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こうさぎの読書日記マガジン

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こうさぎが書いた、本の紹介記事を集めました。
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#視覚障害者

目が見えない彼女と、未来が見えない僕/大林利江子「副音声」

「副音声」は、大林利江子さんの、純度100%の恋愛小説です。 主人公の「僕」は、最後のチャンスの司法試験に向けて勉強をしている、引きこもりの男性。彼は、アルバイトとして、視覚障害者を音声でサポートする「副音声制度」のモニターになります。彼が副音声としてサポートする視覚障害者の女性は、来る日も来る日も、画面の向こうで淡々とした毎日を過ごしていました。彼は、次第に彼女のことが気になり始めていきます。 この本はこんな人におすすめ ①視覚障害者について興味がある ②感動の恋愛小

『見えない人』が『見ている世界』とは/伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」

突然ですが、「目の見えない人」と聞いて、どのようなイメージをもちますか? 白杖を持って歩いている。 盲導犬を連れている。 点字が読める。 嗅覚や聴覚、触覚が抜群に優れている。 様々なイメージがあると思います。 では、「目の見えない人」は「特別な人」なのでしょうか? その答えをくれるのが、伊藤亜紗さんの「目の見えない人は世界をどう見ているのか」です。 こうさぎは、小川糸さんの「とわの庭」を読んだのがきっかけで、本書を手に取りました。「とわの庭」の主人公は視覚障害者なのですが、

世界はこんなにも、明るく美しい/小川糸「とわの庭」

「とわの庭」の著者、小川糸さんは、「食堂かたつむり」や「ツバキ文具店」、「つるかめ助産院」など多数の人気作品を発表しており、「ライオンのおやつ」は本屋大賞にもノミネートされました。あたたかで、ちょっと不思議な、優しい世界観が魅力の作家さんです。 主人公のとわは、目が見えない女の子です。学校にも通わず、外にも出ず、母親の愛を一身に受けながら暮らしています。とわの世界には、家と庭と、母と、週に一度日用品や食べ物を運んでくれるオットさんしかいません。けれど、そんなある日、母親がい