれない。

さて、2月4日からはまた新しいプリキュア
「わんだふるぷりきゅあ」が始まる。
こちらも新しい要素がポンポンと出てくるけど、これからは何を見せてくれるのだろうか。
楽しみだ。

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