【教育歳時記】用語集の編集を行って

本日もよろしくお願いいたします。現在、中学社会の用語チェックを行っているところですが、そこから気づいたことなどをお話しできれば、と思っています。僕が教科書のチェックを行っていき、用語集チェックを行っていくうえで気になったことを現段階でお話しできたら、と思います。

無料公開です。最後までお付き合いよろしくお願いいたします。

■用語集のチェック

まず、僕が現在行っている用語集チェックをするときに用いているものを公表します。こちらは、7/27現在で使っているものです。

➀教科書
地理:東京書籍
歴史:東京書籍、教育出版、帝国書院、山川出版社、日本文教出版
公民:東京書籍

これらに加え、歴史は育鵬社と自由社(自由社の正式採択は2022年より)を用いています。ただ、この2教科書は現在手元にないため、教科書展示会の延長戦で閲覧してチェックをしています。なお、自由社は2022年の新採択で改めてチェックを行うため、多少内容がズレる可能性はあります。その辺はご容赦ください。地理と公民はほかの教科書がまだ手元にないため、精度はまだ低いです。手に入り次第解析を進めたいと思います。
2022年入試に間に合わせたいと思いますので、出版会社の関係者でご協力していただけるところがございましたら、公式Twitterか公式FacebookのDMにてご用命ください。また、購読者のサポートなども合わせてよろしくお願いいたします。

②用語集
「詳説中学社会用語&資料集」(受験研究社)
「中学社会用語・資料集」(旺文社)

用語集については、他に「中学社会用語を一つ一つわかりやすく」(Gakken)もありますが、今回は使用していません。シェアの高い2つの用語集を使いました。

③入試問題集
各都道府県教育委員会公開の入試結果などをHPを中心に取り上げています

こちらについては、主に各都道府県教育委員会が発行している入試結果などをHPに公開されているものから随時取り上げています。そこでは正答率・出題回数などをもとに、用語集の頻度、教科書頻度との整合性を図っています。この解析では私立入試は含んでいません。
ここまで行っている用語集は他に例がないと思います。ぜひ活用してください。

■衝撃の事実

先日、僕の公式Twitterにて発信したのですが、今回の用語チェックを行っていくうえで恐ろしい事実が発覚しました。

それは、地理・公民と比べて歴史の用語の数が約3倍ほど違うことです。ルーズリーフで地理が21枚、公民が19枚に対して、歴史は35枚になりました。もちろん、両面使用しているため、この数に2倍しても、とんでもない数になることが判明しています。1枚あたりにまとめた語句が地理と公民が20前後なのですが、歴史だけは何と30~40前後になってしまうのです
歴史だけが増えた理由の一つとして、山川出版社の歴史教科書に原因があるとも言えますが……

単純計算で地理が20×21×2=840語、公民が20×19×2=760語に対して歴史が40×35×2=2800語と地理で約3倍強、公民で約4倍弱となりました。実際はもう少し少ないかもしれませんが、単純計算でこれだけの差が出ているのです。つまり、2800語というのは、新課程の英単語が約2500語(小中含む)なので、歴史だけでそれ以上の語句を知っておかないといけなく、また、地理と公民と合わせてもとてつもない語句の量を覚えないといけないことがわかります

果たして、これだけの語句を丸暗記で済ませられるか、というとそれは現実問題無理です。この事実を知らずに丸暗記で乗り越えられる、という無責任な指導をしている先生は、この現実を知ったうえで言わないといけません(多分、その現実を知らずに言っている可能性が高いです)
このことからも、歴史(特に近現代と世界史)の正答率が下がっていること、用語説明型の記述問題の正答率が下がっている原因にもつながっているのでは、と思います。
そして、上記のような無責任な指導は、高校での学習で大きな負担となってのしかかってきます。

そのうえで、今まで当たり前のように言っていた、「テストに出るから覚えろ」、という指導も通用しなくなってきます。え、そうなの?と言いたくなりますが、その理由としては、定期テストの出題頻度と入試の出題頻度は異なるからです。そして、この指導は丸暗記推奨の指導とみられても仕方ないと思います(ただし、暗記学習を批判しているわけではなく、必要最低限の暗記は必要となります)。

その根拠として、定期テストでも公立入試でも出題頻度の高い日米和親条約があるのですが、教科書頻度はS+、用語頻度は最高ランクの3ですが、実際に公立入試での正答率は50%前後となっています。その原因としては、言い回しが変わると途端に正答率が下がるという典型的なケースがあるのでは、と思っています。
これを見て、上記の言葉を言っても正答率が上がるとは限らないのです。具体的にどう覚えないといけないかまでも指導しないと効果は上がりません
今までのデータの蓄積で通用するところと通用しないところがあります。そのため、新傾向になってからしっかりとデータのアップデートを行ってほしいと思います。

■少しでも最新の頻度と難度を知るために

もともと、僕は今回の新課程教科書ができてからこの用語集チェックは行いたいと思っていました。教科書頻度と実際の正答率と難易度の整合を行うことで現在の入試での実際の難度を知ることができるため、それを反映させたものが作れたら、と思っていました。
同時進行で公立入試の正答率を基にした入試解析も公式noteで行っています。正答率の低い原因が問題文からきているのか、出題頻度の低い問題が出されているのか、を詳解に解説しています。それを調べているとかなり面白いデータが取れています。

一問一答形式の問題は基本的に正答率が高いものの、用語説明型の記述問題、世界史が絡む問題、年号並び替え、新語の一問一答及び用語説明型の記述問題などの正答率は低いです。特に出題頻度の高い記述問題の正答率が低いのが気になります
1925年の選挙制度の変遷に関する短文記述問題の正答率はわずか10%弱、農地改革の資料読解型の記述問題でも20~40%前後と思ったよりも高くありません。どちらも高校入試や定期テストでも出題頻度が高いのにも関わらず、です。その原因については、公式noteでも触れていますので、一読いただけると幸いです。

■今まで重要語句となっていたが

今回の新課程教科書で一番気になったのが、今までの教科書では重要語として記載されていたものが、語句の説明で終わっている、太字になっていない、記載がない、など変更も出ています。そう、そのチェックをしないで指導してしまうと、大変なことになってしまいます。

例えば、東京書籍の地理で環太平洋造山帯、アルプスヒマラヤ造山帯の記載が語句ではなく内容に変わっていたのです。また、地理で行われているはずの説明が公民で行われているなど、指導の方も大きく変わってしまっているのです。また、今までは本文に太字で掲載していたものが、欄外に追いやられた語句も実際にあります。そして、本文にないものでも資料が使われているものもあります(飛び地の問題が2018年広島県で出題されていますが、そのときの正答率はわずか6%でした)。この時も、県境のせいで河川がみえない、というトリックはあったものの、なかなか気づかなかったそうです。

このように、教科書にはしっかりと掲載されているみたいですが、それに気づかずにやるべきことの優先順位を間違えている人が多いみたいです。必ず教科書でのチェックも忘れないようにしましょう。

以前は重要語句となっていたものが、重要語句でなくなったものをあります。今回はそれらの用語を忖度なくチェックしています。今後、地理や公民も更新してから公式noteのほうでアップしていきます。他教科書のチェックが終わるまでしばらくお待ちください。もし、この業務を遂行するのにサポートをしてくださる方がいましたら、ご協力よろしくお願いいたします。

皆様のサポート、よろしくお願いいたします。サポートいただいたものは一般社団法人CAMELの活動費として活用させていただきます。