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短編小説Only

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普段は長編小説を書いていますが、気分転換に短編も書いています。でも、この頻度は気分転換の枠を超えている。 短編小説の数が多くなってきたので、シリーズ化している(別のマガジンに入っ…
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2021年12月の記事一覧

【短編】2人で過ごす時間

目の前に座っている水色の髪、青い瞳の少女が、とびきりの笑顔を向けているのを、私はぎこちない笑顔で受け止める。 なんでも冬の寒い時期に、家族で集まって、過ごす行事があるそうなのだが、それを知らずに仕事を入れてしまう私に、彼女は怒っているのだ。 この冬は、私と彼女が婚姻して初めて過ごす家族としての冬である。 それを特別と思わず、いつも通り摂政役の仕事をこなしている机に向かい合うように置かれたソファーに、今、彼女は座って、私の仕事が終わるのを待っているのだ。 ミシェルも彼女が

【短編】誕生日

誕生日「先輩。いつになったら、食事をおごってくれるんですか?」 会社の打ち合わせスペースで、明日行う作業の打ち合わせをしていた時に、突然そう声をかけられた。 確かに、かなり前にあった飲み会で、今度食事をおごると軽く約束をしたような気がする。 彼女は、自分が勤めている会社に出向してきている協力会社の社員だ。 出向という割にはもう5年近くになるから、かなり長い。 「先輩」というのは、単にからかってそう言ってきているだけで、実際は同じプロジェクトのリーダーを私がしているから、私は