「七人の侍」野武士考⑬虜となった侍の末路


(「七人の侍」を見た前提で書いてます)

尋問を終えた物見の野武士、百姓たちが収まりがつかずになぶり殺しにしようとするシーン。

ここは、百姓たちの野武士への憎しみが特に際立ちます。

目も見えず、足腰の立たない老婆に鍬を持たせ、長老が「よし、せがれの敵(かたき)、討たせるだ!誰か、手をかしてやれ!」と叫ぶ。気圧されたように、侍たちは彼らを止めるのをやめてしまう。

それほど彼らの憎しみは深いのだ!と思わされるシーンです。

ですが、このシーンを野武士・侍側からみて見ると、別の側面が見えてきます。実は勘兵衛と侍達は、この野武士の命だけは、助けてやりたかったのではないでしょうか。

百姓たちを押し留めながら、勘兵衛が発する言葉、

「この男は虜(とりこ)だ。しかも何もかも白状して、このように命乞いするものをむげには斬れん!」(00:19:30)

これは侍の倫理です。その倫理を野武士に当てはめるのは、彼を侍扱いしているからです。

映画に尋問のシーンはありません。しかし仲間達の隠れ家まで白状したわけで、かなり厳しいものであったはず。

その過程で侍たちは、彼が浪人から野武士となったいきさつを聞いて、おのれの人生と重ね合わせたはずです。

勘兵衛がさきの言葉を発する前、百姓の出である菊千代を除く他の6人は、百姓たちを必死で止めています。

以下、これを伏線としての、単なる想像です。

ラストシーン、菊千代が死ぬ直前。小屋から抜け出した、くだんの野武士が、勘兵衛と鉢合わせる。必死で命乞いする野武士に対し、「百姓達に見つかる前に去れ!」と一喝する。

そんなシナリオは物語の盛り上がり上、即カットでしょう。でも不自然なシナリオではないのです。

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