手関節の障害と制限因子について

柔道整復師、鍼灸師のコウタです。

最近ではコロナの影響もあり、筋トレを始める人が増えましたね。

個人的には身体を動かす事で肩こりや腰痛の改善、予防にも効果的な部分があるので、
ケガなく励んで欲しいと思っている
今日この頃です。

さて、今回は“手関節の損傷と制限因子について“
ということで

手関節は日常的に使う場面が多いので
皆さんも今まで1、2回ぐらいは手の症状に
悩まされた経験があるのではないでしょうか?


長時間の使用や同じ動作の繰り返し、
そして無理のある体勢で使用したりすると
痛みや可動の制限がかかることが多くある
部位です。


最近は、冒頭で触れたように筋トレに関連した
「トレーニングをしている時に手首が痛い」
「手首が使えなくて上手くトレーニングできない」という相談を受ける事も増えたので


手関節について書いてみようと思いましたので
ぜひご覧ください。


今回は手関節に関する内容を

1、手関節の解剖と各可動域
2、手関節における損傷の種類と鑑別
3、手の施術の際に見ていくポイント

の3部構成にてお伝えしていきます。

1、手関節の解剖と各可動域

*手関節の解剖

まずは手関節を構成する骨を紹介します。
①橈骨・ 尺骨
②近位手根列:舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨
③遠位手根列:大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨

(今回はこれより遠位の中手骨〜末節骨は省きます。)

そしてその骨で構成される「手関節」と呼ばれる範囲には

・遠位橈尺関節:車軸関節
    (橈骨+尺骨の遠位端)

・橈骨手根関節:顆状関節
 (橈骨+舟状骨、月状骨、三角骨で構成)

・手根中央関節:蝶番あるいは半関節
 (近位手根列+遠位手根列)

があります。

*可動域について

『橈骨手根関節で起こる運動は
掌屈(屈曲)、背屈(伸展)、尺屈(内転)、橈屈(外転)
この4つの動きを組み合わせることで円運動が可能になる。
正常関節可動域 (日本整形外科学会より引用)
【手首(橈骨手根関節)】
〇掌屈(屈曲)・・・90°
〇背屈(伸展)・・・70°
〇尺屈(内転)・・・55°
〇橈屈(外転)・・・25°』

とありますが、更に細かく見ますと

『1、手根中央関節
手根骨近位列を受け皿として遠位列が動く関節である.関節裂隙の形をみれば,橈尺屈方向には動かず,掌背屈に関与する関節であろうと想像はつくと思う(図1B).この関節で手関節背屈の約40%,掌屈の約60%を担っている.実際には回転軸が掌背屈方向に対して約45°傾いており(図1Bの断面図),ダーツの矢を投げるときの手関節の動き(橈背側から尺掌側へ)として「ダーツスローモーション」と呼ばれる2).
2、橈骨(尺骨)―手根関節
手関節背屈の約60%,掌屈の約40%を担っており,実は純粋な橈尺屈の動きはここでもあまり生じていない.ここではダーツスローモーションの回転軸に対して90°の回転軸上で動き(逆ダーツスローモーション),手根中央関節のダーツスローモーションとの合算で見かけ上の掌背屈・橈尺屈が生じていると考えれば理解しやすい(図1B).
3、遠位橈尺関節と TFCC(三角線維軟骨複合体)
尺骨頭の周りに回旋する動きは遠位橈尺関節が担う.その回旋軸は尺骨茎状突起の基部(尺骨小窩:ulnar fovea,図1Bの●)を通り,ここに掌側・背側の橈尺靱帯と尺骨手根骨間靱帯が付着して橈骨を回転軸に引き付けている.これらの靱帯に囲まれて三角骨と尺骨頭の間の空隙を埋めるように,膝の半月板のような軟骨(軟骨円板)が存在する(図1Bの).これらの靱帯と軟骨円板を併せて三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex:TFCC)という.』

