「七人の侍」野武士考⑯野武士の組織分析
(「七人の侍」を見た前提で書いてます)
41人の野武士は組織として、高度に洗練された戦闘集団です。組織としても充実しており斥候がおり、全員騎馬持ち、種子島を3丁保持しています。
少なくとも2部隊制です。実際、野武士の最初の襲撃の時、垣根を見た野武士たちが即座に二手に分かれています。
「小道を通って北へ20騎、南へ13騎」
(後編00:32:15)
頭目自身、40人もの猛者をまとめるからには、なかなかの統率力とカリスマの持ち主といっていいでしょう。
個々人の剣術の実力は不明です。
ただ達人がいたとしても、乱戦では実力は発揮しきれなかったでしょう。実際、久蔵は個の戦いにおいては比類なき強さですが、野武士の隠れ家、最後の決戦という2度の乱戦では倒したのは1人ずつ、と意外と少ないのです。
ですが種子島の撃ち手の実力はスナイパーとして相当なので、総合的な戦闘レベルは高かったのではないかと思います。
一方、戦略面ですが官兵衛が、
「東・西・南 みなダメ押しに来てほうほうの体で引き上げた。あとはここだ」
久蔵「しかし物音ひとつせんが・・・」
官兵衛「いや、たしかに主力はここだ」
といって藁人形に鎧兜をかぶせて種子島を討たせるシーン。
それまでの戦いで頭目の実力を測り、必ず主力を集めスキをうかがっていると確信しています。まるで戦略で対話しているようです。
官兵衛は、局地戦、接近戦、一点集中攻撃に持ち込こんだことが勝因でした。これは戦力が圧倒的に劣る側が、勝利するための必須条件です。
一方、頭目は広域戦、遠隔戦を展開できないまま、戦いを続けてしまったのが決定的な敗因です。
勘兵衛と頭目では、戦略家としては飛車角落ちくらい差があったと思います。
とはいえ頭目も、菊千代が抜け駆けの功名で作った守りの綻びをきっちり咎めるあたり、決して無能な人物ではなかったと思います。
七人の侍と41人の野武士、別種のように描かれている彼らは、もともと同じ類の人間なのですから、野武士たちも野卑粗暴な人間の集まりではないのです。
*前回の記事で「俺は、この村のやつらを斬りたくなった」というセリフを平八の呟きとして取り上げましたが「それは平八ではなく久蔵である」とのご指摘がありました。確認したところなんと確かに喋っているのは久蔵で、平八は火箸を突き立てている所作だけでした!あまりにこの所作とセリフがピッタリなので、何十回も見ているのに気づきませんでした!この”発見”にも改めて触れます。
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