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Pixies 『Where is my Mind』

大学4年の時、三軒茶屋のキャロットタワーでテレアポのアルバイトをしていたことがある。

時間帯が13:00-21:00の間で、働く時間も曜日も比較的融通がきくし、時給も高かったので、私のような大学生だけでなく主婦や普段何してるんだろうなと思うようなおじさんがいたりした。

そして、バンドをやっている人も多かった。

バイト始める時期が同じで、研修等を一緒に受けた人がバンドでギターボーカルをやっていた。名前はJさんといった。バンドマンへの憧れが強い俺は、たまたま着ていたWeezerのTシャツを武器に話しかけて仲良くしてもらった。

僕が「ニルバーナとか聞きます」というと、Jさんは「懐かしいね!」と言って笑った。僕が「そしたらJさんはどんなの聴くんですか?」と言ったら「ピクシーズとかソニックユース」とさらに懐かしいバンドを言った。

その後、Jさんのバンドがライブをするというので、高円寺のライブハウスに誘ってもらった。おそらく50人も入ればパンパンの小さなライブハウスだった。

5バンドが出演している中のトリが彼のバンドだった。4人組バンドで、ドラムは女性だっただった。

ギターボーカルといえば、真ん中で演奏するのかと思っていたのだけど、Jさんは右端で隠れるように弾きながら歌っていた。それがとてもカッコ良かった。

終わった後に「なんで真ん中じゃないんですか」と言ったら「真ん中にはうちのイケメンがいるから」と言っていた。確かに真ん中には背の高いすらっとしたギラリストが立っていた。「俺のギターがイケメンのインパクトを超えたら真ん中にいくよ」と言っていた。俺はもう既に超えていると思ったけど恥ずかしくて言えなかった。そして、とてもカッコよくて感激したこともうまく伝えられなかった。感動をすぐ伝えることは本当に難しい。

その後何度か見させてもらったが、Jさんは相変わらず右端だった。時々真ん中へ、前へと動き回りながらギターをかき鳴らしていた。あぁ、もうすぐ超えるのだな、と思った。

バイトを辞めてからは、あまり会うこともなくなって高円寺のライブハウスに行くことはなくなったのだが、その3年後くらいに久々に誘われたので、ふらっと行ってみた。

そしたらなんとJさんは真ん中で歌っていた。ライブ後にJさんに「イケメン越しましたね!」と俺にしては珍しく興奮して声をかけたんだけでど、Jさんからは「あぁ、ギター抜けて新しい人になったんだ」と言われた。

ギターは中の中くらいの人が弾いていた。

Pixies 『Where is my Mind』

Your head will collapse
But there's nothing in it
And you'll ask yourself
Where is my mind?

(お前の頭は崩れ落ちる
でもそこには何もない
そして自分自身に問いかける
「俺の心はどこだ?」)

この曲を聴きながらキャロットタワーに通っていた。三茶の地下鉄の駅の階段を上がり、見上げるとキャロットタワーはいつも崩れ落ちてきていた。

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Koshi Kagawa
読んでいただきありがとうございます。