マガジンのカバー画像

こうさぎの読書日記マガジン

39
こうさぎが書いた、本の紹介記事を集めました。
運営しているクリエイター

#読書感想文

もふもふ恋しい季節のおともに/鈴森丹子「おかえりの神様」シリーズ

「ただいま」に「おかえり」が返ってくる。それって、すごく安心する。 「おかえりの神様」シリーズは、鈴森丹子さんの、神様と人間の交流を描いた物語です。 人生の中で出会う、悩みごと、憂いごと、迷いごと。 そんな葛藤を抱える彼らが出会ったのは、可愛い小動物の姿をした、個性的な神様でした。 特別なことは何もしてくれないけれど、今日の出来事や悩みごとに耳を傾けてくれる神様たち。もふもふが癒しをお届けする、ほっこり連作短編集です。 この本はこんな人におすすめ ①癒しが欲しい ②あ

命を紡ぐ者の葛藤/知念実希人「ひとつむぎの手」

命を紡ぐ、ひとりの心臓外科医の葛藤と成長を描く傑作医療小説。 「ひとつむぎの手」は、知念実希人さんの本屋大賞ノミネート作です。 日々の激務に耐える、心臓外科医の平良。キャリアへの不安が膨らむ中、教授から三人の研修医の指導を任され、そのうち二人を入局させれば憧れの出向先に行くことができる、と言われる。 医局を騒がせる怪文書、心臓外科が抱える多くの問題、研修医たち、そして患者の事情……。ひとりの外科医の成長を描く、感動の医療小説です。 この本はこんな人におすすめ ①医療小

今、蒼い時/山口百惠「蒼い時」

山口百恵さんは、もはや説明不要の、言わずと知れた昭和を代表する歌姫であり、女優です。 俳優の三浦友和さんとの結婚を機に、21歳で惜しまれつつ引退しましたが、その引退コンサートは今も伝説になっています。 「蒼い時」は、そんな百恵さんが、歌手の山口百恵としてではなく、一般人の山口百惠として綴った自叙伝です。百惠さんの出生、生い立ち、恋、仕事や芸能界引退についてが赤裸々に語られています。 この本はこんな人におすすめ①昭和のアイドル、懐メロが好き ②女性の生き方について考えたい

“普通”を問い直す、童話のような転生譚/今村夏子「木になった亜沙」

誰も私の手から食べてくれない。 そんな悩みを抱える少女が、木に転生した。 本作は、表題作「木になった亜沙」の他、「的になった七未」「ある夜の思い出」の三編からなる、不思議で奇妙でダークな短編集です。 表題作は、自分の手から誰も物を食べてくれない、という少女・亜沙が杉の木に転生する物語です。亜沙はやがて割り箸になって若者と出会います。 私は独特の世界観が癖になり、一気に読み進んでしまいました。ダークな雰囲気と奇妙で不思議な展開から目が離せません。 この本の著者の今村夏子さん