30秒失敗してダメなら1時間失敗する広告はどうか?~かずのこプロのQ配信に見る失敗の面白さ~
広告の中でも失敗する広告(以下、失敗広告)はとかく嫌われる物であるが、そもそもゲームにおける失敗広告は何故こぞって行われるのか。
理屈上は「失敗しているシーンを見ているとイライラして自分でやりたくなるから」「明らかに答えが分かるのにその答えをなぞれないから」……などが出て来るが、本当にそうかは疑問に思われがちである。何故なら大半の人間にとって、広告自体がメインの映像を邪魔されるストレスフルな存在でしかないからだ。
そんなストレスを与えてダウンロードさせる欲求を惹起させる広告の成功例らしき配信がある。
かずのこプロ(以下、かずのこ)のQ REMASTERD配信だ。
・失敗するプロと広告は何が違うのか
上記のQ9の時点で約1時間10分同じ問題にチャレンジし続けてはダメを繰り返しているのだが、配信中に同じような失敗を繰り返す絵面が続く事は覚悟の上でご覧頂きたい。この「同じような失敗を繰り返す」というところがミソで、初見時は指示コメントを見ていないのである。
配信者としてこういうゲームをする場合、あまり同じ場所で詰まるようなら別の問題を先にやるとか、あるいは視聴者に助けを求めるとか他にもやりようがあるだろう。しかしかずのこが視聴者に助けを求めるのは少なくとも一回クリアしてからだし、やっている問題を諦めて別の問題に手をつけるのは第一回だけだった(第二回配信時点)。
この同じような失敗を延々と繰り返す様はどこかで見た事が無いだろうか?
そう。Hero Warsである。
同じような失敗を延々繰り返す様は明らかに失敗広告の手口であるし、この失敗広告らしき事を延々と繰り返している様は真面目に見ていると気が狂いそうになる。
失敗広告をネタに出来るのはそれが営利目的の広告だと分かっていて、あっても2分程度の短い尺の問題である事もあるだろう。これを実在のプロゲーマーが真剣にやって1時間なんだから、「えっ、この人大丈夫か?」と初見の方は心配してしまっても仕方が無い。しかし彼がかつてプレイしていたダンガンロンパ辺りを見ていればこれくらいは平常運転だと分かるので、常連は心置きなく「かじゅ?」だの「てこの原理でCC優勝出来るのかよ!」などとコメントを打っている。
それでもかずのこのQ配信は同接3000人程度を誇る中々の人気コンテンツである。長尺失敗広告とも言われるかずのこ配信と失敗系広告を比較し、何がこの好感度の明暗を分けているのか確認してみようではないか。
なお大前提として「見たい動画の前に挟まるから邪魔」「自動翻訳の日本語が不快」辺りの理由は割愛します。ゲームは面白いけど実況はつまらなかったみたいな話も除外する。
①:少なくとも本人は真面目にやっている
広告は商品を売りたいからわざとあり得ない失敗を重ねているが、かずのこは真剣にゲームをやっている。まずここは第一に評価されるべきポイントであると思う。
かずのこは同じ失敗を繰り返しているとはいえ、正解にたどり着くべくトライ&エラーを繰り返しているのは間違いない。それに、Qというゲームの性質上同じような線を引いても結果が異なってくる場合がままあるため、数回程度同じ解法を試すのは実際にプレイしても必要な事だ。
それに失敗広告は広告を作っている人間の顔が見えない上に皆が嫌っているから好き放題中傷しても良いように見られている所があると思うが、かずのこは実在する人物だからネタを超えた誹謗中傷は普通に犯罪になる。真面目にやっている人間を必要以上に攻撃するのはマズいというストッパーを作れるのも著名人を活用した広告の一つのメリットだと言えよう。
②:1時間かけようが最後には正解までプレイする
配信の第一回こそクリアを諦めた問題があったが、第二回で全てクリアしている。何時間かけようが絶対に正解までやる場合、そこまでにかかった失敗の時間は成功の達成感を共有するきっかけになる。
配信で共有されるのはストレスだけでなく、成功の喜びもあるのだ。時間をかけて失敗例を延々見せられた上に成功例を見た時のカタルシスは大きく、コメントの流れも早くなる。この瞬間は配信であっても間違いなく面白い。
