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野菜の価格決定の仕組み〜仕組みを知らないで高く売れますか?〜

明けましておめでとうございます!!
 年末年始の充電期間を経て、新年スタートの投稿は青果物の「流通」の仕組みを紐解いていこうと思います。JA時代にも感じていたことですが、仕組みを知らない人が多すぎる。仕組みを知らないで高く売れるのか疑問です。青果物の「流通」には、農家が生産したものを全国に流通させ消費させる仕組みがあります。

 これから数回に渡ってその仕組みをわかりやすく紐解いて行こうと思いますので、お付き合いいただけると幸いです。

1.野菜を消費する場面から逆算しましょう。

 皆さんはどんな場面で野菜を消費しますか?所謂、エンドユーザーとして野菜に接する場面です。仕組みを考える時は、最終消費から逆算すると今まで見えなかったものが見えてきます。

(1)野菜を買ってきて家で料理して消費する。→内食
(2)お惣菜やカップサラダ、お弁当などを購入して家等で消費する。→中食
(3)レストラン、給食、老人ホーム、病院等で野菜を食べる。→外食

 最終消費から考えると上記の3つに大きく分類されます。野菜の価格決定で大きく影響しているのは、内食・中食・外食の割合が時代とともに移り変わってきたことが要因のひとつになります。それは、私たちの生活の変化とともに移り変わってきたとも言えるでしょう。

 次にそれぞれを詳しく紐解いて行きましょう。

2.減少を続ける家庭内消費(内食)

 戦後まもなく、まだ日本が貧しかった頃は家庭内消費(内食)がメインでした。しかし、高度経済成長を経て、女性の社会進出が増えるに従い、家庭内消費(内食)は減少して行きます。家庭内消費(内食)は、お惣菜やカット野菜などの中食や外食に取って替わられる事になります。

 そのことが、野菜の生産者に価格決定にどのように影響を及ぼしているのでしょうか。

 家庭内消費(内食)が減少すると言うことは、野菜をそのままの状態で購入することが減ると言うことです。ここで、野菜をそのままの状態で販売しているのは「どこ」なのかを考えましょう。

(1)量販店(スーパーマーケット)
   →近年、野菜売り場の面積が小さくなっていると思いませんか。
(2)街の八百屋さん
   →個人商店の八百屋さんはほとんど見かけなくなりました。
(3)生協(宅配)
   →加工された物や利便性のある商品が増えてきています。
(4)インターネット販売
   →有機野菜など特殊なものを宅配は人気がありますが、消費のメインではありませんね。
(5)直売所
   →近年増えていますが、全体の購入量を底上げするほどではありません。

 以上が考えられるところでしょうか。

 家庭内消費(内食)の減少は、上記の(1)〜(3)での購入額が少なくなると言う結果をもたらしています。近年増えているネットでの直接販売や直売所での販売がそれらを補うものではありませんし、スーパーや生協の競合として、さらに売上を落とす結果となっています。

3.内食の減少で「価格の弾力性」がなくなった!!

 家庭内消費(内食)を中心とした購入形態の特徴は「価格の弾力性」です。野菜が品薄で相場が高い時は「高く」売られます。市場に多く出回り、相場が安い時は「安く」売られます。この価格の弾力性と全国に張り巡らされた卸売市場の価格形成機能(セリ)によって、農家が生産した野菜が全国に届けられ消費されていました。

「大事なこと!!何が起こっているのか。」

 しかし、家庭内消費(内食)が減少し、中食や外食が増えたことで、野菜の出回り量による相場の上げ下げをどこかが吸収する必要が出てきました。中食や外食は基本的に、価格は一定ですよね。それが、中食業者や外食業者です。
 つまり、家庭内消費(内食)がメインの消費形態だった時代には、相場による価格の上げ下げや野菜の出回り量の増減を、スーパーや八百屋を通じた消費者の消費行動によって需給のバランスが取れていたとも言えます。
 農家からスーパーや八百屋までの流通各所も、野菜の流通量に合わせた相場を基準に流通させることで、売上と手数料が取れていました。