手関節の背屈・掌屈・橈屈・尺屈の動作は手根中央関節と橈骨手根関節の動きの合算によりスムーズな手関節の可動域が確保されており、

特に手根中央関節における特徴的な動きとして
”ダーツスローモーション“という
「橈-背屈→尺-掌屈」の動きは
文字通りダーツを投げる手関節の動きですが

日常では靴紐を結ぶ動きやハンマーを叩く時の動作など生活に係わる動作も多くあります。
スポーツであれば、バドミントンやテニスの
サーブの時にも使われます。

特に橈-背屈はコップを持ったり、字を書く時にも
必要なポジションなのでここが使えなくなると
ADLの低下を招きます。

加えて遠位橈尺関節の回内・回外の動きは
洗顔をしたり、今ならスマホを見たりする
動作で使う場面が多くあるので、
動作不良になるとより多くの日常生活動作が
制限される事にも留意しましょう。


2、手関節における損傷の種類と鑑別

ここでは手関節におけるケガの種類を挙げていきます。
痛みや動作不全が見られる場合は
いつからどういった動作で不具合が出たか
問診をした上で
各種検査で鑑別していくことをオススメします。

特に転倒により手を着いた後や重たいものを
持った後から痛む場合は特に注意が必要です。

その中で、検査により骨や組織に損傷が見られる場合は
不用意に触らずに病院で画像診断をしてもらう必要があります。

・背側の痛み

手関節周囲の骨折
(舟状骨骨折、月状骨骨折、コーレス骨折など)
→舟状骨骨折は“嗅ぎタバコ窩”を押すと痛む場合
→月状骨骨折は手根中央部の圧痛がある場合
→コーレス骨折は橈骨の遠位端での変形、圧痛が
ある場合、それぞれの骨折を疑う。

キーンベック病(月状骨軟化症)
→背屈状態で手のひらに重たい物を乗せた時に痛む場合は損傷の可能性がある。

・尺側の痛み
TFCC損傷(三角繊維軟骨複合体損傷)
尺骨突き上げ損傷
→尺屈状態で回外すると尺側の手関節が痛む場合は損傷の可能性がある

・橈側の痛み
ドケルバン病(母指周囲の腱鞘炎)
→親指を握って、尺屈した時に手関節の
橈側面に痛みがでると可能性は高い
(アイヒホッフテスト)

骨や靭帯に損傷が疑われる場合は
使用を中止して診察してもらうことを
オススメします。


3、手の施術の際に見ていくポイント

以上のような大きな損傷が見られない場合は

・手関節に関連する筋肉の影響(伸筋と屈筋の相反神経抑制が働きにくい状態)
・手根骨の配列や遠位橈尺関節のズレや引っかかり

などにより可動域不良や痛みが生じる可能性が
あるので

主動作筋の弛緩や関節の調整などで
状態の改善を狙っていきます。


もし、手関節周囲の施術で変化が乏しい場合は
肩(上肢帯)の左右差を確認してみて欲しいポイントです。

個人的な意見ではありますが
患側の上肢帯が下垂している状況が多くあり、
上肢帯の位置を健側に合わせることによって
手関節の可動域が改善するケースがあるので


気になる方は試してみてください。

*終わりに*

手関節はその部分を鍛えるという事は
あまりないですが、
手が使えないとできるトレーニング種目は
かなり限定されてきます。

たかが手と思う方もいるかも知れませんが
とても大事な役割を担っている箇所なので
大切に使っていきましょう!


 参考文献

・萩平 哲/編 レジデントノート増刊 Vol.23 No.8今こそ学び直す!生理学・解剖学 あのとき学んだ知識と臨床経験をつないで、納得して動く! 羊土社 2021年07月20日発行 
 https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758116664/206.html

・McDavid SPORTMED LABO 手首/手指の解剖学 https://www.mcdavid.co.jp/sportmed_anatomy/wrist-finger/

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