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特殊設定恋愛小説

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「特殊設定」を取り入れた恋愛小説。 少し不思議な恋愛小説をまとめてみました。
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2022年2月の記事一覧

【短編】まるで鏡の中を見ているようだ。

私は、いつものカフェで、自宅から持ってきた文庫本を開いた。 今日は、子どもが駅前のスクールで習い事をする火曜日。 小学生の子どもが、一人で通うには、少し距離があり、始まる時間が遅いことから、冬になると、自宅を出る時間でも真っ暗になってしまう。 さすがに心配なため、行き帰り付き添っている。 子どもをスクールまで送り届けた後、駅ビルで買い物を済ませ、残りの時間、カフェで時間をつぶす。それがここ最近の私のルーティーンだ。 本を読んでいたら、目の前で声がした。 「あの、すみませ

【短編】消えていく風景

なかなか都道府県をまたいで帰省ができない中、私は必要があって、2年ぶりくらいに帰省した。 私の実家の周りは様変わりしていた。家の前には、細い道路があり、それを挟んで家が建っていたのだが、それらはすべて取り壊され、空き地と化していた。その奥には、いわゆる青空駐車場のようなものが広がっている。だいぶ先まで、建物はない。 両隣の家も一部残っているが、残っていても人は住んでいない。 随分見晴らしが良くなってしまった。 私の実家がある地域には、後々高速道路が造られることになっていた