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イモムシ、ひばりと出会う。『わたしはイモムシ』原画展が静岡のひばりブックスさんに出張

2021年夏、イモムシ画家・桃山鈴子さんの原画展が静岡市のひばりブックスさんで開催されました。
桃山さんにとって、東京以外では初めての原画展。編集者の私は残念ながら足を運ぶことができず、noteでのレポートがすっかり遅くなってしまいましたが、桃山さんのおみやげ話や展示風景をお伝えします。(李)


静岡のすてきな書店、ひばりブックスさん

まず、ひばりブックスさんの紹介をさせてください。
「HiBARI BOOKS & COFFEE ひばりブックス」は、太田原由明さんが2020年9月に静岡市葵区にオープンした新刊書店です。カフェとギャラリースペースを併設しています。

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文学、ノンフィクション、人文書、デザイン書、画集、絵本など、店主の太田原さんが選書した本と、おいしいコーヒー。そして本の内容と連動した展示を行なっているギャラリー。まだ開店して日が浅いですが、静岡の本好きな人々を惹きつける場となっています。
2021年9月に1周年を迎え、「時代に合わせた形を模索しながら、町の本屋としての機能を果たしていきたいと考えています」と太田原さん。
桃山さんとは、zineをお店で扱ってもらうようになってからご縁が始まり、工作舎から『わたしはイモムシ』が出たときも静岡新聞紙上で書店のおすすめとしてご紹介してくださいました。

ひばりブックスさんでの原画展を記念して、桃山さんはイモムシとひばりのコラボレーション絵を作成!
題して、イモムシ、ひばりと出会う。

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↑出会ったとたんに食べられてしまいそうなトビモンオオエダシャクの幼虫ですが、イモムシにはどんな出会いが待っているのでしょうか?


初日から嬉しい出会いが

桃山さんとパートナーのヒロミチイトさんは、原画展初日の8月24日午前中から設営開始。設営中、脚立から落ちた金槌がミチイトさんの頭を直撃するというハプニングもありましたが、さいわい大事にはいたらず。

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ここから桃山さんのコメントです。
「コロナ禍にもかかわらず、初日からいろいろなお客様が見にきてくれました。太田原さんに本のリクエストをしにくる方や、地元のフリーペーパーの編集者さんも見えました。この本屋さんを好きでいつも来ている、そんな感じのお客様が多かったです。
嬉しい出会いもありました。以前、神奈川で拾った5匹の捨て猫のうち、2匹をもらって下さった方と再会して、お花をいただききました。
それから、たまたま用事があって静岡を訪れていた京都からのお客様が、イモムシの絵を見て涙を流して感動してくださって。私までもらい泣きしそうになりました」

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初日に取材してくださった静岡新聞さんの記事はこちらから。
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/950155.html
自作のオオムラサキの幼虫のお面をつけて新聞に載った桃山さん。この記事を見て来店してくれたお客様も多かったのでは。


鑑賞と観察

桃山さんが在廊したのは初日と最終日だけでしたので、会期中のことをひばりブックスの太田原由明さんにお聞きしました。
「ひばりブックスはどちらかというと本好きの大人向けの本屋なので、ふだんは小学生くらいのお子様が来ることはそれほど多くないのです。
でも「わたしはイモムシ」の展示期間中は、夏休み中ということもあってか、小学生の女の子とお母様でご来店くださる方が何組かいらっしゃいました。声をおかけすると昆虫好きの女の子なのだそうです。点描で描かれた桃山さんの作品を、ルーペを使ってじっくりと鑑賞していました。
これはうれしい驚きでした」

桃山さんは、原画展ではルーペを会場に置いて、絵の細部をじっくり見ていただくようにしています。
ひばりブックスさんでも、ちいさな昆虫好きがルーペを片手に一生懸命見てくれたようです。桃山さんがイモムシを顕微鏡や拡大鏡で観察しているときの驚きや感動が、彼らにも共有されたのではないでしょうか。

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イモムシと人が出会う場所

最終日の9月5日。お天気にも恵まれた日曜日で、多くのお客様が訪れてくださいました。
この日、桃山さんは在廊の合間を縫って、ひばりブックスのご近所にある「百町森(ひゃくちょうもり)」という絵本とおもちゃの店を訪問しました。『わたしはイモムシ』監修メンバーでもあるファーブル会のTさんがおすすめしてくれたお店です。

絵本の品揃えもさることながら、ドイツの木製のおもちゃのすばらしさに感激して店主の方とお話しした桃山さん。
「さっきサトイモの葉っぱに黒くて大きなイモムシがいたんだけど、なんの虫かわかる?と聞かれて、たぶんセスジスズメだと思いますとお答えしました(笑)。僕の疑問に答えてくれる人が現れるとは! 今から原画展を見に行くよ、とおっしゃって、すぐにひばりブックスさんにいらして下さいました」
1979年にオープンした百町森は、ひばりブックスの大先輩のような存在。
歩いて10分ほどの距離に、個性的な老舗とニューフェイスの本屋さんがある静岡の街、編集者の私も行ってみたくなりました。

2021年8月は、全国的に新型コロナの感染が広がり、静岡県では20日から緊急事態宣言が出されていました。ひばりブックスさんも桃山さんも不安を抱えながらの開催となりましたが、細心の感染対策と密にならない展示、お客様のご協力によって、無事に会期を終えることができました。

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在廊した2日間は、桃山さんにとって、さまざまな人との対話、驚きや喜びに出会う久しぶりのひとときだったようです。

桃山さんのコメントです。
「町の本屋さんの存在意義を改めて感じました。ひばりブックスさんの存在が人々の精神面を支えていることをとても感じたんです。どんなお客様にも平等に耳を傾け、望む本をお届けしようとしている太田原さんの姿勢にも心を打たれました。
私自身、幼少期から本を逃げ場にしていたし、本によってどんなに救われたことか分かりません。でも子供の頃の近所の本屋さんはすべての本にビニールがかかっていて立ち読みもできませんでした(笑)。こんな本屋さんが私の住んでいた町にあったならよかったのになあと思いました」

桃山さんがひばりブックスで出会った本はこちら↓

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最後に、太田原さんから『わたしはイモムシ』へのコメントです。

「好き」をつきつめるということ。
とことん対象を「見る」ということ。
人間よりはるかに短いライフサイクルを繰り返す虫たちを観察し続ける桃山さん。
この本には「ロケットに乗らなくても行ける宇宙がある」という桃山さんの言葉が出てきますが、何重にも塗り重ねられた点描には宇宙的な広がりさえ感じさせられます。
イモムシに美しさに魅了されるだけでなく、自身の死生観の変容すら感じさせる文章に打たれました。

太田原さん、イモムシと人との出会いの場をつくってくださり、ありがとうございました! ご来場くださったお客様、ありがとうございました!

『わたしはイモムシ』は引き続き、ひばりブックスさんでお取り扱いいただいています。

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ひばりブックス
https://hibari-books.com/
https://www.instagram.com/hibari_books/

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