「七人の侍」野武士論⑨斃れざま太刀を投げて、野武士を仕留めた久蔵
(「七人の侍」を見た前提で書いています。)
本論前の脇道です。
久蔵の必殺技?パンフに謎の解説
私がこの映画を初めて見たのは、高校生か浪人生の頃の1991年、「最後の劇場公開」と銘打たれての上映でした。
今回は物語のクライマックス、孤高の剣士・久蔵(宮口精二)が銃弾に倒れるシーンについてです。
撃たれた久蔵は刀を虚空に投げつけ、再び斃れます。侍としての美学、最後の魂の叫びといったものが、その挙動に表れており、心をうたれました。
ところが後に劇場で購入した公式パンフレットの解説文で、
「銃弾に倒れながらも、刀を投げ、最後に野武士を一人しとめたのは見事だった」
というような記述があり、「いや、絶対違う」と思ったの覚えています。
どなたの文章かは覚えてませんが、黒澤映画の解説を見開きでやるくらいですから、結構名の通った方のはずです。
そのパンフレットは実家に戻ればまだ有るかもしれませんが、ネットでなどで探したところ、
「七人の侍」完全オリジナル版ニュープリント公開記念
というもののようです。今もヤフオクなどで、結構出回っていて、割と立派な作りです。
あれは久蔵の必殺技だったのか?いや、記憶にないし、そもそも特撮モノめいたそんな倒し方、久蔵らしさとかけ離れている。
しかし、その事を当時一緒に見に行った友人の一人に話すと「投げて倒した論」を支持してきました。
彼は「そうじゃないと人数の勘定が合わない」と言い張ります。明確な反論はできませんでした。
いま思えば彼も14人いることか、問題の野武士が、頭の片隅に引っかかっていたのだと思います。
解説を書いた人も、無意識のうちに、帳尻を合わせたのではないでしょうか。今と違って、アナログの時代なので何度も映像を見ることは出来ず、記憶に頼るしか無かったのでは?と想像します。
深夜放送を録画したりVHSが出たり、繰り返し見ることが出来るようになったのは、ずいぶん後の話です。
やはり久蔵は虚空に投げたのみでした。
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