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漁港の肉子ちゃんと住民票/就学問題

いつも明るくおっちょこちょいの母・見須子菊子(みすじきくこ)。
可愛いくてしっかりものの娘・見須子喜久子(みすじきくこ)。
関西から→日本海側の(架空の)漁港に移り住んだ母子の生活を描く。

幼少期を中東で過ごしたという背景もユニークな作者が、
東日本大震災前に旅した石巻市や女川町で観た景色から
イメージを膨らませて描いた創作小説の映画化。

人が良すぎる(という表現では足りない?)母・菊子は、
男運に恵まれず街から街へと流れ渡っていく人生。
いまでは漁港に停泊する船に母子二人で住み、
焼き肉屋の名物アルバイトとして生計を立てる日々。

笑いあり、笑いあり、涙ありの明るい雰囲気の体(てい)ですが、
ストーリー自体はなかなかにハードボイルドです。
この辺りが物語の醍醐味なので内容の話はこの位で...
この親子がリアルに身近にいたら人目にはどう映るのだろう。とか。

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映画を観ながらぼんやり浮かんだのは船上生活に対する興味。
登録されているだけでも1億2000万人超えの日本ですから、
こういった生活をされている方々も一定数はいられることでしょう。
キャンピングカーや乗用車で生活する方もきっと同様ですね。
ネットで調べると、どうやら船上生活では住民票は取得できないらしい。
なので色々な行政サービスを受ける・納税するというときには、
親戚・友人の住所地に住民票だけ置かせてもらう技もあるみたいです。
ただこれは、円満な繋がりがある状況でないと難しいですよね。
親戚・家族いない、友人も頼れないというのは時々聞くことがあります。
物語の中では焼き肉屋の経営者のおっちゃんが親身で近しいので、
楽観的妄想をするなら、このおっちゃんが引き受けてくれているのかな?

そして娘の喜久子はその"船の家"から毎日小学校に通っています。
住民票登録されていない児童は小学校に通えるのか?
太平洋戦争前後の昔の日本では横浜や名古屋といった港町には、
仕事の都合で船上生活をする家族や子供たちが多くいた様です。
 http://horimachi.jp/akaibu/data/190129/11.pdf
であれば見須子家でもなんとかなっているのでは?

文科省では次の様な方針を掲載していました。
『市町村教育委員会は、住民基本台帳や戸籍に記載されていない学齢児童生徒が域内に居住している事実を把握した際、直ちに当該児童生徒に係る学齢簿を編製するとともに、対面により丁寧に就学の案内を行うなど、住民基本台帳や戸籍に記載されていない学齢児童生徒が就学の機会を逸することのないよう取組を徹底することが必要です。
 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/1422230.htm

なんとも救いがある制度だなと感じました。
文言があっても。実際の運用がどうなっているのかが大切ですが、
それならば喜久子は周りの方々のどんな導きで通学できているのでしょう?

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図らずも、難しい人生を歩んでいる方々が、
自分の状況にぴったりの制度に行きつけば良い。
当てはまる制度自体がない場合もあると思います。

もしもこの親子が身近にいたならば、
行政や市民はどんな手を差し伸べているのだろう?
そんなこと考えながらウルっと観終えました。

#漁港の肉子ちゃん
#船上生活者
#住民票がない小学生児童
#ひとり親家庭


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