その点広告は30秒、長くても5分程度しかやれない。1時間も同じ失敗を繰り返して正解に近づいたり離れたりする広告など不可能というか、何の愛着も無い存在にそこまで時間をかけられる人はほぼいない。それにどんなに失敗を共有されようが、他の人物とそれを共有する事もすぐに出来ないし、成功例だけを共有されても「で?」という話になってくる。
あるいは広告の場合成功に次ぐ成功の後に失敗して「もういい!俺が片付けてやる!」の流れを想定しているのかもしれないが、突然数を比べる事すら出来なくなって失敗するのは逆におかしな話に見える。
失敗例の後に成功例らしき物を見せようとする広告自体はパニグレやシャイニングニキなどがやっていたけども、それも20秒程度しか失敗出来ない分効果的かは怪しい。
こうなるとそもそも広告が本来の目的を阻害する物として発展してしまったのが最大の問題だと思われるが、一旦その話は置いておく。
③:コミュニティ内で共有できる話題性・内輪ノリがある
かずのこの配信にはしばしば配信内だけで通じるような語録が登場する。この辺りはかずのこリスナーこと「文字」のすごい所なのだが、彼がクリアするためにしばしば使う形状は技名のように扱われているのだ。
この配信タイトルにもなっているフックやT字、重ね塗りした固形を示すクンツァイト(格闘ゲーム『BLAZBLUE』のナインの必殺技から来ている)など、Q配信だけで様々な語録が生まれた。配信内で使われる語録の数はかなり多く、とりあえずその配信内で頻出する単語を擦っておけばすぐ一緒に盛り上がれる。
Qでヒーローが出るとたまに書かれる「なーにーがーヒーローだ!」もワンパンマンのカニランテから来ているので、ずっと継続して見ている人からすると面白いポイント。だが別に昔の語録を知らなくても、とりあえずその配信で生まれた「フック」とか「クンツァイト」とかコメントに書いておけば話題に混じれるお手軽さは素晴らしい。
この辺の語録のバランスは結構難しい所があるが、つまらない失敗系広告には共有できる話題性が足りない可能性がある。
その点おねがい社長は「なんと隠し10連ガチャ!」に始まる語録ラッシュを作ったのは良い内輪ノリを作り、話題性の獲得に寄与したなあと思います。
失敗する事を広告の目的にするのではなく、話題にする事を目的にして失敗しないと広告としても失敗してしまう。 覚えておきましょう。
・公式のTwitterの告知も要チェック
ここまでの内容はかずのこという人物の特異性、製作者曰く「逸材」と呼ばれた配信者だからこそ出来た配信の工夫であるが、別に逸材じゃなくても出来る告知として『Q』公式ツイッターの立ち回りは見ておくべきでしょう。
どこから見つけているのか分からないが、かずのこ配信だけでなくVtuber配信、一般配信者の配信までだいたい公式ツイッターが見つけて簡単なコメントをつけている。
案件でやっている人と趣味でやっている人の割合までは調べきれていないが、趣味での配信も公式Twitterで取り上げれば実質プロモーションに出来ちゃうのは要チェック。そもそも案件を頼んでいない可能性もありますけどね。
Q配信は妙に人の集まりが良いのも、公式Twitterからの流入があるんじゃないかなあ。これくらい人を集めていたのはアプデ直後のドラゴンボールブレイカーズやダンガンロンパなど、中~大ヒットレベルの配信であるように思う。ワンパンマンのような激バズり配信はまた別だけども。
・総評
散々書いたけどかずのこプロの格ゲーの実績は本物なんですよ。大体のゲームはすぐに上手くなるし、逆にQとかPortalみたいなゲームが特に変な行動を見せるから面白いって話です。
何だかんだ100問目クリアまではやるらしいので、今日からでもかずのこプロの配信を見てほしいなと思います。失敗広告が何故効果があるのか、その理由の一端を感じられるはず。
最近は切り抜きも熱心に作っているので是非。
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