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野菜の価格決定の仕組み②〜仕組みを知らないで高く売れますか?〜

前回は量販店(スーパー)や生協での販売を中心にお話ししましたが、今回は「外食」を中心に野菜の流通を考えて行きたいと思います。

「外食」とは外で食事をすることですね。レストランや居酒屋なんかをイメージしていただけるといいと思います。

1.個人の居酒屋や飲食店はどこから仕入れているの?

 「外食」で野菜を消費する場面を考えた時に、外食を経営している人たちは野菜をどこから仕入れているのでしょうか?チェーン展開して何百店舗もある所と個人経営のところでは違ってきますね。

 個人経営の居酒屋や飲食店は、結構近くのスーパーで購入することもあります。業務用スーパーなるものもありますしね。ということは、家庭内消費(内食)と同じ消費行動になっていると言えます。なぜ、そんなことができるのか。それは、最終価格に占める野菜の仕入れ価格ってそんなに高くないんです。今度、外食をする時に、注文したメニューの値段とそこに使われている野菜の種類と量から野菜の仕入れ価格を想像してみてください。
 つまり、小さい飲食店はそんなに野菜の価格に気を使う必要がないということですね。そして、使用する量も1店舗1店舗は少ないということです。

 その他に仲卸や問屋に注文して配達してもらうところもあります。例えばお好み焼き屋でキャベツを大量に使うとか、ある一定の野菜を大量に使うところは、業者に納品してもらうところも多いでしょう。しかし、どんなに大量に使うと言っても街のレストランや居酒屋で使用する量は、流通側から見たら大したことありません。仕分けや運送コストが大きく上乗せされることでしょう。

 また、イタリアンレストランやフランス料理屋さんでは特殊な野菜を農家から直接仕入れることもあるようです。最近はそのようなWebサービスもあります。

 個人経営の特徴はその時々の状況で仕入れが困難な時はメニューを変えたり、高くて仕入れが難しという理由で一部メニューの提供をやめたり出来ますよね。臨機応変に対応できることや価格に対する野菜の割合が比較的小さいことがあります。

2.チェーン展開している外食事業者はどんな仕入れをしているのか?

 次に多店舗展開していて、どの店舗でも同じ価格で同じ品質のメニューを提供しないといけない大型の外食事業者の流通を紐解いて行きましょう。
 実際にはどんなところがありますか。例えば

 マクドナルドやモスバーガーなどのハンバーガーチェーン系

 サイゼリヤ、ガスト、ココス、ロイヤルホストなどのファミリーレストラン系

 ワタミや魚民、白木屋などの居酒屋系

などがありますね。

 まず、彼らは本部がメニュー開発を行うことが個人経営の外食と異なることです。つまり、仕入れが本部一括になることが多いですね。

 ○本部によるメニューの開発・どんな野菜をどんな形態で使うを決定
 つまり、どんな形で野菜をお店に送り込んでどのようにオペレーションするかを本部が決定します。
 例えば、加工品や冷凍野菜を使うのか、カットしたものを使うのかなどです。
 店舗での人員確保が難しくなっているので、店舗でのオペレーションは出来るだけ簡素化される傾向にあります。ということは、何らかの加工や下処理をしたものが流通しているということです。

 ○同一価格、同一品質が基本
 原則、同一価格や同一品質が基本です。導入される野菜の生産者は、野菜の加工をする加工業者に納品することになるでしょう。野菜の相場や数量のリスクは加工業者が追うことになります。もちろん、大手の農業生産法人は自社で作った野菜を自社で加工して供給することも可能です。
 外食業者が仕入れ部門があって、直接生産者や産地業者、JA等から仕入れる場合もありますが、多いのは全国を飛び回れる中間業者を抱えていて、本部によるメニュー開発で必要になった野菜等を中間業者に探させるパターンです。そこが、産地リレーや品質、価格の調整、物流の調整を行います。70歳近くの方がブローカーとして活躍している例も少なくないですね。

3.外食産業と付き合う時の注意点はスポット取引であるということ

 大手外食レストランなどから野菜のオファーがあったとします。注意しなければならないのは、それが定番メニューかそうでないかです。

 例えば、あるレストランがほうれん草たっぷりドリアというメニューを展開することになったとします。そこであなたに話がきて、ほうれん草を提供したとします。しかし、夏のメニュー変更で、そのメニューがなくなったら、納品は「0」になります。つまり、外食産業へ導入するということは、メニュー変更に合わせて使用量が大幅に変更になる可能性が大きいということです。

 つまり、継続取引ではなく、メニューに使用されている間のスポット取引になります。お店のメニュー構成は本部の開発部門等で行いますので、そこに仕入れ側との交渉はありません。仕入れの協力会社に今回のこのメニューは春までだから、6月でほうれん草の仕入れは終わりですと伝えられて終了です。

 また、導入したメニューが予想どうり売れるかどうかは誰にもわかりませんから、商談時の注文が来ないこともあるし、想定以上に注文が来て、トラブルになることもあります。これらのことも頭に入れておきましょう。

 ハンバーガーチェーンのレタスやトマト、お好み焼き屋のチェーン店やイタリアンレストランのほうれん草メニューなど、定番品目はありますが、それ以外はスポットの連続だと考えた方が無難です。

4.外食産業とうまく付き合うコツ

(1)中間業者だけでなく、最終ユーザーの会社の仕入れ担当に生産現場を見て
   もらって、安全安心な野菜や心掛けていることなどを見てもらいましょう。
(2)ある程度、大規模な生産や地域でまとまることが出来るなら産地を謳ったメ
   ニュー開発も人気が出ます。期間限定から定番メニューに格上げされて息の
   長いメニューになることも可能です。仕入れ担当者から開発担当者につない
   でもらったり、品質が良いことが認められれば、大手の外食等とコラボする
   ことも可能です。
(3)過信は禁物。外食業界は景気の波を受けやすい業界です。取引がいつまでも
   続くと思わず、必ずもしもの時の安全策を検討しておきましょう。取引先が
   1社になることは避けてください。販売先は数社持っておくのがベストで
   す。

 外食産業の流通の仕組みはいかがでしたか。小さなところは、家庭内消費とほぼ同じ動きをします。大手は、一度加工業社もしくは自社のセントラルキッチンに入れて、下処理し、各店舗に配送が基本形態です。大手の取引は中間業者を介した契約取引が基本になります。

 次回は「中食」の流通について記載します。

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