 しかし、家庭内消費(内食)が減少し、中食や外食が増えたことで、相場ではなく「同じ価格」で野菜を欲しがる取引先が増えました。「同じ価格」で野菜が欲しいと言うことは、「量も同じ」と言うことになりますので、天候や作付けによる野菜の出回り量の増減による相場の上下や出回り量の増減に柔軟に対応出来なくなってきたのです。

 これまでの記述をもとまとめると次のようになります。

「以前は相場が高くなると、野菜の売られる値段も高くなり、結果消費が抑えられ適量が販売された。また相場が安くなると、野菜の売られる値段が安くなったり、量が多くなったりして、消費が拡大され出回った野菜が全て消費された」

「今は相場が高くなると、スーパーでの野菜が高くなるので、中食や外食の消費が増え、高い野菜を購入しないといけない加工業者や仲卸等が利益を圧迫される。相場が安くなると、まずスーパーで売られる野菜の値段は安くなるが、元々の消費量が落ち込んでいる事や安いからといって必要以上に購入しないので消費量は伸びず、中食や外食業者は同じ価格で同じ量が基本なので、出回り量が増えても使用量は増えないので、大量に出回った野菜はどこかで滞留して、消費されず、安値が長続きする」

では、結局どうすればいいのか。

疑問を持たれると思います。このことは、中食や外食の仕組みを説明した後に総合的に考えていきたいと思います。

4.価格決定の仕組み

(1)量販店(スーパーマーケット)

 量販店(スーパー)での価格決定はそれぞれの会社によって違いますが、基本バイヤーと呼ばれる人が市場や仲卸と仕入れ価格を決めて、お店での販売価格を決めます。個人商店の八百屋さんが多かった時代は、毎日、仕入れ価格によって値段が決まっていましたが、現在は1週間や2週間前に商談をして決定します。つまり、その時点で市場や仲卸は相場を予想して、バイヤーと決定してします訳です。なんと、早い場合は2週間前に相場が決まっているという事になります。

 さらに、チラシに載せる特売等は1け前に決定することもあります。

これはどういう事でしょうか?

 前もって決めた価格(相場)より高ければ市場か仲卸は損をします。時には何百万円という損を1回でする事もあります。ですから、価格を決めたら後はそれより相場が高くならないようにコントロールしようとします。
 残念ながら、損をしてしまった場合は、その後の相場安の時にその損を取り戻すために、相場は安いけど高めで商談して辻褄を合わせようとします。

 現在の量販店(スーパー)での野菜販売はこのようになっているのがほとんどです。 価格の弾力性がなくなっている要因のひとつです。

(2)生協(宅配)

 さて、もう一つの大きな家庭内消費(内食)の購入先の生協ですが、こちらはご存知の通りカタログ販売です。はっきり言って生協の宅配は博打です。

 どういう事かというと、生協への販売価格の商談は3け月前から始まります。まず、概ねのチラシの紙面を決定します。その際に参考売価も入れます。売価が決まれば仕入れ値も概ね決定します。そして、最終調整は1け月前です。つまり、1け月前に相場を読んで生協への販売価格を決定しなければいけません。

 博打の理由はこれからです。生協の組合員のもとにカタログが届いて、組合員は注文をします。その時に野菜の相場が高ければ、生協の宅配の方が安いので注文が増えます。その逆の時は減ります。生協の宅配(カタログ販売)は原則数量調整は不可です。組合員の発注に全て応える必要があります。数量が多くても少なくてもです。

 つまり

 商談価格 > 注文時相場 → 驚くほど発注が少ない 
 (相場は安いけど量が売れな)

 商談価格 < 注文時相場 → 驚くほど発注が多い
 (相場が高いのに注文も多く、時には大損する)

 という構図の繰り返しです。

実はなかなかシンドイ商売なのです。

次回は「外食」についてご説明します。最後は増えている「中食」。「中食」の仕組みにうまく対応する事が今後の取引を有利に進めるコツだと考えます。
内食・中食・外食のそれぞれの取引形態を説明後に全体を通してどのようにしていけばいいのか私なりの答えをご説明できればと思います。
ぜひ、お付き合いいただければ幸甚です。

ご質問等ありましたらお気軽にコメントください。




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