マガジンのカバー画像

こうさぎの読書日記マガジン

39
こうさぎが書いた、本の紹介記事を集めました。
運営しているクリエイター

#芥川賞

“普通”を問い直す、童話のような転生譚/今村夏子「木になった亜沙」

誰も私の手から食べてくれない。 そんな悩みを抱える少女が、木に転生した。 本作は、表題作「木になった亜沙」の他、「的になった七未」「ある夜の思い出」の三編からなる、不思議で奇妙でダークな短編集です。 表題作は、自分の手から誰も物を食べてくれない、という少女・亜沙が杉の木に転生する物語です。亜沙はやがて割り箸になって若者と出会います。 私は独特の世界観が癖になり、一気に読み進んでしまいました。ダークな雰囲気と奇妙で不思議な展開から目が離せません。 この本の著者の今村夏子さん

“今”を映し出す芥川賞受賞作/宇佐見りん「推し、燃ゆ」

推しが炎上した。ファンを殴ったらしい。 「推し、燃ゆ」の著者・宇佐見りんさんは、デビュー作の「かか」で三島由紀夫賞を最年少で受賞し、本作では芥川賞を受賞しました。今、注目の作家さんです。 本作の主人公は、あかりという女子高生です。男女混合アイドルグループ「まざま座」のメンバー・上野真幸を推しています。あかりは、推しを“解釈”することに心血を注ぐことを生きがいにしており、「推しは私の背骨」とまで語ります。しかし、高校生活もアルバイトも、病気のせいで上手くいっていません。そん