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特殊設定恋愛小説

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「特殊設定」を取り入れた恋愛小説。 少し不思議な恋愛小説をまとめてみました。
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2022年6月の記事一覧

【短編】衣替え

短い梅雨が明けて、蒸し暑い日が続くようになった。 今日は朝からいい天気だったので、たくさん洗濯をして、ベランダに干した。夕方からまた天気が崩れる恐れがあるので、それまでには取り込まないとならないが、多分乾くだろう。 洗濯物を干している最中に、アパートの隣の住人もベランダに出て、洗濯物を干している。私の方が先に干し終わったので、外の景色を眺めているふりをしつつ、隣人の方を伺う。 あれ?髪、急に伸びてるな。 サラサラのストレートの黒髪が、背中で揺れているのが見えた。 隣人の

【短編】カキの世界

朝起きた時に既に違和感があった。顔に触れた腕の滑らかさと白さを見て、ああ、とうとう来てしまったかと思った。 前々から分かっていたことではあったので、まぁいいのだけど。 取り合えず、今日、仕事は休まないとな。と思いつつ、ベッドの上に起き上がる。 リビングに行くと、既に母の手によって朝食が用意されていた。 母は僕の顔を見て、納得したように頷いた。 「あら、おめでとう。」 「おめでとうと言われることでもないと思うけど。」 「お赤飯でも炊こうかしら。」 「いらないって。今日は手続き