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阿部共実『空が灰色だから』1巻(秋田書店)

 阿部共実『空が灰色だから』1巻再読。
 ああ、やっぱりこれはいい。
 まず、ギャグマンガ以外で「マンガの短篇集」の傑作って意外と数が少ないと思う。『ゴルゴ13』『ブラック・ジャック』『ギャラリーフェイク』みたいに主人公がびしっと決まっていれば連作として成り立つのだが、本作のように毎回登場人物が入れ替わる傑作マンガ短編集って案外思いつかないが、これは見事にやってのけていると思う。
 全篇を通じて「青春というなんかぐぢゃぐぢゃしたもの」がこれでもかと詰め込まれている。そして「コメディ」で終わるのか、「ホラー」で終わるのか、全く予想がつかないので読んでいる最中はらはらしっぱなし。
個人的に大好きなのは「お前は私を大嫌いなお前が大嫌いな私が大嫌い」「今日も私はこうしていつもつまらなそうな顔してるあいつとつまらない話をして日を過ごしていくのだ」「ガガスバンダス」の3篇。って書いてみて思ったけど、この作者の言語感覚って突出しているよなあ。
 しかしこの一冊、もう10年以上前の作品なのか、信じられない。最初に読んだとき妻と「これすごい、これすごいよ!」と驚嘆しながら読んだものだった。『少年チャンピオン』という雑誌はたまにこういうものすごい作家を掘り出してくるなあとつくづく感心する。



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