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【デジタル教科書】令和4年のお金の使いどころは?

2021年度は、GIGAスクール構想の元年と言われ、9月にはデジタル庁も発足され、1人1台端末を導入する学校は特定の学校に限った話ではなくなりつつあります。
「デジタル教科書」というテーマにおいても2021年度は大きな転換期となっており、6月に「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の第一次報告書というものが提出され、全国1人1台端末という状況でのデジタル教科書の今後のあり方についての議論結果を報告しました。
この報告書で提言したデジタル教科書のあり方は、令和6(2024)年度での本格実施を目指しています。2021年6月に発足した「デジタル教科書の普及促進に向けた技術的な課題に関するワーキンググループ(WG)」ではこの本格実施に向けたが進められています。

関連記事:【デジタル教科書】令和6年に向けて、技術的な課題を検討するグループを設置

先日、このワーキンググループが開催された際に、令和4年度の予算を獲得するための資料が提出されました。この資料は、要求ですから必ずしもその金額を予算として配分されるとは限りませんが、どのようなことでお金を使おうとしているのかが見えてくることは確かです。今回は、令和4年度に向けてどのような取り組みを行う予定なのかを資料を読み解きながら考えていきたいと思います。
ちなみに今回の予算要求されているデジタル教科書とは「学習者用」の普及促進事業ということになっていることも念頭におきながら資料をみていきたいと思います。

1.概算要求資料を読む前に知っておくと良い背景

概算要求の資料を見る前に知っておくと良い背景について少しまとめたいと思います。このワーキンググループで検討すべきとされる事項を知っておくことで、概算要求の資料が理解しやすくなります。

検討事項1
特別な配慮を必要とする児童生徒の使いやすさを念頭に入れながら、デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性はどうすべきか?
検討事項2 
デジタル教科書の供給をクラウド配信という手段で行う場合、一時的にオフラインでも(ネットワークがつながっていなくても)使用できるようにするための仕組みをどのように作るか?
検討事項3 
児童生徒が過去の学年で使用していたデジタル教科書を使用し続けられるようにするための方策(ライセンスの期間や費用の在り方,使用のための仕組みなど)をどのように設計するか?
検討事項4
デジタル教科書やデジタル教材の連携を助ける学習eポータルなどのシステムと連携するために、デジタル教科書に共通に備えるべき規格やデジタル教科書における学習指導要領コード等のさまざまな情報の付与の在り方をどうすべきか?(例:検索にヒットするようにどのようなキーワードつつけるかなど)
検討事項5
デジタル教科書の使用によってたまった学習や操作の履歴等を記録する方法や保存場所どのようにするか?

2.「学習者用デジタル教科書普及促進事業」予算要求の概要

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概算要求の資料は上記資料の通りですが、筆者は以下のように自分なりに全体像を解釈しました。

▼ 令和4年度要求・要望額増加:前年予算額22億円→57億円
 ・既存の3事業は増額で、④と⑤が新規
▼ 最終的な目的
 学校現場におけるデジタル教科書の導入を促進したい
▼ 令和4年度にやりたいこと
 ・学校現場におけるデジタル教科書の導入をスムーズに促進するための実証研究と検証事業をおこないたい。
 ・全ての児童生徒がデジタル教科書を使うことができるようになるための制度や仕組みを設計するための実証研究と検証事業が予算の大部分を占める
 ・デジタル教科書が環境整備されたあとに、教育現場でしっかりと活用されるような下地づくりとして教師の指導力向上デジタル教科書制度の再設計事業が新規で追加された。

3.既存3事業(①〜③)の令和3年度と令和4年度の比較

実は、令和3年度においても「学習者用デジタル教科書普及促進事業」という名称の予算要求が行われています。令和4年度の①〜③は令和3年度と共通の事業となっており、④と⑤が新規事業ということになっています。①〜③であっても令和3年度と4年度では少々内容が異なっていますので、改訂されている箇所を見ていくことで令和4年度に重点的に取り組みたいことがわかるように思います。

①学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業

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令和3年度との違いは、対象者が全国となっている点です。今までは1人1台端末の環境が整っている学校が対象でした。また、「特別な配慮が必要な児童生徒が利用できるようにする」という文言は今年度新出の単語となります。

②学習者用デジタル教科書のクラウド配信等の設計に関する検証事業

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令和3年度で行われている同じ事業では、モデル地域を比較検討して望ましいシステムやコストの在り方など調査・決定という段階のものでした。
令和4年度では全国の通信環境を検証したり、配信環境などを開発・実装するための準備に予算を当てられるようです。本格的に導入の準備が始まるというイメージですね。

③学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究

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令和3年度と令和4年度について最も異なるのは、デジタル教材等と連携や学習eポータルの活用についてです。教科書や教材をスムーズに行き来できるような状態が作り上げられるかどうかを検証することになりそうです。

【感想】
少しずつではありますが、デジタル教科書の問題は着々と前に進んでいこうしています。このワーキンググループの資料を読んでいると「大変難度が高い事業だな」とつくづく感じます。特に、技術面ではデジタル教科書の仕様を合わせるというものが難度が高く、技術外の側面では、IDとパスワードの問題やデータの蓄積をどのように行うかというルール決めがとても大変な作業であると感じています。やろうとしていることについては、ぜひ実現してもらいたいことなので、うまく行くことを願っています。


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